唇にシミができる原因は?口唇メラノーシス・ほくろ・PIHの違いを解説|名古屋
- 2026.9.20
目次
唇にシミができる原因は?口唇メラノーシス・ほくろ・PIHの違いを解説|名古屋
唇に茶色や黒い点ができると、「普通のシミなのか」「ほくろなのか」「レーザーで取れるのか」と気になる方が多いと思います。
しかし、医学的には口唇にみられる色素性病変には複数の種類があります。代表的なのが、口唇メラノーシス、色素性母斑(ほくろ)、PIH(炎症後色素沈着)です。さらに、青紫色に見える場合には静脈湖などの血管性病変、多発する場合には全身疾患に伴う色素沈着なども鑑別に入ります。
口唇・口腔の色素性病変は、色、場所、分布、出現時期、変化の有無などを組み合わせて診断する必要があります。多くは良性ですが、悪性黒色腫などとの鑑別が必要になる病変もあるため、「黒いからレーザー」ではなく、まず何の病変なのかを確認することが重要です。

唇のシミで代表的なのが「口唇メラノーシス」
口唇メラノーシス(labial melanotic macule)は、唇に生じる代表的な良性色素斑です。
典型的には、
・平坦
・茶色〜黒褐色
・比較的境界が明瞭
・単発
・下唇に多い
という特徴があります。
36病変を検討した研究では、多くが女性にみられ、単発で下唇に生じるケースが中心でした。病理では基底層のメラニン増加がみられる一方、異型細胞や母斑様の増殖は認められず、良性の色素性病変として報告されています。
79例を平均6年以上追跡した研究でも、経過観察中に病変の増大や濃色化は認められず、典型的な口唇メラノーシスは良性病変とされています。
口唇メラノーシスと「ほくろ」は違う
一般に「ほくろ」と呼ばれるものは、色素性母斑(melanocytic nevus)です。
口唇メラノーシスでは、主にメラニン量の増加によって色が見えています。一方、色素性母斑ではメラノサイト由来の母斑細胞が増殖して病変を形成します。
簡単に整理すると、
口唇メラノーシス
→ 主にメラニンが増えている平坦な色素斑
色素性母斑(ほくろ)
→ 母斑細胞が増殖してできる病変
という違いがあります。
口腔内の色素性母斑は皮膚のほくろほど多くありませんが、口唇にも生じます。100例の口腔色素性母斑を検討した研究では、18%が口唇の赤唇縁に認められています。
唇にもPIH(炎症後色素沈着)はできる
唇が茶色くなっていても、必ずしも独立した「シミ」ができているとは限りません。
口唇炎や繰り返す刺激によって炎症が起こり、その後にPIHが残ることがあります。
例えば、
・口唇炎を繰り返している
・唇が乾燥して皮むけを繰り返している
・無意識に唇を触る、こする
・刺激の強い化粧品やリップ製品で炎症が起こった
といった経過がある場合には、炎症後の色素沈着も考えます。近年の口腔色素性病変のレビューでも、post-inflammatory pigmentationは反応性色素沈着の一つとして整理されています。
口唇メラノーシスとPIHはどう違う?
典型的には、
口唇メラノーシス
→ 単発で比較的境界が明瞭な平坦な茶色〜黒褐色斑
PIH
→ 口唇炎や刺激の後に生じ、やや広くぼんやりした色素沈着になることがある
という違いがあります。ただし、見た目だけで完全に分けられるとは限りません。
「いつからあるのか」「その前に炎症がなかったか」「形や色が変化していないか」といった経過も重要です。
青紫色なら「シミ」ではなく静脈湖のこともある
唇にできる暗い点が、すべてメラニンによる色素性病変とは限りません。
特に青〜紫色の小さな盛り上がりとして見える場合には、静脈湖(venous lake)という血管性病変も鑑別に入ります。静脈湖は唇に生じる比較的よくみられる良性血管性病変で、口唇メラノーシスや悪性黒色腫などの色素性病変と見た目が似ることがあります。
ダーモスコピーを比較した研究では、静脈湖では紫・赤・青色が多く、口唇メラノーシスでは茶色や灰色が多いことが報告されています。つまり、黒っぽく見える=必ずメラニンのシミではないということです。
見た目だけでシミとほくろを完全に診断できる?
典型的な病変ではある程度判断できますが、臨床像だけで100%確定できるわけではありません。
口唇の色素性病変では、
・色
・形
・大きさ
・境界
・平坦か隆起しているか
・単発か多発か
・いつからあるか
・最近変化していないか
などを確認します。
口腔の色素性病変は臨床像が重なりやすく、診断が不確実な場合には病理組織検査が必要になることがあります。
唇にシミがたくさんある場合は考え方が変わる
単発の茶色い色素斑と、唇や口の周囲に小さな色素斑が多数ある状態では、鑑別が異なります。
多発する口唇・口腔色素沈着では、
・Laugier-Hunziker症候群
・Peutz-Jeghers症候群
・Addison病
・薬剤性の色素沈着
などが鑑別に挙がります。
特に、口唇だけでなく、
・口腔内
・指先
・爪
・全身の皮膚
にも色素変化がある場合には、単純な美容上のシミとは別に考える必要があります。
唇のシミは紫外線が原因?
唇、とくに赤唇部は紫外線の影響を受ける部位です。
ただし、顔の老人性色素斑のように「紫外線が原因」と一律に説明することはできません。
口唇メラノーシスについては、そばかす様の色素変化、炎症後色素沈着、独立した良性色素病変など複数の背景が考えられてきました。古典的な55例の報告でも、単一の原因では説明できない可能性が示されています。したがって、唇のシミでは「日焼けしたからできた」と決めつけず、病変そのものを評価します。
「ずっと同じ」か「最近変化しているか」は非常に重要
良性の口唇メラノーシスは、長期間ほとんど変化しないことが多い病変です。
一方、
・短期間で大きくなった
・急に濃くなった
・一部だけ黒くなった
・左右非対称になった
・境界が不規則になった
・盛り上がってきた
・出血や潰瘍がある
といった変化がある場合には、単純な良性色素斑と決めつけないことが重要です。
口腔・口唇の色素性病変には悪性黒色腫も含まれ、臨床診断が不確実な場合には組織学的評価を検討すべきとされています。当院でも病理検査を先に行ってもらい、良性であることが確定してから施術することも多々あります。
怪しい色素斑は美容レーザーを先に行わない
唇の黒い点が「シミに見える」という理由だけで美容レーザーを先に照射すると、病理診断の機会を失う可能性があります。そのため当院では、少しでも悪性を疑う所見がある場合には美容レーザー治療を行わず、皮膚科などでの精査を優先します。
これは唇に限らず、色素性病変をレーザー治療する際の基本的な考え方です。
良性と判断できればレーザー治療を検討できる
良性の色素性病変と判断でき、美容的に気になる場合にはレーザー治療を検討します。
当院では、色素成分が主体の平坦な口唇メラノーシスではピコスポットを検討します。
また、色素性母斑(ほくろ)でも、平坦〜軽度隆起で色素成分が主体の病変ではピコスポットを使用するケースがあります。
ただし、ほくろは深さによって母斑細胞が残存する可能性があり、再発することもあるため、すべてのほくろをピコレーザーで治療するわけではありません。
唇のほくろにCO2レーザーを使う場合は部位にも注意する
隆起が強いほくろなどでは、一般的にCO2レーザーによる蒸散が選択肢になります。

