脂漏性角化症とは?盛り上がったシミの原因・見分け方・治療法を解説
- 2026.9.17

「昔からあったシミが盛り上がってきた」「茶色いイボのようなものが増えてきた」という場合、脂漏性角化症の可能性があります。脂漏性角化症は良性の表皮性腫瘍で、一般には「老人性イボ」と呼ばれることもあります。顔、こめかみ、額、首、胸、背中などにでき、年齢とともに増える傾向があります。治療ではCO2レーザーで病変を蒸散する方法が一般的ですが、脂漏性角化症だからすべてCO2レーザーで削る必要があるわけではありません。当院では病変の色・厚み・隆起・表面性状などを確認し、ピコスポットで反応すると判断した脂漏性角化症は積極的にピコスポットで治療しています。
目次
脂漏性角化症とは?
脂漏性角化症は、表皮の角化細胞が増殖してできる良性腫瘍です。大きさは数mm程度から数cmまで、色も肌色、黄褐色、茶色、黒色までさまざまです。初期には平坦なシミのように見えることがありますが、時間とともに厚みが出て、表面がざらざらしたり、皮膚の上に貼り付いたように見えたりすることがあります。英語ではSeborrheic Keratosisと呼ばれますが、「脂漏性」という名称でも皮脂や脂腺が直接の原因という意味ではありません。
脂漏性角化症はどこにできる?
顔、頭部、首、胸、背中などさまざまな部位にできます。美容皮膚科では、頬やこめかみにある「盛り上がったシミ」、首に増えてきた茶色いイボなどを相談されることが多くあります。顔では最初は普通のシミに見えていたものが、徐々にざらついたり厚みが出たりして脂漏性角化症と分かるケースもあります。
脂漏性角化症の原因は?
原因は一つではなく、加齢、遺伝的素因、紫外線など複数の要因が関係すると考えられています。分子レベルではFGFR3、PIK3CA、RAS、AKT1、EGFRなど、細胞増殖に関係する遺伝子の体細胞変異が報告されています。単純に「年齢で皮膚が厚くなった」というだけではなく、角化細胞の増殖に関わる変化が背景にあります。
紫外線も関係する?
顔や頭頸部など紫外線が当たりやすい場所にも多く、老人性色素斑と共通する分子変化が報告されていることから、紫外線が一部の病変形成に関係している可能性があります。一方、背中や体幹など日光があまり当たらない場所にもできるため、紫外線だけが原因ではありません。
シミが脂漏性角化症になることはある?
「シミを放置するとイボになるのですか?」という質問はよくあります。すべての老人性色素斑が時間とともに脂漏性角化症になる、と考えるのは正確ではありません。両者は別の病変として扱われます。ただし、平坦な脂漏性角化症は老人性色素斑と非常によく似ており、臨床的・病理学的に重なる部分があります。solar lentigo(日光黒子)と脂漏性角化症の連続性を示唆する報告や、両者に共通する遺伝子変異も報告されています。そのため「昔は平らなシミだったのに徐々に盛り上がってきた」という経過は実際にありますが、すべてを単純に「シミがイボに変化した」と判断せず、現在の病変を診察することが重要です
老人性色素斑との違い
老人性色素斑は、長年の紫外線曝露などによって生じることが多い平坦な色素斑です。淡褐色〜濃褐色で、境界が比較的はっきりしています。一方、脂漏性角化症では角化細胞が増殖するため、厚み、ざらつき、凹凸などが出ることがあります。ただし初期の脂漏性角化症ではほとんど隆起がなく、見た目だけでは老人性色素斑との区別が難しい場合があります。
脂漏性角化症の見た目の特徴
典型的には、茶色〜黒色、境界が比較的明瞭、表面がざらざらしている、徐々に隆起する、皮膚の上に貼り付いたように見える、といった特徴があります。ダーモスコピーではmilia-like cysts、comedo-like openings、fissures and ridgesなど脂漏性角化症を示唆する所見がみられることがあります。
「盛り上がったシミ=脂漏性角化症」とは限らない
脂漏性角化症は良性ですが、色素性母斑、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫などが似て見えることがあります。急に大きくなった、形や色が不規則、出血する、潰瘍になっている、短期間で大きく変化した場合には、単純に美容レーザーで除去する前に診断を優先します。必要に応じてダーモスコピーや病理検査を検討します。
脂漏性角化症は放置しても大丈夫?
