炎症後色素沈着(PIH)にレーザーは効く?治療開始のタイミングとOPトーニング・ピコトーニングの選び方
- 2026.9.17

PIH(炎症後色素沈着)にはレーザー治療も選択肢になります。重要なのは「レーザーをするか、しないか」ではなく、いつから、どの方法で、どの程度の刺激で治療するかです。PIHの色、範囲、深さ、原因となった炎症、肌質を確認し、適切な条件で照射することで改善を促します。当院では、PIHに対してピコトーニングのほか、刺激への配慮を重視したい場合にはOPトーニングを積極的に選択しています。
目次
PIHにレーザーは効く?
PIHに対するレーザー治療では、低出力のQスイッチレーザー、ピコ秒レーザーなど複数の方法が研究されています。2024年のsystematic reviewでは、レーザー・エネルギーデバイスによる治療309例のうち61.2%に部分改善、18.1%に完全改善が報告されています。ただし研究ごとにPIHの原因、使用機器、照射条件、治療回数が異なるため、「このレーザーなら必ず治る」とは言えません。PIH治療では、機械の名前以上に、現在の肌状態に適した出力と治療間隔を設定することが重要です。
PIHにレーザーを始めるタイミング
PIHがあるからといって、何か月も必ず待つ必要はありません。原因となった炎症が落ち着いていれば、状態を確認しながら治療を開始できます。
一方、ニキビが次々にできている、湿疹や赤みが強い、摩擦による炎症が続いている場合には、まず原因となる炎症を治療します。炎症が続いている状態では、新しいPIHが作られ続けるからです。つまり、治療開始の判断では「PIHができてから何か月経ったか」だけでなく、現在も炎症が活動しているかを見ることが重要です。
レーザー後にできたPIHへ、さらにレーザーをしてもいい?
状態を確認したうえで治療できます。「レーザー後にできたPIHだから、レーザーは使えない」ということではありません。まず確認するのは、現在見えている色が本当にPIHなのかという点です。元のシミの残存、老人性色素斑、肝斑、ADMなどが混在している場合には、治療方法が変わります。PIHであることを確認したうえで、肌状態に合わせた低刺激の照射を行い、紫外線対策、保湿、摩擦回避などのケアを組み合わせます。
OPトーニングとは?
OPトーニングは、当院ではDiscovery PICO VarioPulse TechnologyのQスイッチモードを使用して行う治療です。ピコトーニングとは別の治療で、1ショットのエネルギーを分割して連続照射することで、熱を一点に集中させにくい設計になっています。
当院では、PIH、肝斑、敏感肌、刺激に配慮したい色素沈着などにOPトーニングを使用しています。
PIHにOPトーニングを積極的に使う理由
PIHは、老人性色素斑のように強いスポット照射で一気に除去する病変ではありません。メラニンへアプローチしながら、治療による刺激を適切にコントロールする必要があります。
OPトーニングは、特に
・広範囲にPIHがある
・肌が刺激に弱い
・敏感肌
・炎症後の色素沈着が長く残っている
・強い刺激を避けながら治療したい
といった場合に使いやすい治療です。
当院では、PIHにレーザー治療を加える場合、こうした症例ではOPトーニングを積極的に検討しています。
ピコトーニングとは?
ピコトーニングは、ピコ秒レーザーを低出力で広範囲に照射し、メラニンへ少しずつアプローチする治療です。広く薄いPIHや色むらなどに使用することがあります。
ピコ秒という非常に短いパルス幅で照射するため、色素への光音響作用を利用できることが特徴です。
OPトーニングとピコトーニングはどう使い分ける?
どちらか一方がすべてのPIHに優れているというわけではありません。
当院では、色素の濃さ、広がり、肌の刺激への強さ、治療歴などを確認して使い分けます。
OPトーニング
・刺激への配慮を重視したい
・敏感肌
・広範囲のPIH
・炎症後の色素沈着
・肝斑など刺激に注意したい色素が混在する
ピコトーニング
・広範囲に薄いメラニンが残っている
・ピコ秒レーザーで少しずつ色調を整えたい
・他のピコ治療との組み合わせを考える
PIHでは「どちらが強いか」ではなく、現在の肌にどちらが適しているかで選びます。
PIHはトーニングだけで治療するわけではない
PIHではレーザー単独ではなく、複数の治療を組み合わせることがあります。
例えば、
・トラネキサム酸でメラニン産生に関係する経路へアプローチ
・システアミンでメラニン形成を抑える
・C-OPERAでトラネキサム酸やビタミンCなどを導入
・保湿でバリア機能を整える
・日焼け止めで新しいメラニン刺激を減らす
・OPトーニングやピコトーニングで既存の色素へアプローチ
というように、複数方向から治療します。
PIHに対するsystematic reviewでも、外用・レーザー・複合治療など複数の治療法で改善が報告されています。
C-OPERAとの組み合わせ
C-OPERAでは、トラネキサム酸やビタミンCなどを肌状態に合わせて導入します。レーザー治療の合間にC-OPERAを組み合わせることで、刺激を増やしすぎずにPIH治療を継続することができます。
OPトーニングやピコトーニングだけに頼るのではなく、肌状態を整えながら色素治療を続けることが重要です。
外用治療も同時に行う

