PIH(炎症後色素沈着)とは?レーザー後・ニキビ跡が茶色くなる原因と治療法|名古屋
- 2026.9.17
目次
PIH(炎症後色素沈着)とは?レーザー後・ニキビ跡が茶色くなる原因と治療法

PIH(Post-Inflammatory Hyperpigmentation:炎症後色素沈着)は、ニキビ、湿疹、摩擦、外傷、レーザー治療などで皮膚に炎症が起きたあと、その部分に茶色〜褐色の色が残る状態です。シミ取りレーザー後に「一度薄くなった場所がまた茶色くなった」、ニキビが治ったのに「茶色い跡だけ残った」という場合もPIHの可能性があります。PIHの多くは時間とともに薄くなりますが、炎症の強さ、色素の深さ、紫外線、摩擦などによって数か月〜1年以上残ることがあります。治療では、炎症を抑え、新しいメラニン産生を抑制し、すでにある色素を徐々に減らすことが重要です
PIHはなぜできる?炎症からメラニンが増える仕組み
皮膚に炎症が起こると、ケラチノサイトや免疫細胞からIL-1、IL-6、TNF-α、プロスタグランジン、ロイコトリエン、活性酸素種(ROS)などの炎症性メディエーターが放出されます。これらがメラノサイトを刺激すると、チロシナーゼなどのメラニン産生系が活性化し、メラニン産生が増加します。つまり、炎症→炎症性メディエーター増加→メラノサイト刺激→メラニン産生増加→ケラチノサイトへのメラニン移送増加→炎症後に色が残る、という流れです。
表皮性PIHと真皮性PIHの違い
表皮性PIHでは表皮にメラニンが増え、茶色〜濃褐色に見えることが多く、ターンオーバーとともに徐々に薄くなります。一方、炎症が強く表皮基底層が傷つくと、メラニンが真皮へ落ち込み、マクロファージに取り込まれてmelanophage(メラノファージ)として残ります。真皮性PIHは灰褐色〜青灰色に見えることがあり、表皮性PIHより長く残る傾向があります。
PIHの主な原因
PIHは、ニキビ、湿疹、アトピー性皮膚炎、虫刺され、やけど、外傷、摩擦、掻破、レーザー、IPL、ピーリング、ニードル治療など、炎症を起こすさまざまな原因で生じます。特に美容医療では、シミ取りレーザー後のPIHがよくみられます。レーザーで元のシミが取れていても、照射後の炎症反応によって一時的にメラニンが増え、「シミが戻った」ように見えることがあります。これは元のシミの再発とは別の現象です。
他院でシミ取り後、色素沈着がなかなか引かず受診される方もいます
まゆりなclinic名古屋栄には、他院でシミ取りレーザーや光治療を受けたあと、茶色い色素沈着がなかなか引かず、「シミが戻ったのではないか」「このまま残るのではないか」と心配されて受診される方も少なくありません。このような場合、PIHが残っていることもあれば、取り残した老人性色素斑、肝斑、ADMなど別の色素性病変が混在していることもあります。PIHが長引く理由も、肌質、照射後の炎症反応、紫外線、摩擦、乾燥、治療後のスキンケアなどさまざまです。そのため、「前の治療が効かなかった」と単純に考えるのではなく、現在残っている色が何なのかを改めて確認することが重要です。
シミ取りは「取って終わり」ではなく、その後まで診てもらうことが大切
シミ治療では、レーザーを照射してシミを取るところまでではなく、PIHが出た場合の経過観察や追加治療まで一貫して診てもらえることが重要です。治療前のシミの状態、使用した治療、治療後の経過を継続して確認できれば、数か月後に残っている色がPIHなのか、元のシミなのか、新たに出てきた別の色素なのかを判断しやすくなります。当院では診察に加え、必要に応じて肌画像診断機Neo Voir I PLUSも参考にしています。肌診断機だけで診断を決めるわけではありませんが、治療前後の色調や分布を画像として残し、経過を客観的に比較することは重要です。特にPIHは数か月単位で変化するため、診断→治療→PIHを含めた経過観察→必要に応じた追加治療まで一貫して対応できるクリニックを選ぶことも大切です。
ニキビ跡の茶色い色はPIH?
ニキビが治ったあとに残る茶色〜褐色の跡はPIHであることが多いです。一方、赤〜赤紫色の跡はPIE(Post-Inflammatory Erythema:炎症後紅斑)で、主に血管拡張や炎症による赤みです。茶色と赤では治療の考え方が異なるため、ニキビ跡をすべて同じ治療で改善しようとしないことが重要です。
PIHは自然に消える?
表皮性PIHの多くは自然に薄くなります。ただし、炎症が繰り返されている、摩擦が続いている、紫外線を多く浴びている、色素が真皮まで落ちている場合には長引きます。数か月でかなり薄くなることもありますが、6〜12か月程度、場合によってはそれ以上かかることがあります。そのためPIH治療では、「今ある色を減らす」だけでなく「新しいPIHを作らない」ことも重要です。
PIH治療の基本は3つ
PIH治療は、①炎症を抑える、②新しいメラニン産生を抑える、③すでにあるメラニンを徐々に減らす、の3方向で考えます。当院では保湿・紫外線対策を基本に、トラネキサム酸、C-OPERA、システアミン、ピコトーニング、OPトーニングなどを肌状態に合わせて組み合わせます。
・トラネキサム酸

