「最近、家族からいびきが大きいと言われるようになった」
「昔はいびきをかかなかったのに、最近増えてきた」
「しっかり寝ているはずなのに、朝すっきりしない」
いびきは非常に身近な現象です。
疲れているときやお酒を飲んだ日に一時的にいびきをかくこともあるため、「単なる寝息の音」と考えている方も少なくありません。
しかし医学的には、いびきは睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなり、喉の周囲の組織が振動することで生じる音です。
前回の睡眠コラムでは、「良い睡眠とは何か」について、睡眠時間だけではなく、睡眠の質という視点から解説しました。
▶ 良い睡眠とは?睡眠時間だけでは決まらない「睡眠の質」について
今回はその続きとして、なぜ起きているときには問題なく呼吸できているのに、眠るといびきが出るのかを考えていきます。
名古屋・栄のまゆりなclinic名古屋栄が、いびきが起こる仕組みや、いびきを強くする要因について分かりやすく解説します。
目次
いびきは「喉の振動音」
私たちは呼吸をするとき、鼻や口から空気を取り込み、喉を通して肺へ送り込んでいます。
鼻から喉にかけての空気の通り道を「上気道」と呼びます。
この上気道が十分に広ければ、空気は比較的スムーズに通ります。
ところが、睡眠中に上気道が狭くなると、狭い場所を空気が通過することになります。
すると空気の流れによって、
- 軟口蓋
- 口蓋垂
- 舌根部
- 咽頭周囲の軟らかい組織
などが振動します。
この振動によって発生する音が「いびき」です。
つまり、いびきは単なる寝息ではなく、睡眠中の空気の通り道が狭くなっていることで生じる現象と考えることができます。

なぜ眠ると気道が狭くなるのか
大きな理由の一つが、睡眠による筋肉の緊張の低下です。
といった変化が起こります。
もともと気道が狭くなりやすい方では、この睡眠中の変化によって、さらに空気の通り道が狭くなることがあります。
また、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の病態については、単純な気道の形だけではなく、上気道のつぶれやすさ、気道を広げる筋肉の反応、呼吸を調節する仕組み、覚醒の起こりやすさなど複数の要因が関係することが分かっています。
いびきや睡眠中の呼吸を考えるときには、「喉が狭い」という一つの原因だけでなく、さまざまな要素を考える必要があります。
太っていなくても、いびきは起こる
「いびきは太っている人がかくもの」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
確かに体重が増加すると、首や喉周囲の軟部組織が増え、上気道が狭くなりやすくなる場合があります。しかし、体重だけでいびきが決まるわけではありません。
たとえば、
- 下あごが小さい、または後方に位置している
- 舌が大きい
- 軟口蓋や口蓋垂の形態
- 喉の空間が狭い
- 鼻が詰まりやすい
といった身体的な特徴も関係します。
そのため、やせている方でもいびきをかくことがあります。
「太っていないから、いびきは問題ない」とは一概には言えません。実際、私(院長)の友人で痩せていますが、大きないびきをかいているひとがいます笑
いびきが強くなりやすい5つの条件
普段はいびきがそれほど目立たない方でも、その日の状態や生活習慣によっていびきが強くなることがあります。
いびきをかく人が、すべて睡眠時無呼吸というわけではない
ここは非常に大切なポイントです。
いびきがある=睡眠時無呼吸症候群、ではありません。
睡眠中に気道が狭くなって振動音が生じていても、呼吸そのものは保たれている場合があります。一方で、さらに上気道が狭くなったり閉塞したりすることで、睡眠中に呼吸量が大きく減少したり、呼吸が繰り返し止まったりする状態が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)です。
つまり、「いびき」と「睡眠時無呼吸」は密接に関連していますが、同じものではありません。この違いについては、次回の睡眠コラムで詳しく解説します。
こんないびきは一度確認した方がよい
いびきをかいているからといって、すぐに病気というわけではありません。
一時的ないびきや、呼吸が保たれている単純ないびきもあります。
ただし、次のような場合には、単純ないびきだけでなく、睡眠時無呼吸などの睡眠関連呼吸障害が隠れていないか確認することが大切です。
- ✓家族から睡眠中に呼吸が止まっていると言われる
- ✓ほぼ毎晩、大きないびきをかく
- ✓いびきが途中で止まり、その後大きく息をする
- ✓十分寝ているのに朝すっきりしない
- ✓日中に強い眠気を感じる
- ✓仕事中や運転中に強い眠気を感じることがある
特に、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘される場合や、日中の強い眠気を伴う場合には、睡眠中の呼吸状態について医療機関で相談することが重要です。
大切なのは、「いびきの音が大きいかどうか」だけではありません。
