トラネキサム酸は肝斑・色素沈着にどう使う?効果・飲み方・注意点|名古屋
- 2022.7.24
目次
トラネキサム酸とは?
トラネキサム酸は、プラスミンという酵素の働きを抑える「抗プラスミン薬」です。医療では止血や炎症に関わる治療に使用されてきましたが、美容皮膚科では特に肝斑や色素沈着の治療で使われます。
肝斑では、メラニンを作る細胞だけでなく、炎症や血管、紫外線など複数の要因が関係しています。トラネキサム酸は、プラスミン系を介したメラノサイト刺激を抑えることで、肝斑の色調改善に関与すると考えられています。
ただし、老人性色素斑をレーザーのように「取る薬」ではありません。主な位置づけは、肝斑や色素沈着を内側・外側からコントロールする治療です。
【内部リンク:リライト③「肝斑とは?普通のシミとの違い・見分け方・治療法を医師が解説|名古屋」】
肝斑に本当に効果がある?
あります。2024年のランダム化比較試験をまとめたメタ解析では、トラネキサム酸は肝斑の重症度指標を有意に改善し、内服・局所注入・外用など複数の投与方法で効果が示されています。なかでも内服は比較的大きな改善を示しました。一方で、治療効果には個人差があり、投与経路や治療期間も研究によって異なります。そのため「この量をこの期間飲めば必ず治る」という薬ではありません。まゆりなclinic名古屋栄では、肝斑の濃さ、レーザー治療との組み合わせ、血栓症などのリスクを確認しながら使用します。
内服・外用・導入はどう違う?
トラネキサム酸には複数の使い方があります。
内服
→ 全身から作用させる方法。肝斑に対する臨床研究が多く、効果も比較的確認されています。
外用
→ トラネキサム酸配合化粧品や外用剤を使用する方法。内服を避けたい場合やホームケアとして使いやすい選択肢です。
局所導入
→ C-OPERA、水光注射、マイクロニードリングなどでトラネキサム酸を肌へ届ける方法。局所注入やマイクロニードリングについても肝斑改善を示す研究があります。2025年のメタ解析では、トラネキサム酸の局所注入・マイクロニードリングでも肝斑改善が確認されています。
どれか一つが絶対に優れているわけではありません。内服が向かない方では外用や局所治療を選ぶこともあります。
まゆりなclinicではどう使う?
当院では、トラネキサム酸を「肝斑なら全員内服」とはしていません。
代表的には、
肝斑
→ 内服・外用を検討
レーザー治療と併用
→ OPトーニングやピコトーニングに内服・外用を組み合わせる
肌質も整えたい
→ C-OPERAでトラネキサム酸導入を検討
注入治療も組み合わせたい
→ 肌状態に応じて水光注射などで使用することもある
というように使い分けます。
特に肝斑では、トラネキサム酸だけで治療を完結させるより、紫外線対策、摩擦対策、レーザートーニング、C-OPERAなどを組み合わせることがあります。
【内部リンク:リライト⑪「OPトーニングとピコトーニングの違い|肝斑・色素沈着ではどう選ぶ?|名古屋」】
【内部リンク:専門補助⑬「C-OPERAとは?レーザー・IPL後にもおすすめする理由と肌質・小じわ・肝斑への効果|名古屋」】
C-OPERAでトラネキサム酸を導入する意味
当院では、肝斑や色むらが気になる方に、C-OPERAでトラネキサム酸を導入することがあります。C-OPERAは、エレクトロポレーションとソノフォレーシスを組み合わせて美容成分の経皮導入を補助する治療です。内服とは異なり、局所的に成分を取り入れる方法として使います。
当院では、C-OPERA単独でも肝斑の色調が改善する方を比較的多く経験しており、トラネキサム酸導入だけでなく、乾燥や肌質を整えることも肝斑治療の一部として考えています。
ただし、C-OPERAによるトラネキサム酸導入が内服と同じ効果を示すと断定できるわけではありません。肌状態やリスクに応じた選択肢の一つです。
PIHにも使う?
炎症後色素沈着(PIH)にもトラネキサム酸を使用することがあります。
レーザー後やニキビ後など、炎症をきっかけにメラニンが増えている場合には、肌状態を確認しながら内服・外用・導入を検討します。ただし、「レーザー前からトラネキサム酸を飲めばPIHが必ず防げる」というものではありません。PIHには肌質、照射条件、炎症、紫外線など複数の要因が関係します。トラネキサム酸はあくまで補助的な選択肢です。
【内部リンク:リライト⑧「シミ取り後に濃くなった?炎症後色素沈着(PIH)・戻りジミの原因と対処法|名古屋」】
内服はどのくらい続ける?
一律に「1年間飲む」と決める必要はありません。
肝斑に対する研究では8〜12週間程度の内服でも改善が報告されており、専門家レビューでも低用量の短期間内服で有効性が示されています。
ただし肝斑は再燃しやすいため、中止後に再び濃くなる方もいます。2023年の専門家コンセンサスでも、改善後に中止できる一方、再燃例では再度治療が必要になる場合があるとされています。当院では「何か月飲んだから終了」と固定するより、肝斑の変化と安全性を確認して継続・休止を判断します。
トラネキサム酸を飲むと血栓ができる?
