タトゥー除去はピコレーザーだけでいい?カラータトゥーのレーザー選び・3波長・Qスイッチを医師が解説|名古屋
- 2022.6.16

タトゥー除去について調べると、「タトゥー除去ならピコレーザー」「ピコ秒レーザーの方が新しいからよく取れる」と説明されていることがあります。
確かにピコレーザーは現在のタトゥー除去に非常に重要なレーザーです。しかし、当院では「ピコレーザーだけあれば十分」「Qスイッチレーザーより常にピコレーザーの方が優れている」とは考えていません。
当院が重視しているのは、Qスイッチレーザーとピコレーザーの両方を使えることです。
治療初期の濃いタトゥーでは比較的大きな色素の塊が多く残っています。Qスイッチレーザーはナノ秒という非常に短い時間で強いエネルギーを与え、こうしたタトゥー色素を効率よく破砕するため長年使用されてきました。
一方、治療を繰り返して濃い色素が減ってくると、最後には細かくなった色素が残ります。ピコレーザーはQスイッチレーザーよりさらに短いピコ秒単位でエネルギーを与えることができ、より細かな色素粒子を破砕しやすいことが特徴です。
そのため当院では、濃い~中等度の色素が残る段階ではQスイッチレーザーの特性を活かし、その後さらに細かく残った色素にはピコレーザーを使用するという考え方も取り入れています。
つまり、Qスイッチとピコは「どちらが上か」を競うレーザーではありません。
大きな色素の塊をしっかり砕くQスイッチレーザーと、細かく残った色素をさらに微細に砕くピコレーザー。それぞれの長所を使い分けることで、最後まできれいな除去を目指す。これが当院のタトゥー除去の基本的な考え方です。
目次
Qスイッチレーザーとピコレーザーは何が違う?
Qスイッチレーザーとピコレーザーの大きな違いは「パルス幅」、つまりレーザーを照射する時間です。
Qスイッチレーザーは主にナノ秒領域、ピコレーザーはさらに短いピコ秒領域でレーザーを照射します。
タトゥーインクは皮膚の中にある色素粒子です。レーザーによってこの粒子へ急激にエネルギーを加え、光音響作用・光機械的作用などによって破砕し、徐々に体内で処理されやすい状態にしていきます。
Qスイッチレーザーは長年タトゥー除去の中心となってきたレーザーで、ナノ秒パルスによってタトゥー色素を効率よく破砕できます。
ピコレーザーではさらに短時間にエネルギーを集中させることができるため、より微細な粒子へ作用しやすく、より細かな破砕につながると考えられています。
実際、タトゥー色素の粒子径はおおむね数十~数百nm程度とされ、短いピコ秒パルスはその熱緩和時間により近く、効率的な色素破砕につながる可能性があります。
なぜ当院ではQスイッチとピコの両方を使うのか
ここが当院のタトゥー除去で特に重要な部分です。
治療開始時の濃いタトゥーと、5回、7回と治療した後に薄く残っているタトゥーでは、レーザーが狙っている色素の状態が違います。
治療初期には色素量が多く、比較的大きな色素の塊も存在します。まずQスイッチレーザーなどでこうした色素をしっかり破砕します。
治療が進むと、大きく目立つ色素は減り、より細かな色素が残ってきます。そこでピコレーザーの短いパルスを利用して、残った色素をさらに細かく破砕していきます。
イメージとしては、
↓
Qスイッチレーザーでしっかり破砕
↓
中等度まで薄くする
↓
細かく残った色素
↓
ピコレーザーでさらに微細に破砕
↓
最後まできれいな除去を目指す
という考え方です。
もちろんすべてのタトゥーを必ずこの順番で治療するわけではありません。色、濃さ、インクの種類、治療歴によって最初からピコレーザーを使う場合もあります。
しかし当院では、最初から最後まで一種類のレーザーに固定するのではなく、色素の状態が変わればレーザーも変えることを重視しています。

「ピコレーザーだけあればいい」ではない理由
ピコレーザーは非常に優れたレーザーですが、「ピコだからすべての段階で一番」というわけではありません。
