唇にシミがたくさんあるのは病気?Peutz-Jeghers症候群・Addison病・Laugier-Hunziker症候群を解説|名古屋
- 2026.9.20
目次
唇にシミがたくさんあるのは病気?Peutz-Jeghers症候群・Addison病・Laugier-Hunziker症候群を解説|名古屋
唇や口の周りに小さな茶色〜黒い色素斑が多数あると、「シミが増えただけなのか」「何か病気が隠れているのか」と不安になる方がいます。
実際、多発する口唇色素斑があるからといって、すぐに全身疾患を意味するわけではありません。ただし、単発の口唇メラノーシスとは違い、多発する場合には全身疾患や症候群も鑑別に入ります。
代表的なのが、
・Peutz-Jeghers症候群
・Addison病
・Laugier-Hunziker症候群
です。
重要なのは、色の濃さよりも、いつからあるのか、どこに分布しているのか、口腔内や手指・爪にも変化があるのか、全身症状を伴うのかを見ることです。

多発する色素斑では「数」より「分布」が重要
単発の口唇メラノーシスは、典型的には下唇に1個だけ存在する平坦な色素斑です。
一方、多発する場合には、
・唇だけか
・口の周囲にもあるか
・口腔内にもあるか
・指先や足趾にもあるか
・爪にも色素変化があるか
・全身の皮膚にも色素沈着があるか
を確認します。
多発性色素沈着では、何個あるかより、どこに出ているかが診断の大きな手がかりになります。
Peutz-Jeghers症候群とは?
Peutz-Jeghers症候群は、STK11遺伝子の病的変異と関連する遺伝性疾患で、
・皮膚・粘膜の色素斑
・消化管ポリポーシス
を特徴とします。
色素斑は、
・唇
・口の周囲
・口腔粘膜
・指先
・足趾
などにみられることがあります。
色素沈着は小児期から出現することが多く、年齢とともに皮膚側の色素が薄くなることがありますが、口腔粘膜の色素は残ることがあります。
さらに重要なのは、消化管ポリープや複数の悪性腫瘍リスクとの関連です。そのため、小児期〜若年期から口唇・口周囲に多数の色素斑があり、家族歴や消化器症状がある場合には、美容的なシミだけとして扱わないことが重要です。
Addison病では「びまん性の色素沈着」が手がかりになる
Addison病は、副腎皮質機能低下症の一つです。
コルチゾールなどの副腎皮質ホルモンが不足するとACTHが高値となり、その影響で皮膚や粘膜に色素沈着がみられることがあります。
特徴としては、
・口腔粘膜
・歯肉
・頬粘膜
・手掌のしわ
・関節周囲
・傷跡
などの色素沈着があります。
口唇に小さな点が数個あるというより、口腔粘膜を含めて広く色が濃くなることがあります。
さらに、
・強い倦怠感
・体重減少
・低血圧
・食欲低下
・吐き気
などの全身症状を伴うことがあります。
このような場合には、美容レーザーを考えるより先に内科的な評価が必要です。
Laugier-Hunziker症候群とは?
Laugier-Hunziker症候群は、口唇や口腔粘膜などに後天性の色素沈着が多発する良性疾患です。
典型的には、
・成人以降に発症
・口唇や口腔粘膜に複数の茶色〜黒色斑
・爪に縦方向の色素線条を伴うことがある
という特徴があります。
Peutz-Jeghers症候群と見た目が似ることがありますが、Laugier-Hunziker症候群では消化管ポリポーシスや悪性腫瘍リスクとの関連は基本的にありません。
つまり、
Peutz-Jeghers症候群
→ 遺伝性で、消化管・悪性腫瘍リスクを含めた全身管理が重要
Laugier-Hunziker症候群
→ 良性の後天性色素沈着
という違いがあります。
Peutz-JeghersとLaugier-Hunzikerはどう見分ける?
