唇のシミとほくろはどう見分ける?口唇メラノーシス・色素性母斑の違い|名古屋
- 2026.9.20
唇に小さな茶色や黒い点があると、「これはシミなのか、ほくろなのか」と判断に迷うことがあります。
代表的な良性色素性病変として、口唇メラノーシス(labial melanotic macule)と色素性母斑(melanocytic nevus/ほくろ)があります。どちらも茶色〜黒色に見えるため外見が似ることがありますが、病変ができる仕組みは異なります。口唇メラノーシスは主にメラニン量の増加による色素斑で、ほくろは母斑細胞が増殖して形成される病変です。
その違いは、レーザー治療を行う場合の治療方法や再発の考え方にも関係します。
目次
口唇メラノーシスとは?
口唇メラノーシスは、唇に生じる代表的な良性色素斑です。
典型的には、
・平坦
・茶色〜黒褐色
・比較的境界が明瞭
・単発
・下唇に多い
という特徴があります。
36病変を調べた研究では、下唇に生じる単発病変が多く、平均発症年齢は30歳でした。組織学的には基底層の色素増加がみられましたが、細胞異型や母斑様増殖は認められていません。
つまり、見た目は「黒い点」でも、一般的なほくろとは別の病変です。
唇のほくろ=色素性母斑
一般に「ほくろ」と呼ばれるものは色素性母斑です。
色素性母斑では、メラノサイト由来の母斑細胞が増殖して病変を形成します。
口腔内や口唇の色素性母斑は皮膚のほくろほど頻度は高くありませんが、実際に存在します。口腔色素性母斑100例の検討では、61%がintramucosal nevus、23%がblue nevusで、18%は口唇の赤唇縁に生じていました。
同じ「唇の黒い点」でも、
口唇メラノーシス
→ 色素が増えて見えている
色素性母斑
→ 母斑細胞そのものが増殖している
という病理学的な違いがあります。
見た目ではどう違う?
典型例では、ある程度の傾向があります。

ただし、これは典型例の比較です。
「平らだからメラノーシス」「盛り上がっているからほくろ」と単純に決めることはできません。
平らなほくろもある
ほくろというと、盛り上がった黒い点をイメージしやすいですが、色素性母斑には平坦なものもあります。特にjunctional nevusなどでは比較的平坦な色素斑として見えることがあり、口唇メラノーシスと外見が似ることがあります。一方、口唇メラノーシスは基本的に平坦な病変です。
つまり、
盛り上がっていれば母斑を考えやすい
ものの、
平坦だからメラノーシスとは限らない
ということです。
青〜黒く見えるほくろもある
口腔の色素性母斑にはblue nevusもあります。
blue nevusではメラニンを含む細胞が比較的深い位置に存在するため、光の散乱によって青〜青黒く見えることがあります。
ただし、唇の青紫色の病変には静脈湖など血管性病変もあるため、青い=blue nevusとも限りません。口腔粘膜の色素性病変には、メラニン由来だけでなく血管性病変などの“色素病変に見えるもの”も含まれるため、色だけで診断しないことが重要です。
一番重要なのは「いつからあって、変化しているか」
口唇の色素性病変を診察するときは、見た目だけでなく経過を確認します。
特に、
・いつからあるのか
・大きくなっていないか
・濃くなっていないか
・形が変わっていないか
・最近出血していないか
・盛り上がりが出ていないか
といった情報が重要です。
口腔・口唇の色素性病変では、色、部位、分布、持続期間、変化の有無などが鑑別診断の重要な情報になります。
「昔からほぼ同じ状態」という病変と、「最近急に変化している病変」では、同じ黒い点でも考え方が変わります。
口唇メラノーシスは長期間変化しないことが多い
典型的な口唇メラノーシスは安定した良性病変です。
79例を平均6年以上追跡した研究では、病変の増大や濃色化は認められませんでした。
そのため、何年も前からほぼ同じ大きさ・色で存在する平坦な病変は、口唇メラノーシスを考える材料になります。
ただし、長期間存在しているという情報だけで良性を保証できるわけではありません。
「ほくろっぽい」だけでレーザーしない
口唇の黒い点で最も重要なのは、メラノーシスかほくろかを完璧に名前付けすることだけではありません。まず、美容レーザーを行ってよい良性病変なのかを判断する必要があります。口腔の色素性病変には、melanotic macule、melanocytic nevus、PIHなどの良性病変だけでなく、悪性黒色腫も含まれます。臨床像が似ることがあるため、診断が不確実な場合には病理組織検査が必要になることがあります。
当院では、少しでも悪性を疑う所見がある場合には美容レーザーを行わず、皮膚科などでの精査を優先します。
特に注意したい変化
次のような場合には、「普通のシミ」「普通のほくろ」と決めつけず診断を優先します。
・短期間で大きくなった
・色が急に濃くなった
・茶色、黒、灰色など色調が不均一
・境界が不規則
・左右非対称
・出血や潰瘍がある
・以前と明らかに形が変わった