ここは誤解されやすい部分です。
トラネキサム酸を飲めば誰でも血栓ができる、という意味ではありません。一方、トラネキサム酸は線溶を抑える薬なので、血栓症がある方や血栓症リスクが高い方では慎重な判断が必要です。日本の添付文書では、トロンビン投与中は禁忌で、脳血栓・心筋梗塞・血栓性静脈炎など血栓のある方、血栓症を起こすおそれのある方には注意が必要とされています。
そのため美容目的で内服する場合も、既往歴を確認したうえで処方します。

内服前に伝えてほしいこと
特に次のような項目がある方は、内服前に必ず医師へ伝えてください。
・血栓症の既往
・脳梗塞、心筋梗塞の既往
・血栓性静脈炎などの既往
・血栓症リスクが高いと指摘されている
・凝固系に関わる疾患や治療がある
・トロンビン製剤を使用している
・腎機能に問題がある
・他院から複数の薬を処方されている
2023年の専門家コンセンサスでも、肝斑目的で経口トラネキサム酸を使用する際には、血栓塞栓症、心血管疾患、月経関連のリスクなどを事前に確認することが推奨されています。
副作用は?
内服では、胃腸症状、頭痛、月経変化などが報告されています。2024年のメタ解析でも、胃腸症状、皮膚刺激、月経異常などが報告されました。
まれなリスクを含め、異常を感じた場合には自己判断で続けず、医師へ相談してください。
また、日本の添付文書では人工透析患者などで痙攣の注意も記載されています。
白髪になる?
現在、トラネキサム酸内服によって白髪が増えることが一般的な副作用として確立しているわけではありません。トラネキサム酸はメラノサイトを破壊する薬ではなく、肝斑治療ではメラニン産生に関わる経路へ作用すると考えられています。「トラネキサム酸を飲むと白髪になるから避けた方がよい」という理解は適切ではありません。
「トランサミン」とトラネキサム酸は違う?
トラネキサム酸は成分名、トランサミン®はその代表的な商品名です。
トランサミン以外にも、トラネキサム酸を成分とする製品があります。
つまり「トランサミンを飲んでいる」と「トラネキサム酸を飲んでいる」は、成分としては同じ薬を指している場合があります。
トラネキサム酸だけで肝斑は治る?
改善する方はいますが、当院ではトラネキサム酸だけに頼る治療はしていません。
肝斑の状態によって、
トラネキサム酸
OPトーニング
ピコトーニング
C-OPERA
ニードルRF
水光注射
スキンケア
紫外線・摩擦対策
などを組み合わせます。
肝斑は慢性・再発性なので、「一つの薬で完全に治す」というより、色素と肌状態を長期的にコントロールすることが重要です。
よくある質問
Q.トラネキサム酸は肝斑に効果がありますか?
A.あります。複数のランダム化比較試験やメタ解析で肝斑改善が報告されています。ただし効果には個人差があります。
Q.何か月飲めばいいですか?
A.一律には決めません。8〜12週間程度で改善を評価した研究もあり、肌状態と安全性を確認しながら継続を判断します。
Q.ずっと飲み続けてもいいですか?
A.漫然と長期継続するのではなく、効果とリスクを定期的に見直します。
Q.血栓症が心配です。
A.誰にでも血栓が起こる薬ではありませんが、血栓症の既往やリスクがある方では慎重な判断が必要です。必ず既往歴や内服薬を伝えてください。
Q.外用だけでも使えますか?
A.可能です。内服以外に、外用や局所導入という選択肢があります。
Q.C-OPERAでトラネキサム酸を入れることはできますか?
A.当院では可能です。肝斑や色むらを含む肌管理として、C-OPERAによる導入を選択することがあります。
まとめ
トラネキサム酸は、肝斑・色素沈着治療で重要な選択肢の一つです。
内服は比較的エビデンスが多く、外用や局所導入にも治療選択肢があります。一方、全員が同じ方法で使用する薬ではありません。
特に内服では、血栓症の既往やリスクを確認したうえで使用することが重要です。
まゆりなclinic名古屋栄では、
肝斑そのものへの治療
+
肌状態を整える治療
+
トラネキサム酸などの薬物療法
を必要に応じて組み合わせます。
トラネキサム酸は「シミを取る薬」ではなく、肝斑や色素沈着をコントロールするための一つの道具です。
【参考文献】
1.Calacattawi R, et al. Tranexamic acid as a therapeutic option for melasma management: meta-analysis and systematic review of randomized controlled trials. J Dermatolog Treat. 2024;35(1):2361106. PMID: 38843906. DOI: 10.1080/09546634.2024.2361106.
2.Bala HR, Lee S, Wong C, Pandya AG, Rodrigues M. Oral Tranexamic Acid for the Treatment of Melasma: A Review. Dermatol Surg. 2018. PMID: 29677015.
3.Chen LY, et al. Intradermal Injection of Tranexamic Acid for the Treatment of Adult Melasma: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Facial Plast Surg Aesthet Med. 2025;27(4):305-312. PMID: 39574359.
4.Prescribing practices of tranexamic acid for melasma: Delphi consensus from the Pigmentary Disorders Society. PMID: 37609738.
5.Younas A, Joshi TP. Clinical considerations for oral tranexamic acid in melasma treatment. J Am Acad Dermatol. 2026. PMID: 42105927.
6.PMDA「トランサミン錠250mg/500mg・カプセル250mg・散50% 添付文書」。血栓症リスク患者、禁忌・注意事項について。
7.まゆりなclinic名古屋栄「トラネキサム酸について〈医師監修〉」旧記事。
文責:まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤成貴








