睡眠コラム|第7回・全10回
目次
いびきのレーザー治療とは?
切らない治療の仕組みと特徴を医師が解説
名古屋でいびき治療を検討している方へ。今回は、いびきのレーザー治療の中でも「切らない治療」の仕組みと特徴を中心に、手術との違い、治療の負担、効果の限界について解説します。
いびきのレーザー治療とは?
「いびきをレーザーで治療する」と聞くと、「のどをレーザーで焼くのでは?」「手術と何が違うの?」と不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、現在行われているいびきのレーザー治療には、組織を切開・蒸散する方法だけではなく、口腔内からレーザーを照射し、組織を切らずにいびきの軽減を目指す方法があります。
代表的なのが、2,940nmのEr:YAG(エルビウムヤグ)レーザーを非蒸散性に照射する治療です。このタイプの治療では、軟口蓋などの組織を切り取るのではなく、レーザーによる熱作用を利用して口腔・咽頭周囲の軟部組織へアプローチします。
まず押さえておきたいのは、「いびきレーザー治療=のどを焼き切る治療」ではないということです。

なぜ口の中へのレーザー照射で、いびきの軽減を目指せるのでしょうか?
いびきの音は、睡眠中に上気道が狭くなり、空気が通過するときに軟口蓋や口蓋垂周囲などの軟らかい組織が振動することによって生じる場合があります。そのため、いびき治療では単純に「音」を止めるのではなく、どこで空気の通り道が狭くなり、どの組織が振動に関係しているのかを考えることが重要です。
Er:YAGレーザーを用いた非蒸散性の治療では、軟口蓋を中心とした口腔・咽頭周囲の組織へコントロールされた熱作用を加えます。これによりコラーゲンへの熱作用や組織のリモデリングを促し、軟部組織の引き締まりを通じていびきの軽減を目指す、というのが基本的な考え方です。
つまり、気道を切って広げる治療ではなく、いびきに関係する軟部組織の状態へ非侵襲的にアプローチする治療と考えると分かりやすいでしょう。
Er:YAGレーザーの「2,940nm」にはどんな特徴がありますか?
Er:YAGレーザーの波長は2,940nmです。この波長は水に強く吸収されるという特徴があります。口腔内の粘膜にも水分が多く含まれているため、照射方法を細かく調整することで、表面を大きく傷つけることなく組織へ熱作用を与える使い方ができます。
いびき治療で重要なのは、単に「Er:YAGレーザーを使用する」ということだけではありません。どのようなパルス幅、エネルギー、照射モードで使用するのかによって、組織への作用は変わります。そのため、いびき治療では使用するレーザーだけでなく、どのような照射方法で治療するのかも重要です。
SMOOTHモードとは?
Er:YAGレーザーを用いた切らないいびき治療で特徴的なのが、SMOOTHモードです。SMOOTHモードでは、低いエネルギーのレーザーパルスを連続して照射し、粘膜表面を蒸散させるのではなく、粘膜表面を介して組織へ徐々に熱作用を与えます。
そのため、切る・削るためのレーザーではなく、熱を利用するためのレーザーという位置づけになります。レーザー治療という言葉から「焼く」「削る」というイメージを持つ方もいますが、非蒸散性Er:YAGレーザー治療では、治療の考え方そのものが異なります。

「切るレーザー治療」と「切らないレーザー治療」の違い
「いびきレーザー治療」という言葉だけでは、どの治療を指しているのか分からないことがあります。大きな違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 切開・蒸散を伴うレーザー治療 | 非蒸散性Er:YAGレーザー治療 |
|---|---|---|
| 主な考え方 | 組織を切開・蒸散し形態を変える | 組織へ熱作用を加える |
| 組織の切除 | あり | 原則なし |
| 創部 | 生じる | 切開創を作らない |
| 出血 | 起こり得る | 切開による出血を伴わない |
| 痛み・ダウンタイム | 比較的大きくなることがある | 比較的抑えやすい |
| 治療回数 | 方法による | 複数回治療が基本 |
| 代表例 | レーザーを用いた口蓋形成術など | NightLaseなど |
同じ「レーザー」という言葉を使用していても、治療内容はかなり異なります。医療機関を選ぶ際には、「レーザー治療をしていますか?」だけではなく、「どのレーザーを、どのような方法で使用する治療なのか」まで確認するとよいでしょう。
どこにレーザーを照射するのでしょうか?