ただし口唇は、顔の他の部位とは少し事情が異なります。
特に唇の外側や赤唇部では、必要以上に深く蒸散すると、
・瘢痕
・ひきつれ
・唇の輪郭変化
などを考慮する必要があります。
そのため当院では、色素レーザーで対応できる病変かどうかをまず確認し、CO2レーザーは病変の深さ・隆起・発生部位を見ながら慎重に選択します。
一方、口腔粘膜側では病変によってCO2レーザーを選択することもあり、同じ「唇」でも場所によって治療の考え方が変わります。
コラムはこちら👉唇のほくろにCO2レーザーは使う?ピコスポットとの違いと瘢痕・ひきつれのリスク|名古屋
唇のシミ・黒い点を簡単に整理すると

この表だけで診断できるわけではありませんが、受診時に考える代表的な鑑別です。
Q&A
まとめ|唇の黒い点は、まず「何の病変か」を分ける
唇の茶色いシミや黒い点には、複数の原因があります。
代表的には、
口唇メラノーシス
→ 平坦な良性色素斑
色素性母斑
→ いわゆるほくろ
PIH
→ 口唇炎や刺激後の色素沈着
静脈湖
→ 青紫色に見える血管性病変
があります。
さらに、多発する場合には全身疾患が関係することがあり、急速に変化する病変では悪性黒色腫などとの鑑別が必要です。そのため、唇の色素性病変では「黒いからレーザー」ではなく、まず色・形・分布・経過から病変を診断することが重要です。
良性と判断できれば、口唇メラノーシスや一部の色素性母斑ではピコスポットなどを検討します。一方、PIH、静脈湖、隆起の強いほくろでは治療の考え方が変わります。
この「診断してから治療法を決める」という順番が、唇のシミ・ほくろを安全かつきれいに治療するための基本です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Gondak RO, et al. Oral pigmented lesions: Clinicopathologic features and review of the literature. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2012.
- Pigmented Lesions of the Oral Mucosa: Clinical Presentation, Histology, and Recommendations for Management. 2025.
- Gupta G, Williams REA, Mackie RM. The labial melanotic macule: a review of 79 cases. Br J Dermatol. 1997;136(5):772-775.
- Ho KK, et al. Labial melanotic macule: a clinical, histopathologic, and ultrastructural study. J Am Acad Dermatol. 1993;28(1):33-39.
- Ferreira L, et al. Oral melanocytic nevi: a clinicopathologic study of 100 cases. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2015;120(3):358-367.
- Lee JS, et al. Dermoscopy of venous lake on the lips: A comparative study with labial melanotic macule. PLoS One. 2018.
- Müller S. Melanin-associated pigmented lesions of the oral mucosa: presentation, differential diagnosis, and treatment. Dermatol Ther. 2010.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
わからないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。医師の視点から、科学的根拠に基づいて丁寧にお応えします。