典型的な脂漏性角化症は良性なので、必ず治療しなければならない病変ではありません。見た目が気になる、大きくなってきた、髭剃りや衣類に引っかかる、かゆみがあるなどの場合には除去を検討します。ただし、自己判断で脂漏性角化症と決めるのではなく、他の皮膚腫瘍との鑑別が重要です。
脂漏性角化症の治療方法
一般的には凍結療法、掻爬、電気焼灼、CO2レーザーなどの蒸散系レーザー、外科的切除などが用いられます。美容目的で顔の脂漏性角化症を治療する場合は、病変の厚み、大きさ、色、場所、数、治療後の赤みやPIHまで考えて方法を選びます。当院では主にCO2レーザーとピコスポットを使い分けています。
CO2レーザー|脂漏性角化症治療の基本

CO2レーザーは10,600nmのレーザーで、水分に吸収され、病変組織を蒸散しながら削ることができます。特に角化が非常に強い、隆起が大きい、組織そのものを物理的に除去する必要がある脂漏性角化症ではCO2レーザーが適しています。治療後は一時的にびらん、赤み、かさぶたなどが生じ、その後PIHが出ることがあります。
脂漏性角化症でもピコスポットで取れることがある
脂漏性角化症だからといって、すべてCO2レーザーで削らなければならないわけではありません。平坦な病変だけでなく、ある程度厚みや隆起がある脂漏性角化症でも、色素成分がしっかりしている場合には、ピコスポットの出力を病変に合わせて調整することで除去できることがあります。
実際、まゆりなclinic名古屋栄でも多くの脂漏性角化症をピコスポットで治療しています。当院では「薄いからピコ、厚いからCO2」と厚みだけで単純に分けず、病変の色、厚み、隆起、表面性状、部位を確認し、ピコスポットで十分な反応が期待できるかを判断します。
厚みがある病変でもピコスポットでしっかり反応して除去できるケースがあります。一方、角化が非常に強い、隆起が大きい、ピコスポットでは十分な除去が難しいと判断した場合にはCO2レーザーで病変そのものを蒸散します。
当院では「ピコスポットで取れるならピコ」を検討
CO2レーザーは脂漏性角化症に非常に有効ですが、病変組織を蒸散するため治療後に創傷ができます。一方、ピコスポットで十分に除去できる病変であれば、皮膚を大きく蒸散せずに治療できます。
そのため当院では、ピコスポットで十分に取れると判断した脂漏性角化症では、まずピコスポットを検討することがあります。特に顔では治療後の赤み、傷、PIHなども考慮して治療方法を選びます。
ただし、「ピコスポットなら必ずPIHが起こらない」「CO2レーザーより常に優れている」という意味ではありません。ピコスポットとCO2レーザーを脂漏性角化症で直接比較した質の高いデータはまだ限られているため、病変ごとに適応を判断します。
CO2とピコは厚みだけでは決めない
当院では治療法を単純に厚みだけで決めません。
👉ピコスポットを検討するケース
・色素成分がしっかりしている
・ピコスポットで十分な反応が期待できる
・ある程度の厚みがあっても照射条件を調整して除去できると判断する
・できるだけ侵襲を抑えたい
👉CO2レーザーを選ぶケース
・角化が非常に強い
・隆起が大きい
・色素レーザーだけでは十分な除去が難しい
・病変組織を直接蒸散する必要がある
というように使い分けます。
治療後のPIHも考えて治療を選ぶ
日本人を含むアジア人では、レーザー治療後にPIH(炎症後色素沈着)が起こることがあります。CO2レーザーでは組織を蒸散するため、治療後の創傷管理も重要です。ピコスポットで治療した場合でもPIHの可能性はありますが、同程度に病変を除去できるのであれば、より侵襲を抑えた方法を選択できることはメリットの一つです。
PIHをできるだけ抑えるには、治療方法だけでなく治療後の紫外線対策、保湿、摩擦回避などのケアも重要です。
顔にたくさんある脂漏性角化症も治療できる?