典型的には次のような違いがあります。
← 横にスクロールできます →
| 項目 | Peutz-Jeghers症候群 | Laugier-Hunziker症候群 |
| 発症時期 | 小児期〜若年期が多い | 成人以降が多い |
| 口唇色素 | 多発 | 多発 |
| 口腔内 | あり | あり |
| 指先・足趾 | みられることがある | 一般的には目立ちにくい |
| 爪の色素線条 | 必須ではない | みられることがある |
| 消化管ポリープ | あり | なし |
| 遺伝性 | あり | 基本的になし |
| 全身管理 | 必要 | 基本的には不要 |
ただし、見た目だけで完全に区別できるわけではありません。病歴、家族歴、全身症状などを合わせて判断します。
「唇のシミが多い=病気」ではない
多発する口唇色素斑があるからといって、すぐにPeutz-Jeghers症候群やAddison病というわけではありません。
例えば、
・生理的色素沈着
・PIH
・口唇炎後の色素沈着
・複数の良性色素斑
・薬剤性の色素沈着
などでも、唇に色素が多く見えることがあります。
そのため、多いか少ないかだけではなく、分布・出現時期・全身所見をみることが重要です。
爪も確認する

Laugier-Hunziker症候群では、爪に縦方向の茶〜黒色線条がみられることがあります。
そのため、口唇・口腔に多発する色素斑を診察する際には、口だけでなく爪を確認することも参考になります。
ただし、爪の色素線条には他の原因もあるため、「爪に黒い線がある=Laugier-Hunziker」と単純には判断しません。
薬剤による色素沈着もある
薬剤によって口腔粘膜や口唇に色素沈着が起こることがあります。
薬剤性の場合には、口腔内や歯肉、口唇などにびまん性または多発性の色素沈着として現れることがあります。
新しい薬を開始してから色素沈着が目立つようになった場合には、服薬歴も診断の手がかりになります。ただし、自己判断で薬を中止するのではなく、原因薬が疑われる場合には処方医へ相談します。
全身疾患に伴う色素沈着でも、治療できるものと原疾患治療を優先するものがある
全身疾患や症候群に伴う口唇色素沈着では、すべてを同じように美容治療するわけではありません。Laugier-Hunziker症候群やPeutz-Jeghers症候群では、診断が確定した後に美容目的で口唇の色素を色素レーザーで治療した報告があります。そのため、原疾患の評価や管理を踏まえたうえで、美容的な色素治療を検討できる場合があります。
一方、Peutz-Jeghers症候群では消化管ポリポーシスや悪性腫瘍リスクの管理が重要であり、Addison病では副腎機能低下という原疾患そのものへの対応が優先されます。特にAddison病では、ホルモン異常によって全身性の色素沈着が生じているため、まず内科的な診断と治療が重要です。つまり、口唇に色素があるからすぐ美容治療を考えるのではなく、その色素沈着が何によって生じているのかを確認し、疾患によって美容治療を検討できるものと、まず原疾患治療を優先すべきものを分けて考えることが大切です。
単なる良性色素斑が複数ある場合は?
全身疾患を疑う所見がなく、良性の限局性色素斑が複数あると判断できれば、美容的な治療を検討できます。当院では、良性と判断できる色素主体の病変ではピコスポットを検討します。
ただし、広範囲にぼんやりしたPIHやびまん性色素沈着では、限局したピコスポットとは治療の考え方が異なります。
どんな場合に全身評価を考える?
