シミが盛り上がってきた?老人性色素斑と脂漏性角化症の違い・関係を解説|名古屋
- 2026.9.19
目次
シミが盛り上がってきた?老人性色素斑と脂漏性角化症の違い・関係を解説|名古屋
「以前は平らな茶色いシミだったのに、最近少し盛り上がってきた」という相談があります。この場合、老人性色素斑(日光黒子/solar lentigo)のままなのか、脂漏性角化症の要素が加わっているのかを確認する必要があります。
老人性色素斑と脂漏性角化症は別の病変として扱われますが、両者には組織学的・分子的に共通する部分があり、臨床的にも境界がはっきりしないことがあります。ただし、老人性色素斑がすべて脂漏性角化症になるわけではありません。

老人性色素斑は基本的に「平らなシミ」
典型的な老人性色素斑は、顔、手背、前腕など紫外線を受けやすい部位にできる、平坦な褐色斑です。
組織学的には、基底層のメラニン増加、rete ridgeの延長、角化細胞やメラノサイトの変化などがみられます。日本人女性40例の顔面老人性色素斑を調べた研究では、表皮が比較的平坦なタイプと、rete ridgeが伸びた“budding”タイプの2つの組織学的パターンが報告されています。
つまり、同じ「老人性色素斑」という診断でも、表皮構造は一様ではありません。
脂漏性角化症は「角化」と「厚み」が加わった病変
脂漏性角化症は、角化細胞が増殖して表皮が厚くなり、表面がザラザラしたり、イボのように盛り上がったりする良性腫瘍です。
色は薄い褐色から濃い茶色までさまざまで、顔だけでなく頭皮、首、胸、背中などにもできます。典型的なものでは、
・表面がザラつく
・厚みがある
・少し盛り上がる
・境界が比較的明瞭
平らだったシミが盛り上がってくることはある?
あります。老人性色素斑と脂漏性角化症には、臨床的・組織学的に連続して見える病変があります。実際、老人性色素斑から脂漏性角化症様の変化を示す組織像も報告されています。
さらに、老人性色素斑ではFGFR3変異が17%、PIK3CA変異が7%で認められた研究があり、これらは脂漏性角化症でも知られている遺伝子変化です。このことから、両者の一部には共通する分子基盤がある可能性が示されています。
ただし、ここは誤解しやすいところです。「老人性色素斑を放置すると必ず脂漏性角化症になる」という意味ではありません。一部に連続性が示唆されている、という理解が適切です。
「シミが盛り上がった=脂漏性角化症」と決めつけない
長年あった茶色い病変が盛り上がってくると、脂漏性角化症の可能性は高くなりますが、見た目だけで決めつけるのは危険です。
鑑別には、
・脂漏性角化症
・老人性色素斑
・色素性母斑
・日光角化症
・扁平疣贅
・lentigo malignaなどの悪性病変
が含まれます。特に顔面では、solar lentigo、初期の脂漏性角化症、lentigo malignaの鑑別が難しいことがあります。
「ザラつき」が出てきたら治療方法も変わる
平坦な老人性色素斑と、厚みや角化を伴う脂漏性角化症では、治療の考え方が変わります。
平坦で色素成分が主体
→ ピコスポットなど色素を狙うレーザー
薄く細かい色素が多数
→ ルビーフラクショナル
明らかな角化・厚み・隆起が主体
→ CO2レーザー
というのが基本的な考え方です。
ただし、実際には「色素」と「厚み」が混在した病変も多くあります。
盛り上がっていてもピコスポットを使うことがある
当院では、脂漏性角化症だから必ずCO2レーザーというわけではありません。
ある程度の厚みや隆起があっても、色素成分が強く、ピコレーザーで十分反応すると判断した病変にはピコスポットを使用することがあります。
ピコレーザーによる脂漏性角化症治療については、アジア人を対象とした報告や、755nmピコ秒レーザーを隆起性の色素性病変へ使用した報告もあります。
つまり、治療方法は単純に「平らならピコ、盛り上がったらCO2」と決めるのではなく、色素量・角化の強さ・厚み・部位を見て判断することが重要です。
CO2レーザーを選ぶのはどんな場合?

角化が強い、厚みがある、色素が少ない、イボ状に大きく盛り上がっている場合には、色素だけを狙うレーザーよりCO2レーザーが適しています。
CO2レーザーでは組織そのものを蒸散させるため、厚みのある脂漏性角化症を物理的に除去できます。
当院では、必要以上に深く削らないよう、病変の厚みを確認しながら少しずつ蒸散していきます。
「昔からあるシミだから大丈夫」とは限らない
長年ある老人性色素斑や脂漏性角化症の多くは良性ですが、途中から変化した病変は一度診察することが重要です。
特に、
・急に大きくなった
・色が不均一になった
・黒色が強くなった
・境界が不規則になった
・出血する
・潰瘍ができる
・左右非対称になってきた
などがある場合には、美容レーザーを先に行わず診断を優先します。
当院では、少しでも悪性を疑う所見がある場合には美容レーザー治療を行わず、皮膚科へ紹介します。
日光角化症との違いにも注意
紫外線を多く浴びてきた顔面では、老人性色素斑と日光角化症が近接・混在することもあります。色素性日光角化症を調べた研究では、167検体中83%で別の色素性病変が隣接または混在しており、その中で最も多かったのがsolar lentigoでした。
そのため、単純に「茶色くてザラザラしている=脂漏性角化症」と考えないことも重要です。
老人性色素斑と脂漏性角化症が混ざっている顔では、一つの治療に統一しない
実際の診療では、同じ顔の中に、
・平坦で濃い老人性色素斑
・薄い老人性色素斑
・薄い脂漏性角化症
・厚い脂漏性角化症
が混在していることがあります。
この場合、すべてを一つの機械で治療する必要はありません。
例えば、
・濃い老人性色素斑 → ピコスポット
・薄い老人性色素斑 → ルビーフラクショナル
・ピコで反応しやすい脂漏性角化症 → ピコスポット
・厚みの強い脂漏性角化症 → CO2レーザー
というように、病変ごとに治療方法を変えます。
顔全体を「シミ」と一括りにせず、病変ごとに分けて治療することが重要です。
Q&A
まとめ|「シミが盛り上がった」ら、色だけでなく厚みを見る
老人性色素斑は基本的には平坦な色素斑ですが、長い経過の中で角化や厚みが加わり、脂漏性角化症との境界が分かりにくくなる病変があります。
組織学的・分子的にも老人性色素斑と脂漏性角化症には共通点が報告されていますが、すべての老人性色素斑が脂漏性角化症へ進むわけではありません。治療では、単純に「シミだからレーザー」「盛り上がったからCO2」と決めるのではなく、色素量・角化・厚み・病変の形を見て治療方法を選ぶことが重要です。また、以前からあったシミが急に盛り上がった、形や色が変化したという場合には、まず診断を優先します。老人性色素斑から脂漏性角化症まで連続して見える病変があるからこそ、病変の名前だけではなく、その時点で何が主体なのかを見極めて治療することが大切です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
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監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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