老人性色素斑は1回で取れる?ピコスポット後の経過・PIH・再照射を解説|名古屋
- 2026.9.19
老人性色素斑(日光黒子/solar lentigo)は、濃く境界がはっきりした典型的な病変であれば、ピコスポット1回で大きく改善し、当院ではほぼ取り切れるケースも少なくありません。一方、照射後すぐに最終的な肌色になるわけではなく、赤み、痂皮、一時的な濃色化、その後のPIH(炎症後色素沈着)を経ることがあります。重要なのは、治療後に茶色く見えても「シミが残った」とすぐ判断しないことです。
目次
老人性色素斑は1回で取れる?
典型的な老人性色素斑では、1回のスポット照射で高い改善が期待できます。2025年のsystematic reviewでは、老人性色素斑に対するピコ秒レーザーの有効率は67.9〜93.02%と報告されています。また、532nmピコ秒Ndレーザーと532nm QスイッチNdレーザーを比較したsplit-face試験では、1回治療後の臨床的クリアランスはピコ秒レーザーの方が良好でした。そのため、濃く境界が明瞭な老人性色素斑では、まず1回のピコスポットでしっかり治療するという考え方ができます。
当院では「ピコレーザーなら何でも同じ」とは考えていません
ピコレーザーは、ピコ秒単位という非常に短いパルス幅で照射するレーザーですが、すべてのピコレーザーが同じではありません。
実際には、
・波長
・パルス幅
・スポット径
・エネルギー密度
・照射方法
などによって、メラニンへの反応や周囲組織への影響が変わります。
532nm、730nm、755nm、785nm、1064nmなど複数波長のピコ秒レーザーを比較した研究でも、メラノソームを破壊するために必要なエネルギーは波長によって異なることが示されています。
また、アジア人の老人性色素斑に532nm・750ピコ秒Ndレーザーを使用した研究では、43病変中40病変(93.0%)が1回治療で75%以上のクリアランスを示し、PIHは4.65%でした。組織学的にも、ピコ秒レーザーではメラノソームを破壊しながら周囲組織への影響を抑えられる可能性が報告されています。
そのため当院では、単に「ピコレーザーを使用する」というだけではなく、老人性色素斑の濃さや深さに対して、どの波長・パルス幅・照射条件を使用するかも重視しています。
老人性色素斑をきれいに取るためには、機械名だけではなく、その機械をどの設定で使うかまで含めて考えることが重要です。
「1回照射=治療直後に完成」ではない
レーザー照射後の皮膚には治癒過程があります。
一般的には、
・照射直後:赤み・白色変化
・数日:シミ部分が濃く見える、薄い痂皮ができる
・その後:痂皮が取れ、色が薄くなる
・数週間〜数か月:PIHが出ることがある
という経過をとります。
つまり、施術自体は1回でも、最終評価までには時間が必要です。
ピコスポット後に一度濃く見えるのは普通?
治療後にシミ部分が一時的に濃く見えることがあります。これは照射した色素や表皮が反応し、痂皮状になっているためで、必ずしも悪化ではありません。
無理にこすったり痂皮を剥がしたりせず、自然に脱落するのを待ちます。
PIHはいつ出る?
PIHは治療直後ではなく、数週間後から目立ってくることがあります。レーザーによる炎症をきっかけにメラノサイトが活性化し、メラニン産生が一時的に増えるためです。
当院では、PIHが目立ちやすい時期として1〜2か月前後を意識し、その後の経過をみます。
ピコスポットでもPIHは起こる
ピコ秒レーザーはQスイッチレーザーよりPIHを抑えやすい可能性がありますが、PIHがゼロになるわけではありません。
ピコ秒レーザーとナノ秒レーザーを比較したsystematic review・meta-analysisでも、アジア人ではピコ秒レーザーの方がPIHや色素脱失を抑えやすい傾向が報告されています。
そのため、ピコレーザーはPIHリスクを考慮した治療選択肢ですが、「ピコなら必ずPIHが出ない」という意味ではありません。
シミが残ったのかPIHなのか、どう見分ける?

治療後に茶色く見える場合には、大きく分けて病変の残存とPIHを考えます。
・残存した老人性色素斑
→ 元の病変と似た形で、同じ場所に色素が残る
・PIH
→ 治療部位全体が均一〜ややぼんやり茶色く見えることがある
ただし、見た目だけでは判断しにくいこともあります。そのため治療前の写真と比較しながら経過を見ることが重要です。
当院では必要に応じてNeo Voir I PLUSなどの肌診断機器も使用し、治療前後の色素分布を同じ条件で比較します。
すぐに再照射しない方がいい理由
治療後に茶色く見えると、「取れていないからもう一度レーザーを当てたい」と思うかもしれません。しかし、それがPIHであれば、強いスポット照射を追加することで新たな炎症を起こし、色素沈着を長引かせる可能性があります。
そのため、PIHなのか残存した老人性色素斑なのかを見極める前に再照射しないことが重要です。
再照射はいつ判断する?

