ニキビ跡の赤みはなぜ残る?毛細血管・炎症・PIEの仕組みを解説|名古屋
- 2026.9.23
「ニキビ自体は治っているのに、なぜ赤みだけ残るのでしょうか?」という質問があります。
ニキビ跡の赤みは、主にPIE(炎症後紅斑)やPAE(ニキビ後紅斑)と呼ばれる状態です。単純に皮膚へ赤い色が残っているのではなく、ニキビの炎症後に毛細血管の拡張や微小血管の変化が残り、血液中のヘモグロビンが透けて見えることで赤く見えています。文献では、炎症性サイトカインの放出、乳頭真皮の微小血管拡張、表皮菲薄化などがPIE・PAEの機序として挙げられています。
目次
ニキビの炎症では何が起きている?

炎症性ニキビでは、毛包周囲に免疫細胞が集まり、さまざまな炎症性サイトカインや化学伝達物質が放出されます。これによって周囲の血管が拡張し、局所の血流が増加します。
本来であれば、ニキビの炎症が治まるにつれて血管反応も落ち着いていきます。しかし炎症が強かった場合や長期間続いた場合には、ニキビそのものが治った後も微小血管の拡張や血管性変化が残ることがあります。この状態が、赤いニキビ跡として見える大きな理由です。PAEは、ニキビ治療後にも残る紅斑や毛細血管拡張として定義されています。
なぜ血管が拡張すると赤く見える?
皮膚の毛細血管には赤血球が流れており、その中にはヘモグロビンがあります。
炎症によって毛細血管が拡張したり血流が増えたりすると、皮膚表面から見えるヘモグロビン量が増え、赤〜赤紫色に見えやすくなります。
特に皮膚表面に近い乳頭真皮の微小血管が拡張すると、赤みとして視認されやすくなります。そのため、PIEはメラニンを標的とするシミ治療とは違い、血管・ヘモグロビンを意識した治療が重要になります。
表皮が薄くなることも赤みが目立つ理由になる
PAEの病態については、血管拡張だけでなく表皮の菲薄化も関与すると報告されています。
炎症によって表皮や真皮がダメージを受けると、皮膚のバリアや構造が一時的に乱れます。表皮が薄い状態では、皮膚内部の血管が外から透けて見えやすくなるため、同程度の血管拡張でも赤みが強く見える可能性があります。
つまり、赤みの強さは「血管がどれくらい拡張しているか」だけでなく、「その上の皮膚がどのような状態か」によっても変わります。
PIEは炎症が終わった後の血管性変化
PIEという名前からも分かるように、これは炎症後に残る紅斑です。
活動性ニキビでは現在進行形の炎症によって赤くなっています。一方、PIEではニキビの隆起や膿はなくなっているにもかかわらず、その場所に赤みだけが残ります。
この違いは重要です。
活動性ニキビ
→ 現在起きている炎症による赤み
PIE
→ 炎症が落ち着いた後に残る血管性の赤み
と考えると分かりやすくなります。
ただし、実際には活動性ニキビとPIEが同じ顔の中に混在していることも多くあります。
PIEとPAEはどう違う?
PIEはPost-Inflammatory Erythemaの略で、炎症後紅斑を意味します。ニキビに限らず、さまざまな炎症後の赤みを含む言葉です。
PAEはPost-Acne Erythemaの略で、ニキビ後に残る赤みに限定した表現です。
ニキビ跡について説明する場合にはどちらの用語も使われますが、患者さん向けにはPIEの方が比較的よく知られています。
このコラム集では基本的に「PIE(炎症後紅斑)」という表記を使用し、学術文献を紹介するときにはPAEという表記も併記します。
PIEとPIHは病態が違う
赤いニキビ跡と茶色いニキビ跡は、同じ炎症後に起こっていても原因が違います。
PIEは主に血管性変化です。一方、PIHは炎症性メディエーターによってメラノサイトが刺激され、メラニン産生が増加することで生じます。炎症後にPIEとPIHの両方が生じることもあります。