非蒸散性Er:YAGレーザー治療では、口腔内から、軟口蓋、口蓋垂周囲、口蓋弓、咽頭周囲など、いびきに関係すると考えられる軟部組織へ照射します。ただし、ここで重要なのが、いびきの原因は全員同じではないということです。
いびきには、軟口蓋だけでなく、舌、顎、鼻、扁桃、体型、寝姿勢など複数の要因が関係します。そのため、単に決められた位置へ同じようにレーザーを照射すればよいというものではありません。

レーザーが先にあるのではなく、「患者さんのいびき」が先にある
いびきレーザー治療で最も重要なのは、機械そのものではなく適応を判断することだと考えています。例えば、いびきの主な原因が強い鼻閉であれば、レーザーより先に鼻の治療を考えた方がよいことがあります。
舌や顎の位置が大きく関係していれば、マウスピースなど別の方法が適している場合もあります。一方、軟口蓋をはじめとした口腔・咽頭の軟部組織がいびきに関係していると考えられる場合には、非蒸散性レーザー治療が候補になることがあります。
つまり、レーザーがあるからレーザーをするのではありません。まず患者さんのいびきがあり、その原因を考え、そのうえで治療方法を選びます。いびき治療では、この順番が重要です。
いびきレーザー治療にはどの程度のエビデンスがありますか?
Er:YAGレーザーを使用したいびき治療については、複数の臨床研究が報告されています。
「研究で改善が報告されている」ことと、「すべての人に同じ効果が出る」ことは別です。研究対象や評価方法、経過観察の期間によっても結果の受け止め方は変わります。現時点では、適切に選択された患者さんに対する、いびき治療の選択肢の一つとして考えるのが適切です。
どのような人がレーザー治療を検討しやすいのでしょうか?
切らないいびきレーザー治療は、特にいびきそのものが主な悩みで、口腔・咽頭周囲の軟部組織がいびきに関係していると考えられる方で検討される治療です。
これらの希望だけで適応が決まるわけではありません。強い鼻づまり、著しい扁桃肥大、顎や舌の位置が大きく関係している場合などでは、レーザーだけでは十分な改善が期待しにくく、原因に応じた別の治療を考える必要があります。
痛み・ダウンタイム・治療回数と効果の持続
痛みは強いのでしょうか?
非蒸散性Er:YAGレーザー治療は、組織を切開・切除する治療とは異なります。そのため、治療中には温かさや熱感、軽い刺激感などを感じることがありますが、切開を伴う手術と比較すると身体への負担を抑えやすい治療です。
NightLaseを用いたランダム化比較試験でも、局所麻酔を使用せず治療が行われています。ただし、痛みや熱さの感じ方には個人差があります。「無痛」と断定するのではなく、比較的負担を抑えながら行える治療と理解しておく方が適切でしょう。
痛みに関する試験の詳細は参考文献1をご参照ください。
ダウンタイムはありますか?
非蒸散性の治療では、軟口蓋などを切開したり縫合したりしません。そのため、大きなダウンタイムを必要としにくいことが特徴です。治療後に一時的なのどの違和感、乾燥感、刺激感などを感じる場合はありますが、一般的には日常生活への影響を抑えながら治療を行いやすい方法です。
ただし、症状や経過には個人差があります。
何回くらい治療するのでしょうか?
非蒸散性Er:YAGレーザーによるいびき治療は、1回ですべてを完結させるというより、複数回の照射によって変化をみていく治療です。NightLaseのランダム化比較試験では、3回の治療が行われています。
実際の治療回数や間隔は、使用する機器・照射方法と診察結果をもとに決めます。ただし、必要な回数は、いびきの程度、口腔・咽頭の形態、年齢、体型、治療への反応などによって異なります。そのため、「1回で必ず治る」「3回受ければ必ず治る」といった治療ではありません。
治療経過を確認しながら判断することが大切です。
効果は永久に続くのでしょうか?
