サブシジョン+ヒアルロン酸はなぜ行う?再癒着を防ぐ考え方と単独治療との違い|名古屋
- 2026.9.21
目次
サブシジョン+ヒアルロン酸はなぜ行う?再癒着を防ぐ考え方と単独治療との違い|名古屋
「サブシジョンの後になぜヒアルロン酸を入れるのですか?」と聞かれることがあります。
一般的なヒアルロン酸注入というと、凹んだ部分へ製剤を入れて物理的に持ち上げる治療を想像する方が多いと思います。しかし、当院でサブシジョン後に非架橋ヒアルロン酸を使用する目的は、それだけではありません。サブシジョンで深い線維性癒着を切離すると、皮膚と深部組織の間に新しいスペースができます。ところが、そのまま治癒すると再び組織同士が接着し、再癒着することがあります。当院では、この切離したスペースを一時的に保ち、再び強く癒着しにくい環境を作る目的で非架橋ヒアルロン酸を使用しています。
つまり、ヒアルロン酸で凹みを「膨らませる」というより、サブシジョンで作った状態を「維持しやすくする」という考え方です。
サブシジョン後にはなぜ再癒着が起こる?
サブシジョンでは、皮膚を下へ引っ張っている深い線維性癒着を切離します。
切離直後は、皮膚と深部組織の間に空間ができます。しかし、体にとってはこの部分も一種の創傷です。
そのため、
・出血
・炎症
・フィブリン形成
・新しい結合組織やコラーゲン形成
といった創傷治癒が起こります。
この過程で皮膚と深部組織が再び近づいた状態で治癒すると、新たな線維性結合が形成され、再び固定されることがあります。
これが再癒着です。
サブシジョン後の治療結果を維持するためには、単に線維を切るだけでなく、切離後に再び深部へ張り付かないようにすることも重要になります。
ヒアルロン酸は「スペーサー」の役割を持つ
サブシジョン後にヒアルロン酸を入れる理由の一つが、切離した皮膚と深部組織の間にスペースを保つことです。
サブシジョンとヒアルロン酸フィラーを組み合わせた研究では、サブシジョン単独よりも良好な改善が報告されています。2022年のランダム化比較試験では、サブシジョン単独で67.3%に臨床的改善がみられたのに対し、ヒアルロン酸併用では94.1%に改善がみられました。別のランダム化比較試験でも、サブシジョン単独より、架橋ヒアルロン酸またはCO2フラクショナルレーザーを併用した群で良好な改善が得られています。
サブシジョンの臨床試験をまとめたレビューでも、ヒアルロン酸などの人工材料を組み合わせることで、瘢痕が再び沈み込むことを防ぎ、治療結果を改善できる可能性が指摘されています。つまり、「切った後に何も入れない」場合と比較して、何らかの充填材によって切離した空間を保つという考え方には医学的な合理性があります。
当院では非架橋ヒアルロン酸を使用する
ここで注意したいのは、医学論文でサブシジョンと併用されているヒアルロン酸の多くは架橋ヒアルロン酸であるという点です。一方、当院ではサブシジョン後に非架橋ヒアルロン酸を使用しています。目的が異なるためです。当院では、輪郭形成のようにヒアルロン酸そのものの形やボリュームを長期間残すことを主目的としていません。
サブシジョンで切離した部分へ非架橋ヒアルロン酸を入れ、
・皮膚と深部組織を一時的に離す
・再癒着しにくい環境を作る
・皮膚が深部から浮いた状態を保ちやすくする
という目的で使用しています。
非架橋ヒアルロン酸をこの目的で使用する方法については、架橋ヒアルロン酸ほど直接的な比較研究が多いわけではありません。そのため「非架橋ヒアルロン酸なら必ず再癒着を防げる」と断定することはできませんが、当院ではサブシジョン後の治療設計としてこの方法を採用しています。
「凹みにヒアルロン酸を入れる治療」とは少し違う
通常のヒアルロン酸注入では、製剤そのもののボリュームによって凹みを持ち上げることがあります。一方、当院のサブシジョン後の非架橋ヒアルロン酸は、単純なボリューム補充だけを目的としているわけではありません。サブシジョンによって深い線維を解除した後、その空間を維持することが主な目的です。
つまり、
通常のヒアルロン酸注入
→ 製剤のボリュームで凹みを持ち上げる
サブシジョン+非架橋ヒアルロン酸
→ 深い癒着を解除した後、再び深部へ固定されにくい状態を作る
という違いがあります。

もちろん注入直後はヒアルロン酸自体のボリュームによって凹みが浅く見えることもありますが、それだけを最終的な治療効果として評価しているわけではありません。
なぜサブシジョンだけではなくヒアルロン酸を併用するのか
サブシジョンだけでも深い線維を解除することはできます。
しかし、切離した直後から創傷治癒が始まるため、再癒着する可能性があります。
特に1回目のサブシジョン後は、皮膚が深部から離れている期間をできるだけ保つことが重要だと当院では考えています。
そのため、
サブシジョンで深い線維を解除する
→非架橋ヒアルロン酸で切離した空間を保つ
→再癒着をできるだけ抑える
という流れで治療します。
これは、前回のコラムで解説した「サブシジョンを複数回行う理由」とも関係します。
1回目でしっかり線維を解除しても、治癒過程で一部が再癒着することがあります。非架橋ヒアルロン酸を使用しながら皮膚が深部から離れている状態を維持し、必要に応じて2回目、3回目のサブシジョンで再癒着した部分を再び解除することで、再固定されにくい状態を目指します。
関連コラムはこちら⇒サブシジョンは何回必要?1回で治る?効果が出る時期と再癒着を解説|名古屋
ヒアルロン酸を入れれば再癒着しない?
