ニキビ跡の茶色い色素沈着はPIH?赤み・クレーターとの違いと治療法
- 2026.9.17
ニキビが治ったあとに茶色い跡が残り、「ニキビ跡になってしまった」と感じる方は少なくありません。しかし、ニキビ後に残る跡には、茶色いPIH(炎症後色素沈着)、赤いPIE(炎症後紅斑)、凹み・クレーターなどの瘢痕があり、原因も治療法も異なります。特に茶色〜褐色の平坦な跡はPIHであることが多く、適切に治療することで改善を早めることができます。重要なのは、今ある色素だけを治療するのではなく、新しいニキビをできるだけ作らないことです。
目次
ニキビ跡は「茶色・赤み・凹み」に分けて考える
患者さんが「ニキビ跡」と呼んでいるものは、大きく3つに分けると分かりやすくなります。
茶色い跡 → PIH(炎症後色素沈着)
赤〜赤紫色の跡 → PIE(炎症後紅斑)
凹み・クレーター → 萎縮性瘢痕
同じ場所にPIHとPIE、さらにクレーターが重なっていることもあります。そのため、「ニキビ跡だからこの治療」と一括りにせず、何が残っているのかを分けて考えることが重要です。
茶色いニキビ跡=PIHとは?
PIHはPost-Inflammatory Hyperpigmentationの略で、日本語では炎症後色素沈着と呼ばれます。ニキビの炎症によってメラノサイトが刺激され、メラニン産生が増えることで、ニキビ自体が治ったあとも茶色〜褐色の色が残ります。
ニキビによる炎症
→ 炎症性メディエーターが増える
→ メラノサイトが刺激される
→ メラニン産生が増える
→ ニキビが治ったあとも茶色い跡が残る
という流れです。
ニキビをつぶす、触る、こするなどの刺激が加わると炎症が強くなり、PIHが濃く残りやすくなります。
赤いニキビ跡はPIE
ニキビ後に赤〜赤紫色の跡が残っている場合は、PIHではなくPIE(Post-Inflammatory Erythema:炎症後紅斑)の可能性があります。PIEは炎症後の血管拡張や微小血管の変化などが関係し、主に赤みとして見えます。
簡単に分けると、
茶色 → メラニン → PIH
赤色 → 血管・炎症 → PIE
です。
茶色と赤が同時に存在することも多いため、見た目の色を分けて治療を考えます。
クレーターはPIHとは別の問題
ニキビ後に皮膚が凹んでいる場合は色素沈着ではなく瘢痕です。強い炎症によって真皮のコラーゲン構造が破壊され、正常な皮膚構造に戻らなかったことで凹みが残ります。
代表的にはアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型などがあります。クレーターには美白剤やトーニングだけでは十分ではなく、サブシジョン、キュアジェット、ジュベルック、ニードルRFなど、瘢痕構造へアプローチする治療を検討します。
ニキビ後PIHで最も重要なのは「新しいニキビを止めること」
PIHを早く薄くしたい場合でも、新しいニキビが次々にできていれば、そのたびに新しいPIHが追加されます。古い色素を治療しても新しい色素沈着が増え続ければ、全体として改善を感じにくくなります。
そのため当院では、
活動性ニキビを減らす
+
すでにあるPIHを治療する
という2方向から考えます。
「ニキビが完全になくなってから跡を治療する」のではなく、肌状態によってはニキビ治療とPIH治療を並行して進めます。
ニキビ後PIHは自然に消える?
