老人性色素斑のレーザー後に濃くなった?PIH・残存・再色素化(再発)の見分け方|名古屋
- 2026.9.19
老人性色素斑(日光黒子/solar lentigo)のレーザー治療後に、「取ったはずのシミがまた濃くなった」「治療前より茶色く見える」と不安になることがあります。しかし、レーザー後に濃く見える=治療失敗や再発とは限りません。
治療後に茶色く見える原因には、主に、
・治療直後の一時的な濃色化や痂皮
・PIH(炎症後色素沈着)
・老人性色素斑の残存
・再色素化(再発)
があります。
これらは出現する時期や色素の分布が異なるため、経過と治療前後の写真を比較しながら見分けることが重要です。

目次
まず「いつ濃くなったか」が重要
レーザー後の色素を見分ける際には、「いつ濃くなったのか」が重要な手がかりになります。
治療直後〜数日
→ レーザー反応による濃色化や薄い痂皮→4、5日~2週間以内に痂皮が取れる。
数週間〜1、2か月
→ PIHが目立ってくる時期
治療後から元の形のまま色が残っている
→ 老人性色素斑の残存を考える
一度かなり薄くなった後、同じ場所が再び濃くなる
→ 再色素化(再発)を考える
もちろん個人差があり、時期だけで確定できるわけではありませんが、鑑別の重要な情報になります。
治療直後に濃くなるのは異常ではない
ピコスポットなどで老人性色素斑を照射すると、治療直後から色が濃くなったり、数日かけて薄い痂皮状になったりすることがあります。
これは治療した色素や表皮が反応している過程であり、必ずしも悪化ではありません。
この時期に強くこする、痂皮を剥がす、スクラブを使用するといった刺激を加えると炎症を長引かせる可能性があるため、自然に経過を見ることが重要です。
数週間後に濃くなったらPIHの可能性
レーザー後に一度薄くなったにもかかわらず、数週間してから再び茶色くなってきた場合にはPIHを考えます。
PIHは、レーザーによる炎症をきっかけにメラノサイトが活性化し、メラニン産生が一時的に増えることで生じる色素沈着です。
老人性色素斑に対するレーザー治療後にはPIHが一定の割合で生じることが複数の研究で報告されています。発生率は使用するレーザー、照射条件、肌質、判定基準などによって大きく異なるため、「何%の人に出る」と一律に考えることはできません。
PIHは「シミが戻った」ように見える
PIHが患者さんを不安にさせる理由は、元の老人性色素斑を治療した場所に色素沈着が起こるためです。患者さんから見ると「一度取れたシミがまた戻った」ように見えますが、実際には元の老人性色素斑とは異なる色素沈着であることがあります。
PIHでは、元の病変より少し広く、境界がぼんやりした茶色として見えることがあります。一方、残存した老人性色素斑や再色素化(再発)では、元の病変に近い形や位置で色素が確認されることがあります。
残存は「元のシミの形」が手がかり
老人性色素斑が完全に反応しなかった場合には、一部が残ることがあります。
特に、
・病変が大きい
・非常に薄い
・色素が不均一
・照射反応にむらがある
場合には、残存することがあります。
残存では、治療前の老人性色素斑と似た輪郭や分布で色が残ることが一つの手がかりです。
ただし、残存した病変の周囲にPIHが重なっていることもあるため、見た目だけでは判断が難しいケースがあります。
一度薄くなった後に戻ったら再色素化(再発)を考える
治療後に一度かなり薄くなり、その状態が続いた後で同じ部位に再び色素が目立ってきた場合には、再色素化(再発)を考えます。老人性色素斑は慢性的な紫外線曝露によって形成されるため、レーザーで目に見える色素を除去しても、長年の光老化によって変化した皮膚環境そのものが完全に元へ戻るわけではありません。そのため長期的には、同じ部位で再び色素が目立つことがあります。重要なのは、治療後数週間〜数か月で茶色くなったものをすべて再発と判断しないことです。
PIH・残存・再色素化(再発)の違い
おおまかには次のように整理できます。