黒色タトゥーを1064nmで比較した臨床研究では、ピコ秒レーザーとナノ秒レーザーの両方に有効性が認められています。また、系統的レビューでも黒色タトゥーについてはQスイッチレーザーとピコレーザーの両方が有効とされています。
一方、ピコ秒レーザーは短いパルスによってより微細な色素破砕が期待でき、青・緑・黄色など一部のカラーではQスイッチレーザーより良好な結果が報告されています。
そのため、当院では「ピコかQスイッチか」という二択にはしません。
Qスイッチで取れる段階ではQスイッチを活かし、細かく残った色素にはピコを活かす。両方を使えることに意味があります。
レーザー照射時の注意事項
Qスイッチとピコの使い分けと同じくらい重要なのが「波長」です。
レーザー光は波長によって色素への吸収が異なるため、黒・赤・青・緑などすべてを一つの波長で治療するわけではありません。
当院では694nm・532nm・1064nmの3波長を使用します。
黒・濃紺など
黒系色素を中心に使用
赤・オレンジ系など
赤系カラーへの重要な選択肢
黒・青・緑系など
青・緑を含めカラーへの選択肢を広げる
タトゥー除去では、パルス幅を変えられることと、波長を変えられることの両方が重要です。
青・緑は532nmや1064nmでも取れることがある。しかし694nmルビーがあるとさらに対応しやすいといえます。
青・緑のタトゥーは「ルビーレーザーでなければ絶対に取れない」というわけではありません。インクによっては532nmや1064nmを含むレーザーでも反応することがあります。また、755nmなどのピコレーザーでも青・緑色素に良好な結果が報告されています。
しかし、青・緑は黒や赤と比較して治療に難渋することもあり、532nm・1064nmだけでは十分に反応しないケースがあります。
そこで治療選択肢を増やしてくれるのが694nmのQスイッチルビーレーザーです。
Qスイッチルビー694nmは青黒色・緑色などに長く使用されており、過去の比較研究では、緑色インクについて1064nm QスイッチNd(ヤグ)レーザーより良好な反応が報告されています。
青・緑は532nmや1064nmでも取れることがあります。しかし694nmルビーまで使用できると、反応しにくいカラータトゥーに対する次の選択肢を持つことができます。
カラータトゥーを除去するなら、まず「どんな機械があるか」を確認する
カラータトゥー除去では、クリニック選びも非常に重要です。
「ピコレーザー導入」「カラータトゥー対応」と書いてあるだけでは、実際にどこまで治療の選択肢があるのか分かりません。
全国どこのクリニックで治療を受ける場合でも、料金だけではなく、使用しているレーザー・波長・パルス幅まで確認することをおすすめします。
カラータトゥー除去のクリニック選び|5つのチェックポイント
Qスイッチレーザーは濃い~中等度までの色素をしっかり破砕するために有用で、ピコレーザーはその後に細かく残る色素をさらに微細に破砕する目的で活用できます。
もちろんタトゥーによって使い方は異なりますが、最初から最後までピコだけ、あるいはQスイッチだけというより、治療段階に応じて両方を選択できる方が治療設計の幅は広くなります。
カラータトゥー除去を検討する場合には、
「ピコレーザーがありますか?」だけでなく、「Qスイッチレーザーとピコレーザーの両方を使い分けていますか?」
と確認するとよいでしょう。
次に確認したいのが波長です。
532nm・1064nmはタトゥー除去で非常に重要な波長ですが、カラータトゥーではそれだけですべての色へ十分対応できるとは限りません。
特に青・緑系では694nmルビーが有力な選択肢になる場合があります。
「532nmと1064nmだけですか?694nmルビーレーザーもありますか?」
と確認することで、カラータトゥーへの治療選択肢が分かりやすくなります。
694nmがなければ治療できないという意味ではありませんが、694nmまで使えることで対応できる色の幅を広げることができます。