睡眠中に呼吸がきちんと保たれているのかという視点で考える必要があります。
いびきの大きさだけでは状態は分からない
「大きないびきをかいているほど、睡眠時無呼吸も重症なのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、いびきの音の大きさだけで睡眠中の呼吸状態や睡眠時無呼吸の重症度を判断することはできません。
いびきについて考える場合には、
- どのくらいの頻度でいびきをかくのか
- 呼吸が止まっていないか
- 朝すっきり起きられるか
- 日中に強い眠気がないか
- 睡眠中の呼吸状態に異常がないか
などを総合的に考えることが大切です。
いびきは「音」として気づかれることが多い症状ですが、その背景にある睡眠中の気道と呼吸の状態にも目を向ける必要があります。
いびきは「睡眠中の気道」を知る一つのサイン
前回の睡眠コラムでは、良い睡眠を考えるうえでは「何時間寝たか」だけでなく、「どのように眠れているか」が大切だとお伝えしました。
睡眠中の呼吸も、その重要な要素の一つです。
いびきは非常に身近な現象ですが、睡眠中の上気道の状態を知る一つのサインでもあります。
もちろん、いびきをかいているからといって、すぐに病気と考える必要はありません。
しかし、
「最近いびきが強くなった」
「毎晩いびきを指摘される」
「呼吸が止まっていると言われた」
「十分寝ているのに朝すっきりしない」という場合には、一度ご自身の睡眠や呼吸について考えてみることも大切です。
名古屋でいびきについてお悩みの方にとって、この睡眠コラムが、ご自身の睡眠を見直すきっかけになれば幸いです。
いびきについてよくある質問
Q.いびきをかいていたら睡眠時無呼吸症候群ですか?
いいえ。
いびきをかいているだけで、睡眠時無呼吸症候群と判断することはできません。一方で、いびきの途中で呼吸が止まっている、日中の強い眠気があるなどの場合には、睡眠時無呼吸が隠れている可能性もあるため、睡眠中の呼吸状態を確認することが重要です。
Q.やせている人でもいびきをかきますか?
はい。
いびきには体重だけでなく、舌やあご、軟口蓋、鼻づまりなどさまざまな要素が関係します。そのため、肥満がなくてもいびきをかくことがあります。
Q.お酒を飲むといびきが大きくなるのはなぜですか?
アルコールによって舌や喉周囲の筋肉が緩みやすくなり、睡眠中の上気道が狭くなることが一因と考えられます。普段はいびきを指摘されない方でも、飲酒した日にいびきが強くなることがあります。
Q.いびきが大きければ重症ですか?
いびきの音量だけでは判断できません。睡眠中の呼吸停止の有無や呼吸状態、日中の眠気などを含めて考える必要があります。
次回は「いびきと睡眠時無呼吸症候群の違い」を解説します
いびきをかいているからといって、すべての方が睡眠時無呼吸症候群というわけではありません。
では、「普通のいびき」と「睡眠時無呼吸を伴ういびき」は、何が違うのでしょうか?
次回の睡眠コラムでは、
- 睡眠時無呼吸症候群とは何か
- 単純ないびきとの違い
- どのような症状に注意すべきか
- 睡眠中に呼吸が止まると身体では何が起こるのか
について詳しく解説します。
▶ いびきと睡眠時無呼吸症候群の違い
参考文献
1. Pevernagie D, Aarts RM, De Meyer M. The acoustics of snoring. Sleep Medicine Reviews. 2010;14(2):131-144. doi:10.1016/j.smrv.2009.06.002.
2. Tolbert TM, Ayappa I, Rapoport DM. OSA pathophysiology: a contemporary update. Australian Dental Journal. 2024;69(Suppl 1). doi:10.1111/adj.13060.
3. Sunwoo BY, Malhotra A. Mechanical Interactions Between the Upper Airway and the Lungs that Affect the Propensity to Obstructive Sleep Apnea in Health and Chronic Lung Disease. Sleep Medicine Clinics. 2024;19(2):211-218. doi:10.1016/j.jsmc.2024.02.001.
4. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編.『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』南江堂,2020.
5. 厚生労働省.「いびき・睡眠時無呼吸症候群」健康づくりのための睡眠指針関連資料.
6. 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム(旧e-ヘルスネット).「睡眠時無呼吸症候群/SAS」.
文責
まゆりなclinic名古屋栄
院長 加藤成貴