口腔の色素性病変は、良性から悪性まで臨床像が重なるため、近年のレビューでも慎重な評価と必要に応じた生検が推奨されています。
病理検査をしなければ100%区別できないこともある
口唇メラノーシスと色素性母斑は、典型例では臨床的にある程度判断できます。
しかし、見た目だけでは確定できない病変もあります。
口腔色素性病変についてのレビューでも、病歴や臨床像から診断できる病変がある一方、確定診断には病理組織学的評価が必要となるケースがあることが示されています。
そのため、美容レーザーを検討するときには、「レーザーで取れそうか」より先に「レーザーをしてよい病変か」を考えることが重要です。
メラノーシスとほくろでは、レーザー治療の考え方も違う
良性と判断できた場合には、美容的な治療を検討できます。
口唇メラノーシス
色素成分が主体の平坦な病変なので、当院ではピコスポットを検討します。
色素性母斑(ほくろ)
平坦〜軽度隆起で色素成分が強い病変では、当院でピコスポットを使用することがあります。
ただし、母斑細胞が深い位置まで存在する病変では、表面の色が薄くなっても深部の母斑細胞が残り、再び色が出る可能性があります。
そのため、ほくろ=必ずCO2レーザー、あるいはほくろ=必ずピコスポットという一律の治療にはしません。
唇ではCO2レーザーを慎重に考える理由
隆起が強い色素性母斑では、CO2レーザーによる蒸散も治療方法の一つです。
しかし口唇、とくに赤唇部や輪郭に近い病変では、深く蒸散することで瘢痕、ひきつれ、形態変化などを考慮する必要があります。
そのため当院では、色素成分をピコレーザーで治療できる病変かを検討したうえで、CO2レーザーが必要な場合には部位や深さを慎重に判断します。
メラノーシスとほくろを比較すると

この表だけで診断できるわけではありませんが、両者の違いを理解する目安になります。
Q&A
まとめ|「シミかほくろか」だけでなく、レーザーしてよい病変かを判断する
口唇メラノーシスと色素性母斑は、どちらも唇の茶色〜黒い点として見えるため、外見が似ることがあります。
しかし、
口唇メラノーシス
→ 主にメラニン量の増加
色素性母斑
→ 母斑細胞の増殖
という病理学的な違いがあります。
典型的には口唇メラノーシスは平坦、色素性母斑は平坦〜隆起ですが、見た目だけで完全に分けることはできません。そして最も重要なのは、単に「シミかほくろか」を決めることではなく、美容レーザーを行ってよい良性病変なのかを判断することです。良性と判断できれば、口唇メラノーシスはピコスポット、色素性母斑でも色素成分が主体であればピコスポットを検討することがあります。一方、深さや隆起が強い母斑では別の治療方法を考えます。
唇の色素性病変では、診断→病変の深さ・色素成分の評価→治療方法の選択という順番が重要です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Ho KK, Dervan P, O’Loughlin S, Powell FC. Labial melanotic macule: a clinical, histopathologic, and ultrastructural study. J Am Acad Dermatol. 1993;28(1):33-39.
- Gupta G, Williams RE, Mackie RM. The labial melanotic macule: a review of 79 cases. Br J Dermatol. 1997;136(5):772-775.
- Ferreira L, et al. Oral melanocytic nevi: a clinicopathologic study of 100 cases. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2015.
- Gondak RO, et al. Oral pigmented lesions: Clinicopathologic features and review of the literature. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2012.
- Müller S. Melanin-associated pigmented lesions of the oral mucosa: presentation, differential diagnosis, and treatment. Dermatol Ther. 2010.
- Pigmented Lesions of the Oral Mucosa: Clinical Presentation, Histology, and Recommendations for Management. 2025.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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