日本内科学会総合内科専門医によるプラセンタに関するよくある質問への回答 <医師監修>
- 2022.5.8
目次
今回は、プラセンタについてよくある質問についてQ&A式で回答していきます。
Q.プラセンタって一体何ですか?
A.プラセンタ製剤は、ヒトの胎盤から抽出したエキスを原料とする生物製剤です。
Q.プラセンタがなぜ効くのか?
A.プラセンタには、いろいろなものが入っておりますが、実は、何が有効成分で、どのように作用しているのかはっきり分かっておりません。
Q.何に効くのでしょうか?
A.プラセンタ製剤は、二種類あります。ラエンネックとメルスモンという製剤です。
どちらも保険適応があります。ラエンネックは「慢性肝疾患の肝機能改善」、メルスモンは、「更年期障害」「乳汁分泌不全」の治療と記載されております。
しかし、これは、あくまで「保険適応」というだけで、その他にもたくさんの効果が期待できます。
どのように作用しているのか分からないのに効果があるのは、不思議かもしれませんが、疲労回復、血行促進、抗炎症作用、抗酸化作用、免疫力向上、美肌作用(シミ・ニキビ)、原因不明のめまい改善作用、喘息、アトピー性皮膚炎、生理不順・生理痛、自律神経失調症、リウマチ、脊柱管狭窄症にも効果があるとされております。傷の近くに皮下注射すると傷の治りが早いとの報告もあります。
Q.ラエンネックとメルスモンの違いって何ですか?
A.添加物が違います。ラエンネックは無添加です。メルスモンはベンジルアルコールが配合されております。ベンジルアルコールは局所麻酔作用があるので、注射時の痛みを緩和します。
材料にも少し違いがあります。ラエンネック:胎盤(羊膜付き)+臍帯、メルスモン:胎盤(羊膜なし)+臍帯
ラエンネックは、細胞増殖因子と言われる高分子物質が多く含まれています。この高分子物質は皮膚に到達すると、コラーゲン生成を促します。美容目的の方はラエンネックを選択するといいかもしれません。と言いつつも、効果・効能に関しては、人それぞれ違いますので、どちらもあまり変わらないと考えております。まゆりなclinicでは、2種類用意しておりますので、お好きな方を選択して頂いております。
Q.効果はどれぐらいで出ますか?
A.注射の翌日に明らかな効果が出る場合もあります。しかし、すぐに出ない場合もあります。半年から1年継続して効果が出ない場合は、プラセンタで改善する症状でないと判断して中止したほうがいいと考えます。
Q.注射する頻度はどれぐらいですか?
A.保険適応がある更年期障害、乳汁分泌不全、肝機能障害は1回1A(アンプル)と決められております。自由診療の場合、症状や希望に応じ、1~10Aの注射が可能です。しかし、一般的に、1回2~5Aの方が多いです。大体1週間に1回または、2週間に1回の方が多いですが、患者様の調子によっては、月に1回になる場合もあります。
Q.どこに注射するのですか?
A.使用説明書には、メルスモンは皮下注射、ラエンネックは皮下注射・筋肉注射と記載されておりますが、基本的には、いずれも皮下注射も筋肉注射も可能と考えております。静脈注射や点滴は、ショックの報告があり、あまり推奨されておりません。一般的な注射部位は、上腕です。そのほか、臀部があります。臀部は、下着で隠れている部分なので、注射痕が見えにくいとのことで、まゆりなclinicでは、人気です。
Q.リスクはありますか?
A.ヒトの胎盤をもとに作られた製剤なので、感染症を心配されると思いますが、B型肝炎、C型肝炎やHIVなどのウイルス感染のないことが証明されている、国内の満期正常分娩した女性から提供される胎盤を使用しているため、基本的に問題ありません。ただし、未知のウイルスに感染する危険性は、現時点では0%とは言えません。(未知のウイルスなので、現時点で知る由もありませんが。)その他、一般的な副作用として、注射時の痛み、注射部位の皮下出血、アレルギーなどがあります。
Q.献血できないのはなぜですか?
A.以前に社会問題となった狂牛病を覚えていらっしゃいますでしょうか?
関連疾患である変異型クロイツフェルトヤコブ病に感染するリスクが0とは言えないからです。ちなみに日本でこの変異型クロイツフェルトヤコブ病が発症する確率は、1億人に0.1〜0.9人です。今まで、プラセンタ注射をして変異型クロイツフェルトヤコブ病に感染した患者様の報告はなく、ほとんど0%に近いと思われますので、効果とリスクを天秤にかけると、圧倒的に効果の方が優先されるのではないかと考えます。(効果を実感できる方に関してですが)
Q.男性にも効果ありますか?
A.男性更年期障害という言葉を聞いたことがありますでしょうか?実は、男性更年期障害にも効果が期待できます。そのほか、女性と同じく肝臓の治療や疲労回復にも効果が期待できます。
Q.飲むプラセンタは効果ありますか?
A.なんとも言えませんが、一定の効果はあると思います。はっきりしたお答えができないのは、飲んだプラセンタが、消化液で分解されてしまうので、どれほど、血中に入るか分からないためです。
【まとめ】
プラセンタが効果を示すまでの機序ははっきりしておりません。
しかし、実際に効果がある方がたくさんいらっしゃいます。
ほとんど0に近い感染症や輸血できないなどの問題はありますが、それらを気にされなければ、十分試してみる価値のある治療です。
※編集後記
私の妻が、原因不明のめまいが半年ほど発作的に続いたので、発作時にプラセンタ2A(アンプル)を注射したら翌日に消失しました。病名としては、「良性発作性頭位めまい症」で頭を動かすと増悪するめまいでした。このめまいは、耳の奥(内耳)にある耳石の位置が問題と言われております。このような症状だと、病名として「良性発作性頭位めまい症」しかないので、症状≒病名のような形になっておりますが、私の妻の経過からは耳石は関係なさそうですよね。こういう場合、原因は「ストレス」と簡単にまとめられてしまいますが、原因はなんであろうと、患者様は、症状改善をしたいと思いますので、何かよくわからない体の不調には、プラセンタが有効かもしれません。ちなみにその後、10日に1回ほどプラセンタ2Aを注射しておりますが、症状の再発は全くありません。