治療できます。ただし、すべて同じ方法で治療するとは限りません。同じ顔の中でもピコスポットで反応する病変とCO2レーザーが適する病変を分け、組み合わせて治療することがあります。数、大きさ、厚み、場所、ダウンタイムなどを考え、一度に治療するか、複数回に分けるかを決めます。
脂漏性角化症は顔だけでなく体にもできる

脂漏性角化症は顔だけの病変ではありません。胸、背中、腹部、首、頭皮、鼠径部など、手のひら・足の裏や粘膜を除くさまざまな部位にできます。特に体幹では多数みられることもあり、背中に茶色〜黒色の盛り上がった病変が何十個もある方も珍しくありません。
体の脂漏性角化症も基本的には良性ですが、色、大きさ、厚みはさまざまです。衣類に引っかかる、かゆみがある、出血するなどの場合には治療を検討します。また、多数ある場合でも、すべてが脂漏性角化症とは限らないため、形や色が他と異なる病変は診察で確認することが重要です。
治療では顔と同様に、厚み、隆起、色素成分、数、部位などを確認し、CO2レーザーなどによる蒸散治療や、病変によってはピコスポットを検討します。
急に脂漏性角化症が増えた場合|Leser–Trélat徴候とは?
脂漏性角化症は年齢とともに少しずつ増えることが一般的です。一方、短期間に多数の脂漏性角化症が急に出現したり、既存の病変が急速に増大したりする場合には、Leser–Trélat(レーザー・トレラ)徴候と呼ばれる状態が知られています。
Leser–Trélat徴候は、急激に多発する脂漏性角化症と内臓悪性腫瘍との関連が報告されたまれな皮膚所見です。特に消化管腺癌などとの関連が知られていますが、脂漏性角化症も悪性腫瘍も高齢者に多いため、本当に独立した腫瘍随伴症候群なのかについては現在も議論があります。
重要なのは、「脂漏性角化症がたくさんある=がん」という意味ではないことです。通常、長年かけて少しずつ増えている脂漏性角化症だけで悪性腫瘍を疑う必要はありません。しかし、短期間に急激に数が増えた、急速に大きくなった、強いかゆみを伴うなど通常とは異なる変化がある場合には、背景に別の疾患がないか確認することがあります。
脂漏性角化症を単なる美容上の「イボ」として見るだけでなく、増え方や経過を見ることも重要です。ちなみに院長である私は、内科医時代に何度もこのLeser–Trélat徴候から胃癌や大腸癌を早期発見しています。
脂漏性角化症は再発する?
病変を十分に除去できれば、その病変自体はなくなります。ただし、脂漏性角化症ができやすい体質や加齢に伴う変化そのものがなくなるわけではないため、将来的に別の場所へ新しい脂漏性角化症が出ることがあります。レーザー治療のレビューでは比較的低い再発率が報告されていますが、治療法や観察期間が異なるため一律には示せません。
よくある質問(Q&A)
まとめ|脂漏性角化症は「全部CO2」ではなく病変ごとに治療を選ぶ
脂漏性角化症は、年齢とともに増えやすい良性の表皮性腫瘍で、「盛り上がったシミ」「老人性イボ」として相談されることが多い病変です。初期には平坦なシミのように見えることもあり、老人性色素斑や他の皮膚腫瘍との鑑別が重要です。
脂漏性角化症はCO2レーザーで蒸散する治療が一般的ですが、当院では脂漏性角化症だから一律にCO2レーザーを使用するわけではありません。平坦なものだけでなく、ある程度厚みのある病変でも、色素成分がしっかりしていてピコスポットで十分に反応すると判断した場合には、出力を調整してピコスポットで治療しています。実際に当院でも多くの脂漏性角化症をピコスポットで除去しています。一方、角化が非常に強い、隆起が大きい、色素レーザーだけでは十分に除去できない病変にはCO2レーザーを使用します。病変の厚みだけで決めるのではなく、色、隆起、表面性状、部位、数、PIHリスクまで確認し、できるだけ適した方法を選択することが重要です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄院長 加藤 成貴
【参考文献】
- DermNet. Seborrhoeic keratoses.
- DermNet. Dermoscopy of seborrhoeic keratosis.
- Advances in Laser Treatments for Seborrheic Keratosis: A Scoping Review of Efficacy, Safety, and Patient Outcomes. Dermatol Surg. 2025.
- Hafner C, et al. FGFR3 mutations in benign skin tumors: evidence for a role of FGFR3 in seborrheic keratoses and solar lentigines.
- Jackson JM, et al. Current understanding of seborrheic keratosis: prevalence, etiology, clinical presentation, diagnosis, and management.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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