次のような場合には、美容的なシミ治療だけでなく全身疾患を考えます。
・小児期から唇・口周囲に多数の色素斑がある
・口腔内にも多数の色素斑がある
・指先や足趾にも色素斑がある
・爪に複数の色素線条がある
・家族にも同じような症状がある
・腹痛、消化管出血など消化器症状がある
・強い倦怠感、体重減少、低血圧などがある
・色素沈着が急に全身へ広がってきた
該当するから必ず病気という意味ではありませんが、診断の手がかりになります。
多発していても「1個だけ違う病変」が混ざることがある
多発性色素斑がある場合でも、すべてが同じ病変とは限りません。
例えば、複数の良性色素斑の中に、
・1個だけ急に大きくなった
・色が明らかに不均一
・境界が不規則
・出血や潰瘍がある
といった病変が混ざっている場合には、その1個を別に評価する必要があります。
「たくさんあるうちの1個だから同じもの」と決めつけないことが重要です。
多発する口唇色素を簡単に整理すると
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| 状態 | 主に考えるもの |
| 成人後に口唇・口腔+爪の色素線条 | Laugier-Hunziker症候群 |
| 小児期から口唇・口周囲+消化器症状・家族歴 | Peutz-Jeghers症候群 |
| 口腔を含むびまん性色素+倦怠感・低血圧など | Addison病 |
| 口唇炎後に広く色素沈着 | PIH |
| 全身症状なし、限局性色素が複数 | 良性色素性病変も考える |
| 1個だけ明らかに変化・不整 | 悪性病変を含め精査 |
Q&A
まとめ|唇のシミが多い場合は「数」より「分布と全身所見」を見る
唇や口の周囲に色素斑が多数ある場合でも、すべてが病気というわけではありません。
一方、多発性色素沈着では、
・Peutz-Jeghers症候群
・Addison病
・Laugier-Hunziker症候群
・薬剤性
・PIH
なども鑑別に入ります。
重要なのは、何個あるかではなく、いつからあるのか、どこに分布しているのか、口腔内・指先・爪・全身にも変化があるのか、全身症状を伴っていないかを見ることです。
また、全身疾患に伴う色素沈着でも、Laugier-Hunziker症候群や管理されたPeutz-Jeghers症候群のように美容的な色素治療を検討できるものがある一方、Addison病のようにまず原疾患の治療を優先すべきものもあります。そのため、多発しているから全部レーザーするのではなく、まず「なぜ多発しているのか」を確認することが重要です。原因を整理したうえで、美容治療の適応がある色素については、その後に色素レーザーなどを検討します。
【文責】
まゆりなclinic名古屋栄
院長 加藤 成貴
【参考文献】
- Beggs AD, et al. Peutz-Jeghers syndrome: a systematic review and recommendations for management. Gut. 2010.
- GeneReviews®. Peutz-Jeghers Syndrome.
- Laugier-Hunziker syndrome: a systematic review and report of two cases. 2021.
- Müller S. Melanin-associated pigmented lesions of the oral mucosa: presentation, differential diagnosis, and treatment. Dermatol Ther. 2010.
- Lambertini M, et al. Oral pigmentation in physiologic conditions, post-inflammatory affections and systemic diseases. G Ital Dermatol Venereol. 2018.
- Pigmented Lesions of the Oral Mucosa: Clinical Presentation, Histology, and Recommendations for Management. 2025.
- Laser therapy for mucocutaneous pigmentation in Peutz-Jeghers syndrome: a systematic review. 2022.
- Treatment of mucocutaneous pigmentation in Laugier-Hunziker syndrome with pigment-selective laser systems. Clinical reports and case series.
監修医師

まゆりなclinic名古屋栄 院長
<経歴>
三次救急病院、美容皮膚科・美容外科クリニックで、内科・外科・救急医療から美容医療まで幅広い診療経験を積む。2022年に「名古屋・栄の美容皮膚科」としてまゆりなclinic名古屋栄を開院。
医学的根拠に基づき、「本当に良いと思えるものだけを提供すること」を信条とし、効果が不確かな施術は採用せず、自ら体験して効果を実感できた医療だけを厳選して導入しています。
特にシミ取りレーザー(ピコレーザー)ニキビ跡治療(フラクショナルレーザーやクレーター状のニキビ跡に対する剥離治療[サブシジョン]など)、ヒアルロン酸やボトックスを用いた注入治療医療ダイエット(脂肪溶解注射・GLP-1など)を得意としており、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提供しています。
わからないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。医師の視点から、科学的根拠に基づいて丁寧にお応えします。