一つのタトゥーの中に黒・赤・青・緑など複数の色が混在していることがあります。
その場合、すべてを同じ波長で照射するとは限りません。
見た目が同じ色でも顔料の組成によって反応が異なるため、実際の治療反応を確認しながら波長を変更できることが重要です。
タトゥー除去では、治療するたびに残っている色素の状態が変わります。
最初はQスイッチレーザーが適していても、治療後半にはピコレーザーの方が適している場合があります。また、黒が消えて緑だけが残れば波長を変更する必要が出てくることもあります。
つまり重要なのは、
1064nmから694nmへ
パルス幅を変更
出力を変更
照射方法を変更
など、治療経過に合わせて設計を変えられることです。
白、肌色、ピンク、一部の赤などでは、レーザー照射によって色素が薄くなるのではなく、黒く変化する「逆説的黒化」が起こることがあります。
カラータトゥーでは、このような色調変化の可能性まで理解し、黒化した場合にも別の波長や治療方法へ変更できることが重要です。
カラータトゥー除去のクリニック選びチェックリスト
特に重要なのは①と②です。
Qスイッチ+ピコの両方を使えるか。532nm・1064nmだけでなく694nmルビーまで使用できるか。カラータトゥー除去を検討する際には、まずこの2点を確認すると、そのクリニックが持っている治療選択肢を把握しやすくなります。
なぜ694nmルビーがあることがカラータトゥーで強みになるのか
532nmと1064nmはタトゥー除去で非常に重要な波長です。
赤には532nm、黒には1064nmが代表的ですが、青・緑系では別の波長が有利になることがあります。694nmのQスイッチルビーは青黒色・緑色などへの治療実績があり、過去の比較研究では緑色インクについて1064nm Nd(ヤグ)レーザーより良好な反応が報告されています。つまり「全部ルビーで取る」という意味ではありません。532nm・1064nmに694nmという選択肢を加えることで、カラータトゥーに対して使い分けられる波長が増えることに意味があります。
パルス幅は短ければ短いほどよいわけではない
ピコレーザーはQスイッチレーザーより短いパルスによって、より微細な色素破砕が期待できます。
しかし、「最短○○psだから一番優れている」ということではありません。
治療初期の濃い色素と、治療後半に細かく残った色素では狙う対象が違うためです。
当院では、Qスイッチレーザーのナノ秒パルスとピコレーザーのピコ秒パルスを使い分けます。さらにピコレーザーでも、機種や状態に応じてパルス幅を変更します。
大切なのはパルス幅を短くすること自体ではなく、「今残っている色素に適したパルス幅を選ぶこと」です。
白・肌色・ピンクなどは「レーザーを当てると黒くなる」ことがある
白、肌色、ピンク、一部の赤色などでは、レーザー照射によって色素が薄くなるのではなく、逆に黒く変化することがあります。これを逆説的黒化といいます。
特に酸化鉄や酸化チタンなどが含まれる美容タトゥーやカラーインクで報告されています。
そのためカラータトゥーでは、見た目の色だけでレーザーを決めるのではなく、どのような顔料が使われている可能性があるか、照射後にどのような色調変化が起こり得るかまで考えて治療する必要があります。
逆説的黒化が起きても治療できないとは限らない
逆説的黒化が起きたからといって、その後の治療ができなくなるとは限りません。
黒化した場合には、照射前と同じ色素として考えるのではなく、黒化後の色調を改めて評価し、使用する波長・レーザー・設定を変更します。
黒化した色素に1064nmなどを使用して治療することで改善する場合があり、532nm・1064nmのピコ秒レーザーを使用して逆説的黒化が改善した症例も報告されています。
場合によってはCO2レーザーなど別の治療方法を検討することもあります。
重要なのは、黒化した後も同じ条件で繰り返すことではなく、黒化後の色素に合わせて治療を再設計することです。
タトゥー除去は何回必要?