トラネキサム酸はプラスミン系を介した炎症やメラノサイト刺激を抑え、メラニン産生を抑制する方向に働くと考えられています。PIHでは外用、導入、内服などが検討されます。内服は血栓症などのリスク評価が必要なため、既往歴や内服薬を確認して使用します。
・C-OPERA

C-OPERAは、エレクトロポレーションやソノフォレーシスなどを利用し、美容成分の経皮導入を補助する治療です。当院ではトラネキサム酸やビタミンCなどを肌状態に応じて使用します。色素を強く破壊する治療ではなく、肌状態を整えながら治療を組み合わせたい場合に使用します。
・ピコトーニング

ピコトーニングは低出力のピコ秒レーザーを広範囲に照射し、メラニンへ少しずつアプローチする治療です。広い範囲に薄くPIHが残っている場合などに選択します。色素の深さや肌状態に合わせて出力や治療間隔を調整し、治療期間中の紫外線、摩擦、乾燥にも注意します。
・OPトーニング

当院ではPIHにOPトーニングを使用することがあります。OPトーニングはDiscovery PICO VarioPulse TechnologyのQスイッチモードを使用する治療で、ピコトーニングとは異なります。広範囲のPIHや敏感肌、刺激をできるだけ抑えながら治療したい場合などに、肌状態を確認して照射条件を調整します。
・シスペラ(システアミン)

シスペラに含まれるシステアミンは、チロシナーゼなどメラニン産生に関係する経路へ作用し、色素形成を抑える方向に働きます。ニキビ後PIHを対象としたランダム化比較試験では、5%システアミンと4%ハイドロキノン+3%アスコルビン酸の両方で色素沈着が改善した報告があります。ホームケアとして継続的に色素形成を抑える選択肢の一つです。
・メラブライト[C+]

メラブライト[C+]は、安定型システアミンやビタミンCなど複数の成分を組み合わせたホームケア製品です。メラニン産生への作用と抗酸化ケアを組み合わせて使用します。
シスペラ・メラブライト記事はこちら⇒メラブライト[C+]とは?肝斑・色素沈着への効果とシスペラとの違い
・保湿
乾燥して皮膚バリアが低下すると、摩擦や化粧品などの刺激に反応しやすくなり、炎症が続きやすくなります。スクラブ、過度な洗顔、強いピーリング、こするスキンケアなどを続けるとPIHが長引くことがあります。保湿でバリア機能を整え、新しい炎症を起こしにくい状態を作ることが大切です。
・日焼け止め

