唇の黒い点は大丈夫?悪性黒色腫を疑うサインと皮膚科受診が必要なケース|名古屋
- 2026.9.20
唇に黒い点を見つけると、「メラノーマではないか」と不安になる方もいると思います。
実際には、唇の黒い点の多くは口唇メラノーシス、色素性母斑(ほくろ)、PIH(炎症後色素沈着)などの良性病変です。一方で、頻度は高くありませんが悪性黒色腫(melanoma)などとの鑑別が必要になる病変もあります。
大切なのは、黒いという理由だけで怖がることでも、反対に「ただのシミだろう」と決めつけてレーザーを当てることでもありません。色、形、大きさ、隆起、出血の有無、そして時間とともにどう変化しているかを確認することが重要です。口腔・口唇の色素性病変は臨床像が重なるため、診断が不確実な場合には病理組織検査が必要になることがあります。
目次
唇の黒い点の多くは良性

口唇にみられる黒〜茶色の病変には、さまざまなものがあります。代表的なのは口唇メラノーシスと色素性母斑です。
口腔の限局性色素性病変339例を調べた研究では、191例がmelanotic macule、112例がmelanocytic nevusで、melanomaは12例でした。最も多く病変がみられた部位は口唇の赤唇部でした。
つまり、唇に黒い点がある=悪性黒色腫というわけではありません。
一方で、見た目だけでは完全に区別できないケースがあるため、「良性らしい病変」と「精査した方がよい病変」を分けて考える必要があります。
口唇メラノーシスは典型的には安定した良性病変
口唇メラノーシスは、平坦で茶〜黒褐色、比較的境界が明瞭な良性色素斑です。特に下唇に多くみられます。古典的な研究では、口唇メラノーシスは良性の組織像を示し、長期追跡でも安定していることが報告されています。何年もほとんど大きさや色が変わっていない小さな平坦病変であれば、良性を考える材料になります。ただし、「昔からある」という情報だけで100%良性と確定するわけではありません。
唇の悪性黒色腫はまれだが、見逃したくない
口唇悪性黒色腫はまれな病変です。しかし、良性色素斑と似た外見から始まることがあり、早期には患者さん自身が「普通のシミ」「ほくろ」と考えている場合があります。
2026年に発表されたlip melanoma 139例のsystematic reviewでは、平均年齢は51.1歳、63.8%が下唇に発生していました。臨床的には色素性病変だけでなく、結節や潰瘍を伴う病変も報告され、約8%は色素をほとんど伴わないamelanotic melanomaでした。
ただし、これは症例報告・症例集積をまとめた研究であり、「この特徴があればメラノーマ」という意味ではありません。
注意したいのは「黒さ」より「変化」
美容診療で特に重要なのは、単に病変が黒いかどうかではなく、以前と比べて変化しているかです。
例えば、
・短期間で大きくなった
・以前より明らかに濃くなった
・茶色、黒、灰色、赤など複数の色が混ざってきた
・境界が不規則になった
・左右非対称になった
・平らだった病変が盛り上がってきた
・出血する
・潰瘍ができた
といった変化がある場合には、単純な口唇メラノーシスやほくろと決めつけず、精査を考えます。特に「以前とは違う」という本人の感覚は重要な情報です。
ABCDEだけで判断しない
皮膚のメラノーマでは、ABCDEとして、
A:Asymmetry(左右非対称)
B:Border irregularity(境界不整)
C:Color variation(色調不均一)
D:Diameter(大きさ)
E:Evolution(変化)
が知られています。
口唇でもこれらは参考になりますが、口唇・口腔粘膜の悪性黒色腫をABCDEだけで完全に判定することはできません。
口腔内のmelanomaは早期には色素斑として存在し、長期間気づかれないケースがある一方、結節、潰瘍、無色素性病変として現れることもあります。したがって、色や直径だけでなく、病変の経過や隆起、出血、潰瘍なども確認します。
「急にできた黒い点」は必ず悪性?