永久的な効果を保証する治療ではありません。いびきには、加齢、体重変化、飲酒、鼻づまり、睡眠習慣なども関係します。また、口腔・咽頭周囲の組織も年齢とともに変化します。そのため、一度いびきが改善しても、時間の経過とともに再びいびきが気になることがあります。
必要に応じて追加治療やメンテナンスを検討するという考え方になります。長期的な効果については、今後さらに質の高い研究が必要です。

いびきが減ることと、睡眠時無呼吸が治ることは別です
これは非常に重要です。いびきの音が小さくなったからといって、睡眠時無呼吸も改善したとは限りません。過去のEr:YAGレーザー治療に関するシステマティックレビュー・メタ解析では、いびきに関する評価は改善した一方で、AHIやRDIについて明確な改善が確認されなかったとする報告があります。
そのため、「レーザーを受けて静かになったから、睡眠中の呼吸も問題ない」とは判断できません。特に、睡眠中の呼吸停止、息をあえぐような呼吸、強い日中の眠気などがある場合には、必要に応じて睡眠時無呼吸について別に評価する必要があります。
AHI・RDIの結果については2020年のレビューで報告されています。AHIは無呼吸・低呼吸指数、RDIは呼吸障害指数で、睡眠中の呼吸状態を評価する指標です。
名古屋でいびきのレーザー治療を検討している方へ
名古屋で「いびき レーザー治療」「切らないいびき治療」などを検索すると、さまざまな治療が見つかると思います。その際には、治療名だけを見るのではなく、どのレーザーを使用するのか、組織を切開・蒸散する治療なのか、非蒸散性の治療なのか、誰が口腔・咽頭の状態を確認するのか、睡眠時無呼吸を疑う症状があった場合にどう対応するのかまで確認することをおすすめします。
同じ「いびきレーザー」という名称でも、実際の治療内容は異なる場合があります。まゆりなclinic名古屋栄では、医師である院長が口腔・咽頭の状態や症状を確認し、いびきのレーザー治療はすべて院長が施術します。
まとめ|切らないいびきレーザー治療は、治療選択肢の一つです
次の記事では、今回紹介した非蒸散性Er:YAGレーザー治療の中でも、NightLase(ナイトレーズ)についてさらに詳しく解説します。
次回予告:ナイトレーズとは?いびきレーザー治療の仕組み・特徴・治療回数を医師が解説
よくある質問
Q. いびきのレーザー治療とはどんな治療ですか?
Q. レーザーでのどを焼く治療ですか?
Q. いびきレーザー治療と手術は何が違いますか?
Q. 何回くらい受けますか?
Q. 痛みやダウンタイムはありますか?
Q. いびきレーザー治療は誰にでも効果がありますか?
Q. いびきが改善すれば睡眠時無呼吸も治ったと考えてよいですか?
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参考文献
- Picavet VA, Dellian M, Gehrking E, Sauter A, Hasselbacher K. Treatment of snoring using a non-invasive Er:YAG laser with SMOOTH mode (NightLase): a randomized controlled trial. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2023;280:307–312.
- Dembicka-Mączka D, et al. Effectiveness of the Er:YAG Laser in Snoring Treatment Based on Systematic Review and Meta-Analysis Results. J Clin Med. 2025;14(12):4371.
- Neruntarat C, Khuancharee K, Shoowit P. Er:YAG laser for snoring: a systemic review and meta-analysis. Lasers Med Sci. 2020;35:1231–1238.
- Fotona. NightLase®(メーカーによる治療・技術情報).
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を行うものではありません。治療効果には個人差があります。睡眠中の呼吸停止や強い日中の眠気などがある場合には、医療機関へご相談ください。
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院などで内科・循環器内科・救急医療の診療経験を積み、2022年にまゆりなclinic名古屋栄を開院。
循環器内科では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療にも携わり、ポリソムノグラフィー(PSG)による睡眠検査、CPAP療法、マウスピース治療などを行っています。
いびきは単なる音の問題ではなく、睡眠中の呼吸や睡眠時無呼吸症候群が関係していることもあります。
当院では、こうした睡眠医学・内科的な視点から状態を確認したうえで、切らないいびきレーザー治療「ナイトレーズ」を行っています。
すべての方にレーザー治療を勧めるのではなく、口腔・咽頭の状態や症状を医師が確認し、必要に応じて睡眠時無呼吸症候群の評価も行いながら、その方に適した治療をご提案します。
「いびきを止める」だけでなく、「睡眠中にどのように呼吸しているか」まで考える診療を大切にしています。