紫外線はメラノサイトを刺激し、PIHを濃くしたり長引かせたりする要因になります。治療中は日焼け止めを使用し、長時間の直射日光を避けます。UVA・UVBに加えて可視光も色素沈着に関係するため、必要に応じて酸化鉄を含む色付きの日焼け止めも選択肢になります。帽子や日傘などの物理的な遮光も有効です。
・その他の治療
PIHには、ハイドロキノン、アゼライン酸、レチノイド、ビタミンC、ナイアシンアミド、ケミカルピーリングなども使用されます。ハイドロキノンはチロシナーゼ阻害、アゼライン酸は抗炎症作用とメラニン産生抑制、レチノイドはターンオーバー促進、ナイアシンアミドはメラノソーム移送抑制など、それぞれ作用機序が異なります。ただし刺激性皮膚炎が起これば新しいPIHにつながる可能性があるため、肌状態に合わせて使用します。
PIHのレーザー治療で大切なのは「適切な照射」と「治療後のケア」
PIHにレーザーを使用する場合、重要なのはレーザーを避けることではなく、現在のPIHに合った照射条件を選ぶことです。色素の濃さ、深さ、炎症の残り方、肌質を確認し、適切な出力・治療間隔で照射します。さらに治療後に日焼けをする、肌を強くこする、乾燥した状態が続くと色素沈着が長引く可能性があります。そのため、レーザー治療と日焼け止め、保湿、摩擦回避などのケアをセットで考えます。
PIHと肝斑・ADM・老人性色素斑の違い
PIHを疑う大きな手がかりは、「その前に炎症や刺激があったか」です。ニキビ、湿疹、摩擦、レーザーなどが起きた場所に一致して色素沈着が出ていればPIHを考えます。一方、肝斑は左右対称に面状に広がることが多く、ADMは灰褐色〜青褐色で真皮に色素が存在し、老人性色素斑は長年の紫外線曝露と関係します。治療法が異なるため、茶色い色素をすべてPIHとして治療しないことが重要です。
PIHで受診した方がいいケース
数か月経っても色がほとんど変わらない、灰色〜青みを帯びている、色素沈着が広がっている、原因となる炎症が続いている、レーザー後に色が濃くなり続けている場合には、一度状態を確認するとよいでしょう。PIHと思っていても、肝斑、ADM、老人性色素斑など別の色素性病変が混在していることがあります。
よくある質問(Q&A)
まとめ|PIHは「適切な治療+継続した経過管理」が重要
PIHは、ニキビ、湿疹、摩擦、レーザーなどによる炎症でメラノサイトが刺激され、メラニン産生が増えることで起こります。表皮性PIHでは時間とともに薄くなりやすい一方、メラニンが真皮まで落ちると長期化することがあります。治療では原因となる炎症を抑え、摩擦を減らし、保湿と紫外線対策を基本に、トラネキサム酸、C-OPERA、シスペラ、メラブライト[C+]、ピコトーニング、OPトーニングなどを肌状態に合わせて組み合わせます。
レーザー治療もPIHの選択肢の一つであり、大切なのは適切な照射条件と治療後のケアです。また、シミ取りは「レーザーを当てて終わり」ではありません。PIHが生じた場合や数か月後に色が残った場合まで継続して診てもらえること、治療前後の状態を写真や肌画像などで比較できることも重要です。まゆりなclinic名古屋栄では、必要に応じてNeo Voir I PLUSも参考にしながら、診断から治療、その後のPIHや追加治療まで一貫して経過を確認しています。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Davis EC, Callender VD. Postinflammatory hyperpigmentation: a review of the epidemiology, clinical features, and treatment options in skin of color. J Clin Aesthet Dermatol. 2010.
- Kaufman BP, Aman T, Alexis AF. Post-inflammatory hyperpigmentation in dark skin: molecular mechanism and skincare implications. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022.
- Kashetsky N, Feschuk A, Pratt ME. Post-inflammatory hyperpigmentation: A systematic review of treatment outcomes. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2024.
- Mar K, et al. Treatment of Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Colour: A Systematic Review. J Cutan Med Surg. 2024.
- Mar K, et al. Prevention of Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Colour: A Systematic Review. Australas J Dermatol. 2025.
- Alsharif SH, et al. Efficacy and Best Mode of Delivery for Tranexamic Acid in Post-Inflammatory Hyperpigmentation: A Systematic Review. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022.
- Ahmadi K, et al. Assessing the Effectiveness of Stabilized Cysteamine 5% Cream Compared to Hydroquinone 4%/Ascorbic Acid 3% Combination Cream in Treating Acne-induced Post-inflammatory Hyperpigmentation. J Clin Aesthet Dermatol. 2024.
- Mohammad TF, Hamzavi IH. The Role of Sunscreen in Melasma and Postinflammatory Hyperpigmentation. Indian J Dermatol. 2020.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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