治療標的が違うため、赤みと茶色を同じ方法で治療するわけではありません。
関連コラムはこちら⇒赤いニキビ跡と茶色いニキビ跡は何が違う?PIEとPIHの見分け方|名古屋
押すと赤みが薄くなるのはなぜ?
PIEでは、軽く圧迫すると一時的に赤みが薄くなることがあります。
これは圧迫によってその部分の血液が一時的に押し出され、ヘモグロビン由来の赤色が減るためです。この現象はblanchingと呼ばれます。
一方、PIHは皮膚内のメラニンが原因なので、押しても基本的には茶色い色は消えません。
ただし、赤みとPIHが混在している場合などは判断が難しいため、圧迫だけで確定診断することはできません。
なぜ赤みが何か月も続く人がいる?
炎症後に拡張した血管は、すぐに元の状態へ戻るとは限りません。炎症が強かった場合には、微小血管の変化が長期間残ることがあります。
さらに、新しいニキビが繰り返しできていると、新しい炎症性サイトカインの放出と血管拡張が追加されます。そのため古い赤みが改善する前に新しい赤みが重なり、顔全体の赤みがいつまでも続いているように見えることがあります。
PAEは自然改善することもありますが、数か月以上持続する症例もあり、治療対象となっています。
関連コラムはこちら⇒ニキビ跡の赤みはいつ消える?自然に治る期間と長引く原因|名古屋
炎症が強いほど赤みだけでなくクレーターも残りやすい
ニキビ炎症が表面的であれば、赤みだけで治ることもあります。
一方、炎症が真皮深部まで及ぶとコラーゲンや細胞外マトリックスが破壊され、萎縮性ニキビ跡へ進む可能性があります。ニキビ瘢痕の形成には、炎症の深さや強さ、個人の創傷治癒反応が関係します。
そのため一つのニキビ跡に、
赤み
+
クレーター
が同時に存在することも珍しくありません。
この場合、赤みに対する治療とクレーターに対する治療は分けて考えます。
赤みがあるからクレーターが深く見えることもある

赤みと凹凸が重なると、炎症後の色調変化や影によってニキビ跡が実際以上に目立って見えることがあります。そのため、赤みを治療すると、クレーターそのものは残っていても肌全体の印象がかなり改善することがあります。
逆に赤みが改善したことで、それまで目立たなかった細かな凹凸が見えやすくなることもあります。当院では赤みとクレーターを一つの病態として扱わず、それぞれ評価して治療します。
関連コラムはこちら⇒赤みとクレーターが両方あるニキビ跡はどう治療する?治療の順番を解説|名古屋
PIEではなぜIPLやレーザーを使う?
PIEでは血管内のヘモグロビンが赤みの一因になっているため、血管やヘモグロビンを標的にできる光・レーザー治療が使用されます。
PAEのsystematic reviewでは、PDL、Ndレーザー、IPLなどの光・レーザー治療が最も多く研究されています。現時点では一つの絶対的な標準治療が確立しているわけではありませんが、複数の治療で赤み改善が報告されています。
当院では赤みの状態に応じてライムライト、ジェネシスなどを使用します。
ライムライトは広い赤みや色むらがある場合に使いやすい
ライムライトはIPL治療です。IPLは複数の波長を含む光を使用し、ヘモグロビンだけでなくメラニンにも作用します。そのため、ニキビ跡の赤みに加えてPIH、くすみ、色むらなどが混在している場合に使いやすい治療です。
赤みだけを一点ずつ治療するのではなく、顔全体に広がる色調変化を治療したい場合にも使用します。
関連コラムはこちら⇒ニキビ跡の赤みにIPLは効く?ライムライトの効果と向いている肌を解説|名古屋
ジェネシスは赤みと肌質を一緒に治療したい場合に使う