表皮性PIHは時間とともに自然に薄くなることがありますが、数か月〜1年以上かかる場合があります。新しいニキビ、紫外線、摩擦などの刺激が続けば、さらに長引くことがあります。
早く改善したい場合には、自然経過だけに任せず、新しいニキビを抑えながらPIHに対する治療を積極的に組み合わせることができます。
ニキビ後PIHは「作らせない+薄くする」
治療は大きく2方向です。
新しいPIHを作らせない
→ ニキビ治療、摩擦回避、保湿、紫外線対策
すでにあるPIHを薄くする
→ OPトーニング、ピコトーニング、C-OPERA、システアミン、トラネキサム酸、アゼライン酸など
両方を同時に行うことで、全体の改善を早めやすくなります。
OPトーニング|広範囲のPIHに積極的に使用
当院では、ニキビ後のPIHにもOPトーニングを使用することがあります。OPトーニングはDiscovery PICO VarioPulse TechnologyのQスイッチモードを用いる治療で、ピコトーニングとは異なります。
刺激への配慮を重視しながら広い範囲の色素へアプローチできるため、
・顔全体に茶色いPIHが散在している
・敏感肌
・色素沈着が長く残っている
・刺激をできるだけ抑えながら積極的に治療したい
といった場合に選択します。
ピコトーニング
ピコトーニングは低出力のピコ秒レーザーを広範囲に照射し、メラニンへ少しずつアプローチする治療です。広い範囲に薄いPIHが残っている場合などに使用します。
OPトーニングとピコトーニングのどちらを使用するかは、色素の濃さ、広がり、肌の刺激への反応、これまでの治療歴などを確認して判断します。
C-OPERA|刺激を抑えながら色素ケア
C-OPERAでは、トラネキサム酸やビタミンCなどを肌状態に合わせて導入します。ニキビ後PIHでは、まだ赤みや敏感さが残っていることもあるため、強い刺激を加えずに肌状態を整えながら治療したい場合に組み合わせます。
システアミン|ニキビ後PIHにも治療データがある


シスペラやメラブライト[C+]などに使用されるシステアミンは、メラニン産生に関係する経路へ作用する成分です。ニキビ後PIHを対象としたランダム化比較試験では、5%システアミンクリームと4%ハイドロキノン+3%アスコルビン酸の両方でPIHが改善し、両群の改善度に大きな差を認めなかった報告があります。クリニックでの治療だけでなく、毎日のホームケアとしてメラニン産生を抑える選択肢になります。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、プラスミン系を介した炎症・メラノサイト刺激へ作用し、メラニン産生を抑える方向に働きます。PIHでは外用、導入、内服などが検討されます。
当院ではC-OPERAでの導入など、肌状態に合わせて使用します。内服の場合には血栓症などのリスク評価が必要です。
アゼライン酸
アゼライン酸は抗炎症作用に加えてメラニン産生を抑える方向にも働くため、活動性ニキビとPIHが同時にある場合に使いやすい成分です。新しいニキビを減らしながら、色素沈着にもアプローチできることが特徴です。
日焼け止めはニキビ後PIHでも重要
紫外線はメラノサイトを刺激し、PIHを濃くしたり長引かせたりします。そのためニキビ後PIHでも紫外線対策は重要です。
「ニキビがあるから日焼け止めを使わない」という方もいますが、肌状態に合った製品を選び、紫外線刺激を減らすことが大切です。
保湿も重要
ニキビ肌は皮脂が多いから保湿不要と思われることがありますが、治療薬や洗顔による乾燥でバリア機能が低下すると刺激を受けやすくなります。乾燥や刺激が続けば炎症が長引き、PIHにも影響します。
適切な保湿は、ニキビ治療を継続しながら新しいPIHを作りにくくするためにも重要です。
レチノイド|ニキビ治療を中心とした補助的な選択肢
レチノイドは毛包の角化を整え、面皰形成を抑えることで新しいニキビを減らす治療です。また表皮のターンオーバーを促し、PIH改善を補助する作用も期待できます。
活動性ニキビとPIHが同時にある場合には選択肢になりますが、赤み、乾燥、刺激感が強いと炎症を増やす可能性があります。使用する場合は肌状態に合わせて頻度を調整し、保湿・紫外線対策を行うことが重要です。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、角化や表皮ターンオーバーへアプローチするため、ニキビとPIHの両方に使用されることがあります。ただし、刺激が強すぎると炎症につながるため、肌状態を見ながら補助的に使用します。
茶色・赤み・クレーターが全部ある場合
実際には、PIH、PIE、クレーターがすべて混在している方も少なくありません。
その場合は、
・活動性ニキビを抑える
・茶色いPIHを治療する
・赤いPIEを治療する
・クレーター構造を改善する
と治療対象を分けます。
例えば、PIHにはOPトーニングや外用、赤みには赤みに適した光・レーザー治療、凹みにはサブシジョン、キュアジェット、ジュベルックなどを検討します。「ニキビ跡」という一つの言葉で治療を決めず、何が残っているかを見て治療を組み立てます。
PIHだけ先に治療していい?