必ず防げるわけではありません。
ヒアルロン酸を使用しても、創傷治癒の過程では新しい線維性組織が形成されます。
また、
・癒着の範囲
・線維の強さ
・瘢痕の深さ
・治癒反応
などには個人差があります。
そのため、非架橋ヒアルロン酸を入れていても再癒着が起こる可能性があります。
当院でも、ヒアルロン酸を入れれば1回で終了という考え方ではなく、治療後の状態を確認しながら必要に応じて2回目、3回目のサブシジョンを行います。
サブシジョン+ヒアルロン酸はどのニキビ跡に向いている?
特に深い線維性癒着が関係するニキビ跡では重要です。
代表的なのはローリング型です。
ローリング型では皮膚を深部へ引っ張る線維の影響が大きいため、サブシジョンで癒着を解除し、その後の再癒着を抑えるという治療が理にかなっています。
一方、ボックスカー型でも深い線維が混在していることが多いため、当院ではサブシジョン+非架橋ヒアルロン酸を行っておくことが有用だと考えています。
深部の固定を解除しておくことで、その後のキュアジェット、ジュベルック、CO2フラクショナルレーザーなどの治療も生かしやすくなります。
アイスピック型でも深部や周囲に線維性癒着が存在すると考えられるため、状態に応じて同様にサブシジョンを行います。ただし、アイスピック型では細く深い瘢痕そのものに対する別の治療も必要です。

非架橋ヒアルロン酸はずっと残るわけではない
非架橋ヒアルロン酸は、架橋ヒアルロン酸のように長期間形を維持することを目的とした製剤ではありません。時間とともに分解・吸収されていきます。
では、吸収されれば意味がなくなるのでしょうか。当院ではそうは考えていません。
重要なのは、サブシジョン直後から創傷治癒が進む一定期間に、皮膚と深部組織がすぐに張り付かない状態を作ることです。ヒアルロン酸そのものが永久に残る必要はなく、その間に新しい結合組織やコラーゲン形成が進み、皮膚が深部へ再固定されにくい状態になっていくことを期待しています。ただし、この機序については非架橋ヒアルロン酸を用いた十分な比較試験があるわけではなく、当院の臨床的な考え方を含みます。
ヒアルロン酸とジュベルックは目的が違う
サブシジョン後に非架橋ヒアルロン酸を使用することと、ジュベルックを使用することは目的が異なります。

非架橋ヒアルロン酸は主にサブシジョン後のスペース維持、ジュベルックは失われた真皮を再構築する目的で使用します。ジュベルックはキュアジェットで導入する場合もありますが、ニキビ跡の状態に応じて注射で直接注入することもあります。
これらは競合する治療ではなく、治療する層と目的が異なります。
非架橋ヒアルロン酸だけでクレーターは治る?
非架橋ヒアルロン酸だけで深い線維性癒着を解除することはできません。
皮膚が深い線維によって下へ固定されている場合には、まずサブシジョンで物理的に癒着を解除する必要があります。その後、非架橋ヒアルロン酸で再癒着を抑え、キュアジェットやジュベルック、フラクショナル治療などを必要に応じて追加します。
順番としては、

という考え方です。
サブシジョン後のヒアルロン酸は何cc必要?
