老人性色素斑とは?原因・見分け方・治療法を医学的に解説|名古屋
- 2026.9.19
老人性色素斑は、一般に「シミ」と呼ばれる病変の代表です。医学的にはsolar lentigo(日光黒子)と呼ばれ、主に長期間の紫外線曝露を受けた顔、手の甲、前腕などに生じる良性色素性病変です。淡い茶色から濃い褐色まで色調には幅があり、通常は平坦で境界が比較的明瞭です。慢性的な紫外線曝露と強く関連し、光老化の代表的な所見の一つと考えられています。
老人性色素斑とは?
老人性色素斑は、後天的に生じる境界明瞭な褐色斑です。数mm程度

の小さなものから数cmまであり、色は淡褐色、褐色、濃褐色までさまざまです。顔、こめかみ、頬、手背など、慢性的に紫外線を受ける部位に多くみられます。「老人性」という名称ですが、高齢者だけにできる病変ではありません。紫外線曝露量や肌質によっては30代〜40代から目立つことがあります。重要なのは年齢そのものより、これまでに受けてきた慢性的な紫外線曝露です。
老人性色素斑はなぜできる?
老人性色素斑の形成には、単純な「メラニンの増加」だけではなく、表皮・メラノサイト・角化細胞・真皮環境の変化が関与しています。慢性的な紫外線刺激により、角化細胞からendothelin-1、stem cell factor、FGFなどのメラノサイト活性化因子が増加し、メラニン産生が促進されることが報告されています。また、病変部では角化細胞の増殖やターンオーバーの変化も生じ、メラニンが表皮基底層周囲に蓄積しやすい環境が形成されます。
つまり老人性色素斑は、単に「メラニンが増えた場所」ではなく、紫外線によって表皮構造そのものが長期的に変化した病変と考えられています。
病理では何が起きている?
老人性色素斑の典型的な病理所見として、表皮基底層のメラニン増加と、rete ridge(表皮突起)の延長が知られています。顔面では、表皮が比較的平坦で基底層の色素増加が主体のタイプと、表皮過形成を伴い、色素を多く含むbasaloid cellで構成された長いrete ridgeを示すタイプがあります。また、老人性色素斑ではメラノサイト数が増える場合がありますが、それだけでなく、角化細胞の増殖や表皮構造の変化がメラニン蓄積に重要と考えられています。193遺伝子の発現変化を解析した研究でも、老人性色素斑では角化細胞関連遺伝子の変化が目立ち、単純なメラニン産生増加だけでは説明できないことが示されています。
FGFR3・PIK3CA変異も報告されている
老人性色素斑では、FGFR3やPIK3CAなどの体細胞変異が報告されています。
30病変を解析した研究では、FGFR3変異が17%、PIK3CA変異が7%に認められました。これらの変異は脂漏性角化症でもみられるため、老人性色素斑と脂漏性角化症の間に一部共通する分子基盤がある可能性が示唆されています。
ただし、すべての老人性色素斑が脂漏性角化症へ進行するという意味ではありません。
紫外線が最も重要な背景因子

老人性色素斑は、慢性的な紫外線曝露と強く関連しています。日光露出部に好発し、光老化の代表的な所見として扱われます。
そのため、
・若い頃に日焼けを繰り返した
・屋外スポーツを長く続けた
・仕事で屋外にいる時間が長かった
・日焼け止めをあまり使用してこなかった
といった人では、中年以降になって老人性色素斑が目立ってくることがあります。
一方、紫外線だけで個々の病変数や濃さを完全には説明できず、遺伝的素因や肌質なども関係します。
老人性色素斑とそばかすは違う
そばかす(雀卵斑)は、遺伝的素因が強く、幼少期〜若年期から鼻をまたいで両頬に細かく多数出ることが多い病変です。
老人性色素斑は成人以降に目立つことが多く、紫外線曝露部に単発〜多発で生じます。そばかすでは表皮基底層の色素増加はみられますが、老人性色素斑に特徴的なrete ridgeの延長は通常みられません。
老人性色素斑と肝斑は違う
老人性色素斑は、比較的境界が明瞭な点状〜斑状の病変です。一方、肝斑は両頬を中心に左右対称性に広がり、輪郭がやや不明瞭で面状にみられることが多い病変です。
両者は同じ顔に混在することがあります。この場合、老人性色素斑だけを見て顔全体に同じレーザーを当てるのではなく、背景の肝斑を分けて考えます。
ADMとの違い
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、頬骨部などに灰色〜青褐色の斑点として現れます。老人性色素斑が主に表皮側の病変であるのに対し、ADMでは真皮内にメラノサイトが存在します。そのため、同じ「シミ」に見えても色調や深さ、治療方法が異なります。
PIHとの違い
PIH(炎症後色素沈着)は、ニキビ、湿疹、擦り傷、レーザー治療などの炎症後に生じる色素沈着です。
老人性色素斑のように独立した色素性病変として生じるのではなく、「何か炎症があった場所に残る」という経過が重要です。
PIHは老人性色素斑のようにピコスポットで1個ずつ取る病変ではありません。
脂漏性角化症との違い
老人性色素斑は基本的に平坦ですが、脂漏性角化症では厚み、ざらつき、隆起がみられることがあります。
ただし初期の脂漏性角化症はかなり平坦で、老人性色素斑との鑑別が難しい場合があります。病理学的にも両者には共通点があり、一部では連続性が示唆されています。
老人性色素斑は放置しても大丈夫?
典型的な老人性色素斑は良性病変であり、必ず治療しなければならないものではありません。ただし、見た目が似ている病変として、pigmented actinic keratosis、色素性基底細胞癌、lentigo malignaなどが鑑別に挙がります。急速な変化、色の不均一、形の不整、出血などがある場合には、美容レーザー治療より診断を優先します。
老人性色素斑は自然に消える?

