唇のシミ・ほくろはピコスポットで取れる?口唇メラノーシス・色素性母斑のレーザー治療を解説|名古屋
- 2026.9.20

唇の茶色いシミや黒いほくろは、良性と判断できればレーザー治療を検討できます。当院では、口唇メラノーシスだけでなく、良性と判断できる口唇の色素性母斑(ほくろ)についても、基本的にまずピコスポットから治療を考えています。
口唇は顔の中でも瘢痕やひきつれ、輪郭変化をできるだけ避けたい部位です。そのため、最初からCO2レーザーで深く蒸散するのではなく、まず色素を選択的に狙うピコスポットでどこまできれいに改善できるかを見るというのが当院の基本的な考え方です。
ただし、すべての唇の黒い点をレーザーしてよいわけではありません。治療前に良性病変であることを確認することが最も重要です。
目次
口唇メラノーシスはピコスポットと相性がよい
口唇メラノーシスは、主に基底層のメラニン増加によって生じる平坦な良性色素斑です。母斑細胞そのものが増殖するほくろとは異なり、病変の中心がメラニンであるため、メラニンを標的とするレーザー治療を考えやすい病変です。典型的な口唇メラノーシスは長期間安定していることが多く、79例を平均6年以上追跡した研究でも、病変の増大や濃色化は認められていません。当院では、良性と判断できる平坦な口唇メラノーシスではピコスポットを基本的な治療選択肢としています。
当院では口唇のほくろも基本的にまずピコスポットから考える
一般的なほくろは色素性母斑(melanocytic nevus)であり、病変の本体は母斑細胞です。そのため、口唇メラノーシスとは病理学的には別の病変です。
それでも、黒〜茶色の色素成分が強い色素性母斑では、メラニンを標的とするレーザーによって色調だけでなく病変そのものが大きく改善することがあります。
当院では、良性と判断できる口唇の色素性母斑については、平坦〜軽度隆起で色素成分が確認できる場合、まずピコスポットでどこまで改善できるかを見ることを基本としています。
「ほくろだから必ずCO2レーザー」という考え方ではありません。
ピコ秒レーザーで色素性母斑を治療した臨床研究もある
色素性母斑にピコレーザーを使用する治療は、当院だけの特殊な方法というわけではありません。
2026年には、日本人13例の先天性色素性母斑を対象として、1064nm/532nm Ndピコ秒レーザーを最大5回照射した前向き臨床試験が報告されています。
治療3か月後には、84.6%が50%以上の改善、30.8%が75%以上の改善を示し、Melanin Indexも有意に低下しました。1年後も集団全体では治療前より有意に低い色素量が維持されていました。不可逆的な後遺症も認められなかったと報告されています。
さらに興味深いのは、病理組織学的な解析で、治療効果が単純なメラニン量だけではなく、病変内の母斑細胞量と強く関連していた点です。これは、ピコ秒レーザーによる治療反応が、単に表面の色を薄くしているだけでは説明できない可能性を示しています。
ただし、この研究は先天性色素性母斑を対象としており、口唇の小さな後天性色素性母斑を直接検討した研究ではありません。そのため、この治療成績をそのまま口唇のほくろへ当てはめることはできません。
それでも、色素性母斑そのものがピコ秒レーザーに反応し得ることを示す直接的な臨床データとして参考になります。
良性色素性母斑へのレーザー治療自体には以前から報告がある
良性メラノサイト系病変へのレーザー治療については、ピコ秒レーザー登場以前からQスイッチルビー、アレキサンドライト、Ndなど複数の色素レーザーが検討されてきました。
2022年のレビューでも、melanocytic neviはレーザー治療の対象となる良性色素性病変の一つとして扱われ、病変のchromophoreや皮膚内での深さによって適切な波長・レーザーを選択する重要性が述べられています。つまり、「色素性母斑に色素レーザーを使う」という考え方自体は新しいものではありません。
ピコスポットでは何が起きている?