ジェネシスは1064nm Ndレーザーを使用する治療で、赤みだけでなく毛穴や肌質などを同時に整えたい場合に使用します。PAE治療に関するsystematic reviewでもNdレーザーは比較的多く研究されている治療の一つです。ライムライトとジェネシスはどちらが上という関係ではなく、赤みの状態や他に治療したい症状によって使い分けます
C-OPERAは血管を直接治療する機械ではない

C-OPERAは、IPLやレーザーのようにヘモグロビンを標的にして血管を直接治療する機器ではありません。当院では保湿、炎症ケア、敏感になった肌のコンディション調整などを目的とした補助治療として使用しています。
PIEでは血管性変化だけでなく、炎症を繰り返さない肌環境を作ることも重要です。そのため、ライムライトやジェネシスとC-OPERAを組み合わせることがあります。
赤み治療で最初に確認すること
当院では、赤いニキビ跡を見たときに「すぐIPL」という考え方はしていません。
まず、
・まだ活動性ニキビがあるか
・PIEなのか
・PIHが混在しているか
・クレーターがあるか
・摩擦や刺激が続いていないか
を確認します。
新しい炎症性ニキビが多い場合には、赤みだけを治療しても新しいPIEが増えてしまいます。
その場合には、まずニキビそのものをコントロールすることが重要です。
Q&A
Q1. ニキビが治ったのに赤いのはなぜですか?
炎症後に毛細血管の拡張や微小血管変化が残っているためです。血管内のヘモグロビンが皮膚表面から透けて赤く見えます。
Q2. PIEとPAEは同じですか?
完全に同じ言葉ではありません。PIEは炎症後紅斑全般、PAEはニキビ後の紅斑を指します。ニキビ跡の赤みでは近い意味で使われています。
Q3. 赤みは血が残っているのですか?
血液が皮膚内に溜まっているというより、炎症後に拡張した毛細血管や血管性変化によってヘモグロビンが見えやすくなっています。
Q4. 赤みと茶色いニキビ跡は違いますか?
違います。赤みは主に血管性のPIE、茶色い跡はメラニンによるPIHです。両方が混在することもあります。
Q5. 押すと赤みが消えるのはPIEですか?
血管性の赤みでは圧迫すると一時的に薄くなることがあります。ただし、それだけでPIEと確定することはできません。
Q6. PIEは放置しても治りますか?
自然に改善することもありますが、数か月以上持続する症例もあります。長期間残る場合には治療を検討します。
Q7. 赤みにはどんな治療をしますか?
当院ではライムライト、ジェネシスなどを使用し、C-OPERAを補助的に組み合わせることがあります。
Q8. 赤みとクレーターが両方あっても治療できますか?
可能です。赤みとクレーターは治療標的が違うため、それぞれに適した治療を組み合わせます。
まとめ|ニキビ跡の赤みは炎症後に残った血管性変化
ニキビ跡の赤みは、主にPIE・PAEと呼ばれる炎症後の血管性変化です。ニキビの炎症によって炎症性サイトカインが放出され、乳頭真皮の毛細血管が拡張します。炎症が治まった後もこの血管性変化が残ると、ニキビ自体はなくなっていても赤みだけが続きます。表皮の菲薄化によって血管が透けて見えやすくなることも機序の一つとして報告されています。
PIEは、メラニンが主体のPIHや、真皮構造が変化したクレーターとは異なる病態です。そのため、赤み、茶色い跡、凹凸を区別して治療する必要があります。
当院では、広い赤みや色むらにはライムライト、赤みと肌質を一緒に治療したい場合にはジェネシス、炎症後の敏感肌や保湿ケアにはC-OPERAなどを使用します。ただし、新しいニキビが続いている場合には活動性ニキビの治療も重要です。赤みニキビ跡治療では、単に「赤いからレーザーを当てる」のではなく、なぜ赤みが残っているのかを理解し、血管性変化、炎症、PIH、クレーターを分けて治療することが重要だと当院では考えています。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄
院長 加藤 成貴
【参考文献】
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