いいえ。新しくできた病変でも、口唇メラノーシスやほくろなどの良性病変はあります。
一方で、以前なかった色素斑が出現し、その後短期間で大きさ・色・形が変化している場合には、精査する理由が強くなります。そのため、「新しくできた=悪性」と考えるのではなく、出現時期とその後の変化をセットで確認することが重要です。
青紫色なら悪性黒色腫ではなく静脈湖のこともある
唇の暗い点には、メラニンによる色素性病変だけでなく、静脈湖(venous lake)などの血管性病変もあります。静脈湖は青〜紫色の小さな隆起としてみられる良性血管性病変です。
そのため、黒っぽく見える病変をすべて口唇メラノーシス、ほくろ、melanomaの3つだけで考えるのも適切ではありません。口腔の色素性病変には、メラニン由来以外の血液・血管性病変なども鑑別に含まれます。
単発か、多発かも重要
1個だけの黒い点と、唇や口腔内に多数の色素斑がある場合では考える病気が異なります。
多発する場合には、Laugier-Hunziker症候群、Peutz-Jeghers症候群、Addison病、薬剤性の色素沈着なども鑑別に挙がります。
したがって、唇だけを見るのではなく、必要に応じて口腔内、手指、爪、全身の色素変化なども確認します。
怪しい病変は美容レーザーを先にしない
ここが最も重要です。
色素性病変へピコレーザーやCO2レーザーを照射すると、病変組織が変化・消失し、その後の病理診断を難しくする可能性があります。そのため当院では、少しでも悪性を疑う病変には美容レーザーを先に行いません。口腔色素性病変についてのレビューでも、臨床診断が不確実な色素病変では生検が重要とされています。必要な場合には、皮膚科などで病理組織検査を含めた精査を優先します。
「病理検査をしてからレーザー」というケースもある
すべての口唇メラノーシスやほくろで生検が必要という意味ではありません。
典型的な良性病変では、臨床所見や経過から診断できることもあります。
一方、
・診断に確信が持てない
・最近変化している
・色や形が典型的でない
・悪性を完全に除外しにくい
といった場合には、病理診断を優先します。
当院でも、病理で良性を確認してから口唇メラノーシスをピコスポットで治療した症例があります。
つまり、美容的に取りたいという希望より、安全にレーザーできる病変であることの確認が先です。
良性と判断できればピコスポットなどを検討できる

良性の口唇メラノーシスや色素性母斑であれば、美容治療を検討できます。
当院では、
・口唇メラノーシス
・良性と判断できる色素成分の強い色素性母斑
では、基本的にまずピコスポットを検討します。
一方、深さがある、ピコスポットで取り切れない、再発を繰り返す色素性母斑ではCO2レーザーを検討します。
受診をおすすめしたい変化を整理すると
| 状態 | 考え方 |
| 何年もほぼ変わらない小さな平坦病変 | 良性病変を考えやすい |
| 新しくできたが変化がない | 良性も多いが診察で確認 |
| 短期間で大きくなった | 精査を優先 |
| 色がまだら・多色性 | 精査を優先 |
| 境界が不規則 | 精査を優先 |
| 隆起が急に出てきた | 精査を優先 |
| 出血・潰瘍がある | 精査を優先 |
| 診断がはっきりしない | 美容レーザー前に精査 |
この表だけで良性・悪性を自己診断することはできません。あくまで受診を検討する目安です。
Q&A
まとめ|唇の黒い点は「黒さ」より変化を見る
唇の黒い点の多くは、口唇メラノーシスや色素性母斑などの良性病変です。
そのため、黒い点を見つけたからといって必要以上に心配する必要はありません。
一方で、
・短期間で大きくなった
・色が不均一になった
・境界が不規則になった
・急に盛り上がった
・出血や潰瘍がある
といった変化がある場合には、美容レーザーを行う前に診断を優先します。
特に重要なのは、「黒いから悪性」「小さいから良性」と単純に判断しないことです。
口唇の色素性病変では、見た目だけでなく、いつからあるのか、以前と比べて変化しているのかを確認します。当院では少しでも悪性を疑う病変には美容レーザーを行わず、必要に応じて皮膚科などでの精査を優先します。良性と判断できれば、その後にピコスポットやCO2レーザーなど、その病変に適した美容治療を検討します。診断が先、レーザーはその後。
唇の色素性病変を安全に治療するうえで、この順番が最も重要です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Gondak RO, et al. Oral pigmented lesions: Clinicopathologic features and review of the literature. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2012.
- Pigmented Lesions of the Oral Mucosa: Clinical Presentation, Histology, and Recommendations for Management. 2025.
- Oral melanoma and other pigmentations: when to biopsy? J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017.
- Oral melanoma and other pigmented lesions of the oral cavity. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1991.
- Oral melanotic macule and primary oral malignant melanoma: epidemiology, location involved, and clinical implications. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2011.
- Focal melanocytic lesions of the oral mucosa: An epidemiological and morphological study. 2023.
- Almeida de Arruda JA, et al. Lip Melanoma: A Systematic Review of the Literature. Head Neck. 2026.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
わからないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。医師の視点から、科学的根拠に基づいて丁寧にお応えします。