ピコ秒レーザーでは、非常に短い時間に高いピークパワーを与えることで、光音響・光機械的作用によってメラニンやメラノソームへ強く作用します。
一方、ピコレーザーでも光熱作用がなくなるわけではありません。レーザー光がメラニンに吸収されれば急激な温度上昇が起こり、その熱作用と機械的作用が組み合わさって組織へダメージを与えます。口唇の色素性母斑にピコスポットを行った際には、メラニンだけでなく、メラニンを多く含む浅い母斑細胞にも光熱作用を含むエネルギーが及んでいる可能性があると考えています。
実際、前述した2026年の研究でも、治療効果は母斑細胞量と関連していました。
なぜ最初からCO2レーザーにしないのか
CO2レーザーは組織中の水分に吸収され、病変そのものを蒸散するレーザーです。隆起したほくろを物理的に除去するには非常に有用です。
しかし口唇では、治療後の仕上がりを慎重に考える必要があります。
特に赤唇部や唇の輪郭に近い病変を深く蒸散すると、病変の深さや照射範囲によっては、
・瘢痕
・ひきつれ
・凹み
・唇の輪郭変化
などを考慮する必要があります。そのため当院では、色素成分が強い口唇のほくろであれば、まずピコスポットという低侵襲な方法で色素と病変を減らし、どこまできれいに改善できるかを見ることを基本としています。
CO2レーザーが悪いという意味ではなく、口唇では「最初から組織を蒸散する必要がある病変なのか」を慎重に考えるということです。
色が消えても母斑細胞が完全になくなったとは限らない
ここは、口唇メラノーシスとほくろの大きな違いです。
口唇メラノーシスは主に色素量の増加なので、色素が十分に除去されればきれいに改善しやすい病変です。
一方、色素性母斑では母斑細胞そのものが存在します。ピコスポットによって見た目の色がきれいに消えても、深い位置の母斑細胞まで完全に除去されているとは限りません。
2026年のピコ秒レーザーの研究でも、1年後には13例中3例でMelanin Indexが治療前を上回っており、長期的な再色素化が起こり得ることが示されています。
また、先天性色素性母斑に対するレーザー治療をまとめたsystematic reviewでは24研究・434例が検討され、短期的な色素改善は認められた一方、再色素化や瘢痕なども報告され、長期エビデンスは十分ではないとされています。
したがって、ピコスポットで色が取れた=母斑細胞が完全に消失した、と断定することはできません。
再発したら失敗?
必ずしも失敗ではありません。
口唇は瘢痕をできるだけ避けたい部位です。そのため、最初から深く組織を除去して瘢痕を残すリスクを取るより、まず低侵襲な方法で改善を目指すという考え方があります。
ピコスポット後に再色素化した場合には、
・再びピコスポットを行う
・隆起や深さが強くなれば別の治療を検討する
など、その時点の病変を確認して判断します。
当院では、再発する可能性があるから最初からCO2レーザーで深く蒸散する、という考え方は基本的にしていません。
どんな口唇のほくろでもピコスポットでよい?
