唇のシミ・黒ずみはなぜできる?紫外線・摩擦・口唇炎・PIHを解説|名古屋
- 2026.9.20

「唇全体が以前より黒くなった」「輪郭がくすんで見える」「口唇炎を繰り返した後から茶色くなった」という相談があります。
このような場合、1個だけ存在する口唇メラノーシスやほくろとは少し考え方が異なります。
唇全体の黒ずみや広い色素沈着では、口唇炎や接触刺激に伴うPIH(炎症後色素沈着)、摩擦、乾燥、紫外線などが関係していることがあります。
重要なのは、黒ずんでいる部分をすべて「シミ」と考えて強いレーザーを当てるのではなく、現在も炎症が続いていないかを先に確認することです。
目次
1個のシミと「唇全体の黒ずみ」は分けて考える
例えば、下唇に小さな茶色い点が1個だけあり、長期間ほとんど変化していない場合には、口唇メラノーシスなどの限局性色素性病変を考えます。
一方、
・唇全体が茶色い
・輪郭に沿って黒ずんでいる
・まだらに複数の色素沈着がある
・口唇炎の後から色が濃くなった
という場合には、PIHや接触性口唇炎などを考えます。
口腔の色素沈着についてのレビューでも、限局性色素斑と、炎症・全身疾患などによるびまん性色素沈着は分けて整理されています。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
口唇炎の後にPIHが残ることがある
PIHは、炎症が起きた後にメラニン産生が増え、茶色い色素沈着として残る状態です。
口腔のpost-inflammatory pigmentationについても、慢性的な炎症が存在した部位にメラニンが増加し、黒〜茶色の色素沈着として現れることが報告されています。炎症が治まった後も、色素沈着が長期間残るケースがあります。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
唇では、
・口唇炎
・接触皮膚炎
・繰り返す皮むけ
・乾燥による炎症
などの後に色素沈着が目立つことがあります。
つまり、黒ずみだけを治療する前に、その前段階となる炎症を止めることが重要です。
まだ唇が荒れているなら、まず炎症を治す