PIHでは、シスペラやメラブライト[C+]などのシステアミン製品、ハイドロキノン、アゼライン酸、ビタミンC、ナイアシンアミドなどの外用を組み合わせることがあります。
レーザー治療はクリニックへ来院した日に行う治療ですが、PIHの色素形成は毎日続いています。そのため、ホームケアでメラニン産生を抑えることも重要です。
レーザー治療中は日焼けを避ける

PIHにレーザー治療を行う場合、治療中の紫外線対策は非常に重要です。紫外線はメラノサイトを刺激し、新しいメラニン産生を促します。
2025年のskin of colorを対象としたPIH予防のsystematic reviewでは、サンスクリーンが一貫して有用な予防策として報告されています。
治療中は日焼け止めだけでなく、帽子や日傘なども使用し、強い日焼けを避けます。
摩擦・乾燥も避ける
クレンジングや洗顔で強くこする、スクラブを使用する、乾燥した状態を放置するなどの刺激も炎症を長引かせる原因になります。レーザーの照射条件が適切でも、治療期間中に繰り返し炎症を起こせばPIHの改善が遅れることがあります。そのため、保湿と摩擦回避も治療の一部です。
PIHレーザー治療では「どの機械か」より「どう使うか」
PIH治療では、「ピコだから安全」「Qスイッチだから悪い」という単純な話ではありません。
色素の深さ、濃さ、肌質、炎症の状態を確認し、適切な波長・出力・照射回数・治療間隔を設定することが重要です。レーザー治療に関するレビューでも複数のレーザーでPIH改善が報告されていますが、研究条件にはばらつきがあります。
当院では、機械の名称だけで治療を決めるのではなく、肌状態を見ながらOPトーニング、ピコトーニング、導入治療、外用などを使い分けます。
PIHは何回レーザーをすれば消える?
必要回数は一律には決められません。PIHの濃さ、深さ、範囲、発症からの期間、紫外線・摩擦の有無によって異なります。トーニング治療は、スポットレーザーのように1回で色素を取り切る治療ではなく、肌の反応を確認しながら複数回行うことが基本です。
早く改善したい場合でも、出力を強くするのではなく、適切な条件で治療を継続することが重要です。
いつまで治療を続ける?
PIHは治療と自然な色素排出の両方によって徐々に薄くなります。そのため、治療前後の写真や肌画像を比較しながら治療継続の必要性を判断します。
当院では必要に応じてNeo Voir I PLUSも参考にし、UV画像などで色素の分布や変化を比較します。毎日鏡を見ていると変化が分かりにくいPIHでも、数か月前の画像と比較することで改善を確認しやすくなります。
他院でレーザー後のPIHが残っている場合も相談できます
他院でシミ取り治療を受けたあと、PIHが数か月続いている方が当院へ相談に来られることもあります。この場合、すぐOPトーニングやピコトーニングを始めるのではなく、現在残っている色がPIHなのか、元のシミなのか、肝斑やADMなどが混在しているのかを確認します。PIHであれば、色素の状態に応じてOPトーニング、ピコトーニング、C-OPERA、トラネキサム酸、システアミンなどを組み合わせます。
よくある質問(Q&A)
まとめ|PIHのレーザー治療は「いつ・どの方法で・どう照射するか」が重要
PIHにはレーザー治療も有効な選択肢です。重要なのは、レーザーをするかしないかではなく、炎症が落ち着いた状態で、PIHの濃さ・深さ・範囲・肌質に合わせて適切に照射することです。まゆりなclinic名古屋栄では、PIHへのレーザー治療としてピコトーニングのほか、特に刺激への配慮を重視したい場合にはOPトーニングを積極的に使用しています。
さらに、C-OPERA、トラネキサム酸、システアミン、保湿、紫外線対策などを組み合わせ、すでにある色素を減らすだけでなく、新しいメラニンを作りにくい状態を整えます。
PIHは一つの治療だけで改善を目指すのではなく、適切なレーザー照射とホームケアを組み合わせながら治療することが重要です。
【文責】まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Kashetsky N, Feschuk A, Pratt ME. Post-inflammatory hyperpigmentation: A systematic review of treatment outcomes. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2024;38(3):470-479.
- Mar K, et al. Treatment of Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Colour: A Systematic Review. J Cutan Med Surg. 2024.
- Mar K, et al. Prevention of Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Colour: A Systematic Review. Australas J Dermatol. 2025.
- Laser Treatments for Postinflammatory Hyperpigmentation: A Systematic Review. JAMA Dermatol.
- Davis EC, Callender VD. Postinflammatory hyperpigmentation: epidemiology, clinical features, and treatment options in skin of color. J Clin Aesthet Dermatol. 2010.
- Eimpunth S, Wanitphadeedecha R, Manuskiatti W. A focused review on acne-induced and aesthetic procedure-related postinflammatory hyperpigmentation in Asians. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2013.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
わからないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。医師の視点から、科学的根拠に基づいて丁寧にお応えします。