タトゥー除去に必要な回数は一律ではありません。
色、濃さ、インク量、深さ、面積、部位、プロ・アマチュア、カラーの数、過去の治療歴などによって変わります。
当院では5~10回程度を一つの目安としてご説明していますが、必ずその回数で完全に消えるという意味ではありません。場合によっては、20回以上かかる場合もあります。
また治療後半ほど、残っている細かな色素をどこまで薄くするかが課題になることがあります。この段階でピコレーザーの短いパルスを活用することが、当院がQスイッチとピコの両方を使用する理由の一つです。
何回してもタトゥーが取れない場合は?
最初は順調に薄くなっていたのに、途中から変化が少なくなるケースがあります。
この場合に、同じレーザーをそのまま繰り返すだけではありません。
現在残っている色、色素の細かさ、使用している波長、パルス幅、過去の照射反応を改めて確認します。濃い色素がすでに取れて細かな色素だけが残っているのであれば、Qスイッチからピコレーザーへ変更することがあります。黒が薄くなって緑だけ残っているのであれば、1064nmだけではなく694nmを検討する場合があります。「何回やったか」ではなく、「今何が残っているか」を見て次のレーザーを決めることが重要です。
何回してもタトゥーが取れない場合は?
当院では、タトゥー除去を一台のレーザーだけで完結させる治療とは考えていません。
ピコレーザー
694nm
532nm
1064nm
複数のパルス幅
必要に応じた照射方法の変更
を、その時点で残っているタトゥーに合わせて選択します。
濃い~中等度の色素をQスイッチレーザーでしっかり破砕し、治療後半に細かく残った色素をピコレーザーでさらに細かくしていく。さらに色によって532nm・694nm・1064nmを使い分ける。
これが当院のタトゥー除去の考え方です。
最新のレーザーを一台持っていることより、複数のレーザー・波長・パルス幅を持ち、その時点のタトゥーに合わせて使い分けられることを重視しています。
まとめ|最後まできれいに取るためにQスイッチとピコを使い分ける
タトゥー除去では「ピコレーザーが一番新しいから、最初から最後までピコだけでよい」とは限りません。
Qスイッチレーザーには、濃い色素をしっかり破砕していく長年の実績があります。
一方、ピコレーザーはさらに短いパルスによって、治療後半に細かく残った色素をより微細に破砕できる可能性があります。
そのため当院では、
という考え方を一つの基本としながら、実際のタトゥーの状態に合わせて治療を組み立てています。
さらにカラータトゥーでは波長も重要です。
クリニックを選ぶときには、
Qスイッチレーザーとピコレーザーの両方を使い分けられるか
532nm・1064nmだけでなく694nmルビーなども使用できるか
この2点をまず確認するとよいでしょう。
Qスイッチで大きな色素を砕き、ピコでさらに細かく砕く。色によって波長も変える。最後まできれいなタトゥー除去を目指すには、一種類のレーザーではなく、複数の選択肢を使い分けることが重要です。
Q&A
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄
院長 加藤 成貴
【参考文献】
1. Reiter O, et al. Picosecond lasers for tattoo removal: a systematic review. Lasers Med Sci. 2016.
2. Gurnani P, et al. Comparing the efficacy and safety of laser treatments in tattoo removal: A systematic review. J Am Acad Dermatol.
3. Ross EV, et al. Comparison of responses of tattoos to picosecond and nanosecond Q-switched Nd lasers. Arch Dermatol. 1998.
4. Izikson L, et al. Safety and effectiveness of black tattoo clearance after treatment with a 758-nm 500-picosecond laser. Lasers Surg Med. 2010.
5. Levine VJ, Geronemus RG. Tattoo removal with the Q-switched ruby laser and Q-switched Nd laser: a comparative study. Cutis. 1995.
6. Anderson RR, et al. Cosmetic tattoo ink darkening. Arch Dermatol. 1993.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
わからないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。医師の視点から、科学的根拠に基づいて丁寧にお応えします。