一般的な老人性色素斑は、そばかすのように季節によって明瞭に薄くなる病変ではありません。一度形成されると自然消退しにくく、治療を行わない限り長期間残ることがあります。
紫外線対策は新しい病変や色の悪化を抑えるうえで重要ですが、すでに形成された老人性色素斑を完全に消す治療ではありません。
老人性色素斑の治療法
治療には、レーザー、IPL、外用、凍結療法など複数の方法があります。2025年のsystematic reviewでは、レーザー、IPL、外用治療など41の臨床試験が解析され、レーザーやIPLは老人性色素斑に対して高い有効性を示しました。
2023年の別のsystematic reviewでも、lentiginesに対してレーザー治療は外用やcryotherapyなどと比較して高い完全奏効率を示しました。
当院では病変の濃さ、数、分布、肌質、PIHリスクなどを見ながら治療を選択します。
濃い老人性色素斑にはピコスポット
濃く境界が比較的明瞭な老人性色素斑では、ピコスポットを使用します。
典型的な病変では1回の照射で大きく改善し、当院ではほぼ取り切れるケースも少なくありません。ただし、治療後にはPIHが出る可能性があります。したがって「1回で取れる可能性が高い」と「治療後すぐに完全な肌色になる」は別です。
薄い老人性色素斑にはルビーフラクショナルを選ぶことがある
薄い老人性色素斑や細かいシミが多数ある場合には、当院では694nmルビーフラクショナルを優先することがあります。694nmはメラニンへの吸収性が高い波長で、ルビーレーザーは老人性色素斑の治療に長く使用されてきた実績があります。
一方、非常に薄いシミではIPLの反応が弱いこともあるため、「薄いシミ=IPL」と一律には考えません。
IPLは赤みや肌質も同時に改善したい場合に
IPLは老人性色素斑にも有効ですが、当院では特に、
・シミ
・赤み
・くすみ
・肌全体の色ムラ
などを同時に整えたい場合に選択します。
ピコスポットやルビーフラクショナルと比べ、「シミそのものをどこまで取りたいか」「肌質改善も目的にするか」で使い分けます。
Qスイッチレーザーは現在も有効だが、当院では基本的にピコを使用
Qスイッチレーザーは老人性色素斑に長く使用されてきた有効な治療です。一方、現在はピコ秒レーザーも広く普及しており、治療効果、PIH、表皮反応、ダウンタイムなどを考慮してピコレーザーを選択する場面が増えています。
当院では老人性色素斑のスポット治療では基本的にピコレーザーを使用しています。
Qスイッチが無効という意味ではなく、複数の選択肢がある中で、病変と治療後の経過まで考えて治療法を選択しています。
老人性色素斑は1回で治る?
濃く典型的な老人性色素斑では、ピコスポット1回でほぼ取り切れる場合があります。
一方、
・非常に薄い
・数が多い
・肝斑やPIHが混在する
・治療後にPIHが生じた
場合には、治療回数や評価時期が変わります。
治療後に茶色く見えるものが、病変の残存なのかPIHなのかを見分けることも重要です。
治療後の紫外線対策は重要
老人性色素斑は慢性紫外線曝露と関連する病変なので、治療後も紫外線対策は重要です。
日焼け止め、帽子、日傘、長時間の直射日光を避けるなどを行います。
ただし、治療後に完全に紫外線を避ければ絶対に再発しないという意味ではありません。長期的には、新しい老人性色素斑が別の場所に生じることもあります。
よくある質問(Q&A)
まとめ|老人性色素斑は「ただのメラニン」ではなく光老化による表皮変化
老人性色素斑(日光黒子/solar lentigo)は、長期間の紫外線曝露と加齢に伴って生じる代表的な良性色素性病変です。
病理学的には、表皮基底層のメラニン増加だけでなく、rete ridgeの延長、角化細胞の増殖・ターンオーバー変化などがみられます。さらにFGFR3、PIK3CAなどの体細胞変異も報告されており、単純な「メラニンがたまったシミ」ではなく、紫外線によって形成された一つの表皮病変として理解する方が正確です。
治療では、濃い老人性色素斑にはピコスポット、薄いシミや細かい病変にはルビーフラクショナル、赤みや肌質改善も目的とする場合にはIPLなど、病変の濃さ・数・目的によって治療を使い分けます。
そして最も重要なのは、老人性色素斑に見えているものが本当に老人性色素斑なのかを確認することです。肝斑、ADM、そばかす、PIH、脂漏性角化症、まれには悪性病変まで鑑別したうえで治療を選ぶ必要があります。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Mardani G, et al. Treatment of Solar Lentigines: A Systematic Review of Clinical Trials. J Cosmet Dermatol. 2025;24(4).
- Mukovozov I, et al. Treatment of Lentigines: A Systematic Review. Dermatol Surg. 2023;49(1):17-24.
- Yonei N, et al. Melanocyte Activation Mechanisms and Rational Therapeutic Treatments of Solar Lentigos. Int J Mol Sci. 2019;20(15):3666.
- Hafner C, et al. FGFR3 and PIK3CA mutations are involved in the molecular pathogenesis of solar lentigo. Br J Dermatol. 2009;160(3):546-551.
- Praetorius C, et al. Molecular and histological characterization of age spots. Exp Dermatol. 2017;26(3):242-248.
- Cario M, et al. Keratinocytic Malfunction as a Trigger for the Development of Solar Lentigines. Dermatopathology. 2019.
- Ortonne JP, et al. Clinical and histological characteristics of solar lentigines.
- Krutmann J, et al. Environment-induced lentigines: formation of solar lentigines beyond ultraviolet radiation.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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