必要量は、治療範囲や癒着の広さによって異なります。
当院では、単に凹みの数を数えて注入量を決めるのではなく、サブシジョンでどの程度の範囲を切離したか、そのスペースをどの程度維持したいかを見ながら使用します。
広範囲のサブシジョンでは、局所的な1か所だけにヒアルロン酸を注入するのではなく、治療範囲全体を考えて注入します。
サブシジョン後のふくらみはずっと続く?
施術直後は、
・局所麻酔
・腫れ
・皮下出血
・ヒアルロン酸
の影響によって、治療部位が一時的に膨らんで見えることがあります。
この直後の状態が最終的な仕上がりではありません。
その後、腫れが落ち着き、非架橋ヒアルロン酸も徐々に吸収されながら組織修復が進みます。
治療効果は直後の膨らみではなく、一定期間経過した状態で評価します。
サブシジョン+ヒアルロン酸にリスクはある?
サブシジョン自体には、
・内出血
・腫れ
・痛み
・圧痛
・一時的なしこり
・感染
・色素変化
などの可能性があります。サブシジョンの合併症をまとめたレビューでも、これらの症状が報告されています。またヒアルロン酸注入にも、腫れ、内出血、感染などのリスクがあります。治療部位の解剖を理解したうえで適切な層へ注入することが重要です。
Q&A
Q1. サブシジョン後になぜヒアルロン酸を入れるのですか?
当院では、切離した皮膚と深部組織の間にスペースを作り、再癒着をできるだけ抑える目的で非架橋ヒアルロン酸を使用しています。
Q2. ヒアルロン酸でクレーターを膨らませているだけですか?
それだけではありません。当院では製剤のボリュームによる持ち上げより、サブシジョン後のスペースを保つという役割を重視しています。
Q3. なぜ非架橋ヒアルロン酸を使うのですか?
長期間形を作ることではなく、サブシジョン後の空間を一時的に保つことを主な目的としているためです。
Q4. ヒアルロン酸を入れれば再癒着しませんか?
完全に防げるわけではありません。そのため治療後の状態を確認し、必要に応じて複数回サブシジョンを行います。
Q5. ヒアルロン酸が吸収されたら元に戻りますか?
必ずしもそうではありません。ヒアルロン酸が存在している間にも組織修復やコラーゲン形成が進みます。ただし再癒着や瘢痕の状態には個人差があります。
Q6. 架橋ヒアルロン酸との違いは?
架橋ヒアルロン酸は形状やボリュームを比較的長期間維持する目的で使用されることがあります。当院ではサブシジョン後の再癒着対策として非架橋ヒアルロン酸を使用しています。
Q7. ジュベルックとは何が違いますか?
非架橋ヒアルロン酸は主に切離後のスペース維持、ジュベルックは真皮のコラーゲン再構築を目的として使用します。
Q8. ジュベルックはキュアジェットで入れますか?
キュアジェットで導入することもありますが、すべてではありません。状態に応じて注射で直接注入することもあります。
Q9. サブシジョンだけではだめですか?
サブシジョン単独でも効果は期待できます。ただし、再癒着や再陥凹を抑えるという観点から、当院では非架橋ヒアルロン酸を併用することがあります。
まとめ|ヒアルロン酸は凹みを膨らませるためだけではない
サブシジョン後にヒアルロン酸を使用する目的は、単純に凹みを物理的に持ち上げることだけではありません。サブシジョンで深い線維性癒着を解除すると、皮膚と深部組織の間に新しいスペースができます。この部分が治癒過程ですぐに再び接着すれば、再癒着して皮膚が下へ固定される可能性があります。そのため当院では、非架橋ヒアルロン酸を使用して切離した空間を一時的に保ち、皮膚が深部へ再固定されにくい環境を作ることを重視しています。医学的にも、サブシジョンとヒアルロン酸などの充填材を組み合わせることで、サブシジョン単独より良好な治療結果が得られた報告があります。ただし、これらの研究では架橋ヒアルロン酸が使用されているものが多く、非架橋ヒアルロン酸による再癒着予防そのものについては、まだ十分な比較研究があるわけではありません。当院では、初回から深い線維をしっかりサブシジョンし、非架橋ヒアルロン酸で切離した状態を維持しやすくする。その後、再癒着があれば再度解除しながら、浅い線維にはキュアジェット、真皮再構築にはジュベルック、表面の凹凸にはCO2フラクショナルレーザーやピコフラクショナルなどを組み合わせます。サブシジョン+非架橋ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸を入れて凹みを隠す治療ではなく、深部の癒着を解除した状態をできるだけ維持し、その後の皮膚再構築につなげるための治療と当院では考えています。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄
院長 加藤 成貴
【参考文献】
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