すべてではありません。
特に、
・皮膚色に近く色素が少ない
・隆起が非常に強い
・大きい
・深い母斑が疑われる
・形や色が不規則
・最近変化している
病変では、ピコスポットが適していないことがあります。
ピコスポットはメラニンを標的とする治療なので、色素成分が少なければ十分な反応を得にくくなります。病変の色、深さ、隆起、部位を見て治療方法を決めます。
ただし色素性母斑へのレーザー治療には慎重な考え方もある
ここは患者さんにも知っておいていただきたい点です。
色素性母斑へのレーザー治療については、病変を組織として切除しないため、治療後に病理組織診断ができないことや、深部に母斑細胞が残存する可能性があります。
実際、皮膚レーザー治療に関するS2kガイドラインでは、色素性メラノサイト母斑へのレーザー治療について慎重な立場が示されています。
だからこそ当院では、何でもレーザーするのではなく、まず良性と判断できることを前提に治療しています。
最も大切なのは「レーザーしてよいほくろか」
ほくろにピコスポットを使用する場合、最も重要なのは「ピコで取れるか」ではありません。
ピコをしてよい病変なのかです。
当院では、
・左右非対称
・色調が不均一
・境界が不規則
・短期間で大きくなった
・急に濃くなった
・出血や潰瘍がある
など、少しでも悪性を疑う所見がある場合には美容レーザーを行いません。
このような場合には皮膚科などでの精査・病理診断を優先します。
レーザーで色素を破壊してしまうと、その後の診断を難しくする可能性があるためです。
口唇メラノーシスとほくろでは治療後の考え方が違う
口唇メラノーシス
ピコスポットの考え方:色素主体なので適応を考えやすい
治療後に注意する点:PIH・再色素化
色素性母斑(ほくろ)
ピコスポットの考え方:当院では良性なら基本的にまず検討
治療後に注意する点:深部母斑細胞の残存・再発
PIH
ピコスポットの考え方:基本的にピコスポットの適応ではない
治療後に注意する点:炎症を増やさない
悪性を疑う病変
ピコスポットの考え方:美容レーザーを行わない
治療後に注意する点:精査・病理診断を優先
唇は「取れるか」だけでなく「跡を残さないか」まで考える
唇の色素性病変では、色が消えれば何でもよいわけではありません。
唇は人の視線が集まりやすく、輪郭や質感の変化も目立ちやすい部位です。
そのため、
・瘢痕をできるだけ残さない
・ひきつれを避ける
・唇の輪郭を変えない
・色抜けをできるだけ抑える
ことまで含めて治療を考えます。
当院が良性の口唇色素性母斑でまずピコスポットを選ぶ理由も、病変を改善しながら、できるだけ口唇の正常な形態を温存したいという考え方によるものです。
Q&A
まとめ|良性の口唇メラノーシス・色素性母斑は、当院ではまずピコスポットを基本に考える
唇のシミやほくろは、良性と判断できればレーザー治療を検討できます。
当院では、口唇メラノーシスだけでなく、良性と判断できる口唇の色素性母斑についても、基本的にまずピコスポットから治療を考えています。色素性母斑そのものにピコ秒レーザーを使用した前向き臨床試験もあり、色素改善だけでなく母斑細胞量と治療反応との関連も報告されています。一方で、口唇の色素性母斑に限定した強いエビデンスはまだ十分ではなく、深部の母斑細胞が残れば再色素化する可能性があります。口唇は瘢痕やひきつれ、輪郭変化をできるだけ避けたい部位です。そのため当院では、最初からCO2レーザーで深く蒸散するのではなく、まずピコスポットで低侵襲に改善を目指し、経過を見ながら必要であれば次の治療を考えるという方針を基本としています。ただし、レーザー治療よりさらに重要なのが診断です。少しでも悪性を疑う病変には美容レーザーを行いません。
良性であることを確認する→できるだけ低侵襲なピコスポットから治療する→再発や残存があれば次の治療を検討する。これが、当院における口唇の良性色素性病変の基本的な治療方針です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Gupta G, Williams RE, Mackie RM. The labial melanotic macule: a review of 79 cases. Br J Dermatol. 1997;136(5):772-775.
- Araghi F, et al. Laser treatment of benign melanocytic lesion: a review. Lasers Med Sci. 2022;37(9):3353-3362.
- Efficacy, Safety, and Predictive Value of Quantitative Histopathology in Picosecond Laser Therapy for Congenital Melanocytic Nevi: A Prospective Clinical Trial. 2026.
- Eggen CAM, et al. Laser treatment of congenital melanocytic naevi: a systematic review. Br J Dermatol. 2018;178(2):369-383.
- Paasch U, et al. S2k guideline: Laser therapy of the skin. J Dtsch Dermatol Ges. 2022.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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