当院では、ピコスポット後の再照射を急がず、必要に応じて6〜9か月程度の経過もみながら判断します。
理由は、
・PIHが時間とともに薄くなる
・残存病変との区別がつきやすくなる
・再発や新しい病変との区別もしやすくなる
ためです。
Qスイッチルビーレーザーの前向き研究でも、治療後の色調変化は6か月のフォローで改善しています。
6〜9か月待つのは長すぎない?
すべての患者さんで必ず9か月待つという意味ではありません。
明らかに病変が残っている、PIHがほとんどない、重要な予定があるなどの場合には、より早く追加治療を検討することもあります。一方、PIHが強く残っている場合には、焦ってスポット照射を追加せず、まず色素沈着が落ち着くのを待つ方がよい場合があります。
PIHを早めに薄くしたい場合は治療することもある
PIHは時間の経過とともに自然に薄くなることもありますが、「できるだけ早く色を戻したい」「仕事や予定があり、茶色い色素沈着を早めに改善したい」という場合には、肌状態を確認したうえで積極的に治療することがあります。

当院では、
・OPトーニング
・ピコトーニング
・C-OPERA
・トラネキサム酸
・システアミン
・美白外用
などを状態に応じて組み合わせます。
重要なのは、早く消したいからといって強いスポット照射を追加することではありません。PIHは老人性色素斑とは異なるため、PIHそのものにピコスポットを使用することは基本的にありません。 炎症が落ち着いていることを確認しながら、刺激を抑えた治療を組み合わせて改善を目指します。
ピコスポット後の紫外線対策は重要

紫外線曝露はPIHを長引かせる要因の一つです。治療後は、
・日焼け止め
・帽子
・日傘
・長時間の直射日光を避ける
などを行います。
治療した老人性色素斑だけでなく、新しい色素性病変を増やさないためにも紫外線対策は重要です。
摩擦も避ける

治療部位をこする、痂皮を剥がす、強くマッサージするといった刺激は炎症を長引かせる可能性があります。治療後は、紫外線だけでなく摩擦を避けることも重要です。
老人性色素斑が再発したように見える場合
治療後しばらくして再び茶色く見える場合、必ずしも同じ老人性色素斑の再発とは限りません。考えられるのは、
・PIH
・病変の残存
・同じ部位に色素が再び目立ってきた
・近くに新しい老人性色素斑ができた
などです。
再発、残存、新生病変を分けて考えることが重要です。
1回で取れない老人性色素斑もある
老人性色素斑でも、
・非常に薄い
・色素が不均一
・大きい
・他の病変が混在している
場合には、1回のスポット治療だけで理想的な仕上がりにならないことがあります。
特に薄い老人性色素斑では、当院は無理に高出力スポット照射するより、ルビーフラクショナルを選択することがあります。
Q&A
まとめ|老人性色素斑は1回で取れることも多いが、ピコの種類と最終評価まで考える
濃く境界が明瞭な老人性色素斑は、ピコスポット1回で大きく改善し、ほぼ取り切れるケースがあります。
ただし、ピコレーザーであれば何でも同じではありません。波長、パルス幅、スポット径、出力などによって色素への作用は異なるため、当院では病変に合わせた機種・照射条件を重視しています。
また、治療後には赤み、痂皮、一時的な濃色化、PIHが生じることがあり、施術回数が1回でも最終的な肌色が落ち着くまでには時間が必要です。
特に重要なのは、治療後に茶色く見えるものをすぐ「残ったシミ」と判断しないことです。PIHなのか、病変が残っているのかを見分けてから再照射を判断します。
まゆりなclinic名古屋栄では、典型的な老人性色素斑にはピコスポットを使用し、治療後は必要に応じて6〜9か月程度まで経過を確認しながら追加治療を判断します。
1回で取ることだけでなく、どのピコレーザーをどの条件で使用し、最終的にきれいな肌色へ戻すかまで含めて治療を考えることが重要です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Mardani G, et al. Treatment of Solar Lentigines: A Systematic Review of Clinical Trials. J Cosmet Dermatol. 2025;24(4).
- Kim JY, Yang J, Huh G, et al. A Split-Face, Single-Blinded, Randomized Controlled Comparison of 532 nm Picosecond Nd Laser versus 532 nm Q-Switched Nd Laser in the Treatment of Solar Lentigines.
- Shimojo Y, et al. Wavelength-dependent threshold fluences for melanosome disruption to evaluate the treatment of pigmented lesions with 532-, 730-, 755-, 785-, and 1064-nm picosecond lasers. Lasers Surg Med. 2024.
- Treatment of solar lentigines using a combination of picosecond laser and biophotonic treatment. Lasers Surg Med. 2018.
- Comparative appraisal with meta-analysis of picosecond versus nanosecond lasers for hyperpigmented disorders and tattoos. Lasers Med Sci. 2025.
- Kang DH, et al. Postoperative risk assessment of post-inflammatory hyperpigmentation and the efficacy of delayed prevention following 532 nm Q-switched Nd laser treatment of solar lentigines. J Dermatolog Treat. 2024.
- Efficacy and adverse effects of Q-switched ruby laser on solar lentigines: a prospective study of 91 patients. Dermatol Surg. 2008.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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