唇が赤い、ヒリヒリする、皮むけを繰り返す、かゆいといった症状が残っている場合には、色素治療を急ぐより先に炎症を落ち着かせます。
炎症が続いている状態では、メラノサイトへの刺激も続くため、色素沈着を治療しても新たなPIHが生じる可能性があります。
PIH全般でも、炎症の程度や深さがその後の色素沈着の強さや持続期間に影響することが知られています。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
そのため、当院では「黒いからすぐレーザー」というより、活動性の口唇炎がないかを確認してから色素治療を考えます。
リップや化粧品が原因になることもある
唇の黒ずみでは、接触性口唇炎も重要です。
リップクリーム、口紅、歯磨き粉、香料などが刺激やアレルギー性接触皮膚炎を起こし、その後に色素沈着が残ることがあります。
pigmented contact cheilitisについてのsystematic reviewでは、報告例すべてで複数の色素斑がみられ、かゆみ、落屑、腫脹、紅斑などを伴う症例が報告されています。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
「新しいリップに変えてから荒れるようになった」「同じ化粧品を使うと繰り返し皮むけする」といった場合には、単なるシミとして治療する前に原因となる刺激を見直します。
摩擦で唇は黒ずむ?
摩擦はそれ自体が独立した「口唇メラノーシス」を作る原因とは限りません。
ただし、繰り返す摩擦によって微細な炎症が起これば、PIHにつながる可能性があります。
例えば、
・皮をむく
・強くこする
・頻繁に唇を触る
・クレンジング時に強く擦る
といった刺激が繰り返されると、炎症が持続する原因になります。
したがって、摩擦→炎症→PIHという流れで黒ずみが目立つことがあると考える方が正確です。
「舐める癖」も炎症を長引かせる
乾燥すると無意識に唇を舐める方がいます。
一時的には潤ったように感じますが、唾液が蒸発するとさらに乾燥し、唇周囲の皮膚まで刺激されることがあります。
これを繰り返すことで口唇炎が長引けば、その後のPIHにもつながります。
黒ずみだけを気にしている患者さんでも、「実はずっと乾燥・炎症が続いている」というケースがあります。
紫外線も唇の色素に影響する
唇、とくに赤唇部は紫外線の影響を受けます。
紫外線はメラノサイトを刺激し、メラニン産生を促進するため、既存の色素沈着を濃く見せる可能性があります。PIHについても、紫外線曝露が色素沈着の悪化・遷延に関係することが知られています。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
そのため、唇の色素沈着が気になる場合には、顔の日焼け止めだけでなくUVカット機能のあるリップなどを使用することも一つの方法です。
ただし、唇の黒ずみ=すべて紫外線が原因ではありません。
口唇炎や接触刺激などが背景にあることも多いため、原因を一つに決めつけないことが重要です。
生理的な色素の個人差もある
唇の色にはもともと個人差があります。
生理的なメラニン量の違いによって、もともと赤唇部が茶色〜褐色に見える場合があります。
口腔粘膜には正常でもメラノサイトが存在しており、そのメラニン産生量の違いによって生理的な色素沈着がみられます。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
以前からほぼ同じ色で、炎症や急な変化もない場合には、生理的な色調である可能性も考えます。
唇全体の黒ずみにピコスポットを当てる?
基本的には、PIHやびまん性の黒ずみに対して「黒い部分を全部ピコスポットで強く取る」という治療は行いません。
ピコスポットは、境界が比較的明瞭な口唇メラノーシスや色素性母斑など、限局した色素性病変を狙う治療です。
一方、PIHでは強いスポット照射そのものが新たな炎症を生じさせ、色素沈着を悪化させる可能性があります。
そのため、点状のシミと唇全体の黒ずみでは治療方法を分ける必要があります。
まず「炎症が残っているか」を判断する
唇全体の黒ずみを治療する場合には、
・赤みがあるか
・ヒリヒリしていないか
・皮むけが続いていないか
・かゆみがないか
・使用しているリップや化粧品で悪化しないか
などを確認します。
炎症が続いていれば、まずその原因を取り除きます。
炎症が十分に落ち着いた後もPIHが残っている場合に、色素改善の治療を検討します。
PIHを早く薄くしたい場合
PIHは炎症が治まれば自然に薄くなることもあります。
一方、色素沈着が気になり、できるだけ早く改善したい場合には、肌状態をみながら低刺激な色素治療を検討します。
当院では顔のPIHではOPトーニング、ピコトーニング、C-OPERA、外用などを使い分けていますが、口唇は皮膚とは構造が異なるため、照射方法や適応を個別に判断します。
重要なのは、PIHに対して強いスポット照射を繰り返すことではありません。
1個だけ黒い点があるなら別の病変を考える
唇全体の黒ずみではなく、明確な黒い点が1個ある場合には、
・口唇メラノーシス
・色素性母斑
・静脈湖
など別の病変を考えます。
特に平坦で境界が明瞭な茶〜黒褐色斑では口唇メラノーシス、青紫色なら静脈湖などを鑑別します。
黒ずみが多数の「点」として出ている場合も別に考える
唇全体が一様に黒いのではなく、口唇や口腔内に小さな色素斑が多数みられる場合には、PIHだけでなく全身疾患や症候群を考えることがあります。
Peutz-Jeghers症候群、Addison病、Laugier-Hunziker症候群などでは、口唇・口腔に多発性色素沈着がみられることがあります。
唇の黒ずみを簡単に整理すると

Q&A
まとめ|唇の黒ずみは、色素より先に「炎症があるか」を見る
唇全体の黒ずみやくすみは、1個の口唇メラノーシスやほくろとは別に考える必要があります。
特に、
・口唇炎
・接触性口唇炎
・摩擦
・乾燥
などによる炎症の後にはPIHが生じることがあります。
紫外線も色素を濃くする要因になりますが、唇の黒ずみをすべて日焼けのせいにするのは適切ではありません。
現在も赤み、皮むけ、ヒリつきなどがある場合には、まず炎症を治すことが重要です。
炎症が十分に落ち着いた後も色素沈着が残っている場合に、必要に応じて色素改善治療を検討します。
つまり、唇の黒ずみでは、
まず炎症を止める
→ 残った色素がPIHなのか別の色素性病変なのかを確認する
→ その状態に合わせて治療する
という順番が重要です。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Lambertini M, Patrizi A, Ravaioli GM, Dika E. Oral pigmentation in physiologic conditions, post-inflammatory affections and systemic diseases. G Ital Dermatol Venereol. 2018;153(5):666-671.
- Gondak RO, et al. Oral postinflammatory pigmentation: an analysis of 7 cases. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2011.
- Pigmented contact cheilitis: a systematic review. 2024.
- Silpa-Archa N, et al. Postinflammatory hyperpigmentation: A comprehensive overview. J Am Acad Dermatol. 2017.
- Kashetsky N, et al. Post-inflammatory hyperpigmentation: A systematic review of treatment outcomes. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2024.
- Pigmented Lesions of the Oral Mucosa: Clinical Presentation, Histology, and Recommendations for Management. 2025.
- Bolzon A, et al. Cheilitis: a comprehensive review and a new clinical classification proposal. Part 1: Isolated cheilitis. Ital J Dermatol Venerol. 2026.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
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