活動性ニキビがほとんどなく、PIHが中心であれば色素治療を積極的に進めることができます。一方、毎週のように新しい炎症性ニキビが出ている場合には、PIH治療だけを行うのではなくニキビ治療も並行して行う方が効率的です。
「今ある跡を薄くしながら、新しい跡を作らない」という考え方が重要です。
ニキビ後PIHを早く改善したい場合
PIHを早く改善したい場合には、自然経過だけに任せる必要はありません。活動性ニキビを抑えたうえで、OPトーニング、ピコトーニング、C-OPERA、システアミン、トラネキサム酸、紫外線対策などを組み合わせます。
PIHに関するsystematic reviewでも、外用、レーザー・エネルギーデバイス、複合治療など複数の治療法で改善が報告されています。ニキビ後PIHは「一つの治療だけで取る」より、原因と色素の両方へアプローチすることが重要です。
肌診断器で茶色と赤みの経過を比較

PIHとPIEが混在している場合、毎日鏡を見ていると何が改善しているのか分かりにくい
ことがあります。当院では必要に応じてNeo Voir I PLUSも参考にし、治療前後の色素分布や経過を画像で比較します。
肌診断器だけで診断するわけではありませんが、数か月前の状態と比較することで、茶色い色素や赤みがどのように変化しているかを客観的に確認する補助になります。
ニキビ後PIHで避けたいこと
PIHを早く改善したい場合でも、ニキビを潰す、顔を強くこする、スクラブを繰り返す、刺激の強いピーリングを自己判断で重ねる、日焼けする、乾燥を放置する、といった行為は避けます。新しい炎症を作らないことが、結果的にPIHを減らす近道です。
よくある質問(Q&A)
まとめ|ニキビ後PIHは「新しいニキビを止めながら茶色い跡を治療する」
ニキビ後に残る茶色〜褐色の跡はPIHであることが多く、赤いPIEや凹んだクレーターとは治療方法が異なります。まず茶色なのか、赤みなのか、皮膚の凹凸なのかを分けて考えることが重要です。PIHを早く改善したい場合には、自然に薄くなるのを待つだけでなく、OPトーニング、ピコトーニング、C-OPERA、システアミン、トラネキサム酸、アゼライン酸などを肌状態に応じて組み合わせます。一方で、新しいニキビが続けばそのたびに新しいPIHが作られます。まゆりなclinic名古屋栄では、活動性ニキビ、茶色いPIH、赤いPIE、クレーターを分けて評価し、「新しい跡を作らない治療」と「今ある跡を改善する治療」を同時に考えます。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Mar K, et al. Treatment of Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Colour: A Systematic Review. J Cutan Med Surg. 2024.
- Kashetsky N, Feschuk A, Pratt ME. Post-inflammatory hyperpigmentation: A systematic review of treatment outcomes. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2024.
- Taylor SC, et al. Treatment recommendations for acne-associated hyperpigmentation: Results of the Delphi consensus process and a literature review. J Am Acad Dermatol. 2023.
- Ahmadi K, et al. Assessing the Effectiveness of Stabilized Cysteamine 5% Cream Compared to Hydroquinone 4%/Ascorbic Acid 3% Combination Cream in Treating Acne-induced Post-inflammatory Hyperpigmentation. J Clin Aesthet Dermatol. 2024.
- Callender VD, et al. Effects of Topical Retinoids on Acne and Post-inflammatory Hyperpigmentation in Patients with Skin of Color. Am J Clin Dermatol. 2022.
- Kaufman BP, Aman T, Alexis AF. Post-inflammatory hyperpigmentation in dark skin: molecular mechanism and skincare implications. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
わからないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。医師の視点から、科学的根拠に基づいて丁寧にお応えします。