これはあくまで目安であり、PIHと残存が同時に存在するなど、複数の状態が重なっている場合もあります。
治療前後の写真比較が非常に重要
PIH、残存、再色素化(再発)を見分けるうえで、治療前後の写真比較は非常に重要です。
治療前の、
・シミの大きさ
・形
・境界
・濃さ
・位置
を記録しておくことで、治療後に見えている色素が元の病変と同じなのか、それとも治療後に生じたPIHなのかを判断しやすくなります。例えば、治療前とほぼ同じ輪郭で茶色が確認されれば残存や再色素化(再発)を考えます。一方、照射範囲にぼんやりと色素が広がっている場合にはPIHを考えます。老人性色素斑治療では、治療前の状態をきちんと記録しておくこと自体が治療後の評価に重要です。
肌診断器はPIHと再色素化(再発)の鑑別にも有用
必要に応じて肌診断機器のUV画像を併用することも有用です。
肉眼や通常写真だけでは分かりにくい色素分布を確認できるため、元の病変がどこにあったのか、治療後の色素がどのように分布しているのかを比較する際の補助になります。
PIHでは照射範囲に色素沈着が広がって見えることがあり、再色素化(再発)では元の老人性色素斑に近い位置や形で色素が確認されることがあります。
肌診断器だけでPIH・残存・再色素化(再発)を確定するものではありませんが、診察、通常写真、治療後の経過と合わせることで、鑑別しやすくなる場合があります。
他院でシミ取りをした後の色素も診断できます
他院で老人性色素斑のレーザー治療を受けた後に、「これはPIHなのか、シミが再発したのか分からない」という状態で受診される方もいます。
治療前の写真や使用したレーザー、照射条件が分からない場合には判断が難しいこともありますが、現在の色素分布やこれまでの経過、必要に応じた肌診断機器の画像などから、PIHなのか再色素化(再発)なのかを評価します。
当院では、今後当院での治療をご希望の方に対して、現在の状態を診断したうえで治療方針を組み立てています。 PIHであればPIHとして治療し、再色素化(再発)であれば老人性色素斑として再治療を検討します。
濃くなったからすぐ再照射、は避ける
レーザー後に茶色く見えると、「取り残したからもう一度ピコスポットを当てたい」と考えるかもしれません。しかし、それがPIHであれば、さらに強いスポット照射を加えることで新たな炎症を起こし、色素沈着を長引かせる可能性があります。
そのため、まずPIHなのか、残存なのか、再色素化(再発)なのかを見分けることが重要です。当院では治療後の状態によっては6〜9か月程度の経過も確認しながら、再照射を判断します。
PIHならピコスポットではなくPIHとして治療する

PIHは老人性色素斑とは異なるため、当院ではPIHそのものにピコスポットを基本的に使用しません。
自然に薄くなるのを待つこともできますが、早めに改善したい場合には、
・OPトーニング
・ピコトーニング
・C-OPERA
・トラネキサム酸
・システアミン
・美白外用
などを肌状態に応じて組み合わせます。
再色素化(再発)なら老人性色素斑として再治療を検討する
PIHではなく、老人性色素斑そのものが再び目立っていると判断した場合には、再治療を検討します。
濃く境界が明瞭であればピコスポット、薄くなっている場合にはルビーフラクショナルなど、現在の色素の状態に合わせて治療方法を選択します。
一度目とまったく同じ治療を繰り返すとは限らず、その時点の濃さや大きさに合わせて治療を再設計することが重要です。
紫外線と炎症がPIHに関係する

PIHをできるだけ抑えるためには、治療後の炎症を長引かせないことが重要です。
レーザー後の老人性色素斑を対象とした研究では、治療後の紅斑が強いことや、日中の屋外活動が多いことがPIH発症のリスク因子として報告されています。
そのため、
・日焼け止め
・帽子
・日傘
・強い日差しを長時間避ける
・摩擦を避ける
・痂皮を無理に剥がさない
といったケアが重要です。
長期間経ってから不自然に濃くなる場合は診断を見直す
多くはPIH、残存、再色素化(再発)ですが、すべてを良性の老人性色素斑と決めつけるべきではありません。過去にはsolar lentigoと考えられてレーザー治療された病変が、その後再び色素を増し、lentigo malignaと診断された症例も報告されています。
特に、
・形が変わってきた
・急に大きくなった
・色が不均一
・黒色が強くなった
・境界が不規則
・出血する
などの場合には、再照射する前に診断を見直す必要があります。
当院では、少しでも悪性を疑う所見がある場合には美容レーザー治療を行わず、皮膚科へ紹介します。
Q&A
まとめ|レーザー後に濃くなっても、すぐ「再発」と判断しない
老人性色素斑のレーザー後に茶色く見える場合には、
・治療直後の一時的な濃色化や痂皮
・PIH
・病変の残存
・再色素化(再発)
を分けて考える必要があります。
特に数週間〜1、2か月後に濃くなった場合にはPIHの可能性があり、すぐにピコスポットを追加するべきとは限りません。
判断するうえで非常に重要なのが、いつ濃くなったのか、どのような形で色が出ているのか、治療前後の写真でどう変化しているのかです。必要に応じて肌診断機器のUV画像を併用することで、PIHと再色素化(再発)の色素分布を比較しやすくなることがあります。
PIHであればPIHとして治療し、再色素化(再発)であれば老人性色素斑として再治療を検討します。
老人性色素斑治療は、レーザーを照射して終わりではありません。治療後に濃くなった原因を見極め、その状態に合った次の治療を選ぶことが、不要な再照射を避け、きれいに仕上げるために重要です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Kang HJ, et al. Postinflammatory hyperpigmentation associated with treatment of solar lentigines using a Q-switched 532-nm Nd laser: a multicenter survey. J Cosmet Laser Ther. 2017.
- Kang DH, et al. Postoperative risk assessment of post-inflammatory hyperpigmentation and the efficacy of delayed prevention following 532 nm Q-switched Nd laser treatment of solar lentigines. J Dermatolog Treat. 2024.
- Sadighha A, et al. Efficacy and adverse effects of Q-switched ruby laser on solar lentigines: a prospective study of 91 patients. Dermatol Surg. 2008.
- Mardani G, et al. Treatment of Solar Lentigines: A Systematic Review of Clinical Trials. J Cosmet Dermatol. 2025.
- Grevelink JM, et al. Failure of Q-switched ruby laser to eradicate atypical-appearing solar lentigo: report of two cases. Arch Dermatol. 1998.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
わからないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。医師の視点から、科学的根拠に基づいて丁寧にお応えします。








