ミラドライはワキガに効果がある?多汗症・腋臭症への医学的エビデンスを医師が解説|名古屋
- 2026.10.12
目次
ミラドライはワキガに効果がある?多汗症・腋臭症への医学的エビデンスを医師が解説|名古屋
「ミラドライは多汗症には効くけれど、ワキガのニオイには効果がないのでしょうか?」
診療をしていると、このような質問を受けることがあります。
結論からお伝えすると、ミラドライには腋窩多汗症に対する多くの臨床データがあり、ワキガ(腋臭症)についても、ニオイの改善やアポクリン汗腺への作用を示した複数の医学論文があります。
2024年に発表された腋窩多汗症・腋臭症に対する局所治療のシステマティックレビューでは59研究が検討され、そのうち46研究がランダム化比較試験でした。エネルギーデバイスの中では、マイクロ波治療が最も確立され、科学的根拠が蓄積している方法と評価されています。したがって、「ミラドライはワキガには効果が期待できない」と一律に考えることは、現在までに蓄積されている臨床研究や組織学的研究とは一致しません。この記事では、ミラドライについて実際にどのような医学的データがあり、どこまで分かっているのかを整理して解説します。
多汗症とワキガでは関係する汗腺が異なる
ワキには主に、エクリン汗腺とアポクリン汗腺があります。
エクリン汗腺は主に発汗に関係し、多汗症では過剰な発汗が問題になります。一方、ワキガ(腋臭症)では、アポクリン汗腺から分泌された成分が皮膚表面の細菌によって分解されることで特徴的なニオイが生じると考えられています。

つまり、「ミラドライで汗が減るか」と「ワキガのニオイにも作用するか」は、本来それぞれ医学的に検証する必要があります。
ミラドライとはどのような治療?
ミラドライは5.8GHzのマイクロ波を利用して、汗腺が存在する層へ熱エネルギーを加える治療です。
日本では原発性腋窩多汗症を対象とした医療機器として承認されています。
ここで大切なのが、「日本で何について承認されているか」と「医学的にどのような作用や臨床効果が確認されているか」は、必ずしも同じ問題ではないということです。
日本で腋臭症が承認適応に含まれていないという事実だけから、「腋臭症には作用しない」と結論づけることはできません。
実際の有効性については、臨床研究、病理組織、比較試験、長期経過などを総合して評価する必要があります。

多汗症に対するミラドライのエビデンスは豊富
ミラドライで最もエビデンスが蓄積しているのは腋窩多汗症です。
これまでにランダム化比較試験、前向き研究、病理組織研究、長期追跡研究などが複数報告されており、発汗量だけでなくHDSSや生活の質についても改善が確認されています。
2024年のシステマティックレビューでも、エネルギーデバイスの中でマイクロ波治療は最も確立された方法と評価されています。つまり、ミラドライは一施設だけの経験や、一つの小規模研究だけを根拠として行われている治療ではありません。複数の国・複数の医療施設から同じ方向性の研究結果が報告されていることも、当院がこの治療を重視している理由の一つです。
ミラドライはワキガにも効果があるのか
ここがこの記事で最も重要な部分です。
結論として、腋臭症の改善を示した臨床研究は複数存在します。
2013年にアジア人11名を対象として行われた研究では、多汗症だけでなく腋臭症についても評価されました。腋臭症を認めた16腋窩のうち15腋窩、93.8%でgood~excellentの改善が報告されています。もちろん、小規模な研究ですので、「ミラドライを受ければ93.8%の方が必ず同じ結果になる」という意味ではありません。この研究で重要なのは、患者さんが「ニオイが減った」と評価しただけではなく、治療後の組織そのものも調べられていることです。
アポクリン汗腺への作用も組織学的に確認されている
「ミラドライはエクリン汗腺には効くが、ワキガに関係するアポクリン汗腺には作用しない」という説明を見かけることがあります。
しかし、病理組織学的研究を見ると、そのように単純には説明できません。
前述の研究では、治療後の組織でエクリン汗腺だけでなくアポクリン汗腺の破壊が確認され、それらが線維化した組織へ置き換わっている所見が報告されています。
さらに2021年の病理学的研究でも、ミラドライ治療後のエクリン汗腺・アポクリン汗腺の双方に、壊死・損傷・破壊・線維化が確認されています。
したがって、現在存在する組織学的データから、
「ミラドライはアポクリン汗腺には作用しない」
と説明することは難しいと考えます。
むしろ、ワキガに関係するアポクリン汗腺そのものに組織学的変化が生じることが確認されています。
長期的な効果を支持するデータもある
2022年には、腋臭症または多汗症患者にマイクロ波治療を行い、その後の経過を追跡した研究が報告されています。
この研究では、発汗だけでなくニオイについても主観的・客観的評価の双方で有意な改善が確認され、組織学的にもアポクリン汗腺の減少や変化が認められています。
つまり、
ニオイが改善した
だけではなく、
ワキガに関係するアポクリン汗腺そのものにも変化が起きている
という両方のデータがあります。
さらに、多汗症については治療3年後の時点でもHDSSや生活の質の改善が維持されていた研究も報告されています。
ここで重要なのは、
「3年まで追跡した研究がある=3年で効果がなくなる」
という意味ではないことです。
病理学的研究では、ミラドライ照射後の汗腺に壊死・破壊・線維化が確認されています。
一度熱によって破壊され、線維化した汗腺がそのまま正常な汗腺へ戻ることは通常想定しにくいため、こうした長期追跡データは、効果が長期に持続することを支持するデータと考えられます。
一方で、生涯にわたりすべての患者さんで同じ発汗量・ニオイの状態が続くことまで証明した研究があるわけではありません。また、治療後にも処理されていない汗腺は残るため、一定量の汗やニオイが残ることはあります。
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エネルギー設定も治療結果に関係する
ミラドライでは、照射範囲だけでなくエネルギー設定も治療結果に関係する可能性があります。
エネルギーレベル3と5を同じ患者の左右で比較した前向きランダム化試験では、両側で汗とニオイが改善し、高エネルギー側でより大きなHDSS改善が認められています。
また、エネルギーレベル5で治療した研究でも、1年後まで汗・ニオイの有意な改善が確認されています。
当院でも、十分な治療効果を目指して高エネルギー設定で照射しています。
ただし、皮膚の厚みやワキの状態などによっては、安全性を考慮してエネルギーを調整することがあります。
単純に「出力が高ければ高いほどよい」ということではなく、患者さんごとに皮膚や皮下組織の状態を確認しながら治療することが重要です。
シングル・ダブル・トリプルという治療設計
ミラドライではエネルギー設定だけでなく、どの範囲に、どの程度重ねて照射するかも治療設計の一部です。
2021年の病理組織研究では、シングル照射とダブル照射を比較したところ、ダブル照射の方がエクリン汗腺・アポクリン汗腺への組織学的ダメージが大きかったことが確認されています。
もちろん、これは「ダブルなら効果が必ず2倍」という意味ではありません。
当院では症状や希望する改善度に応じて、シングル・ダブル・トリプル照射を選択しています。
特に、1回の治療でできるだけしっかり改善を目指したい方には、トリプル照射をご提案することがあります。
一方、トリプル照射そのものについて、シングル・ダブルと直接比較した十分な大規模臨床研究があるわけではありません。
そのため当院では、エネルギー、照射範囲、重ねる場所、皮膚の状態を確認しながら治療設計することを重視しています。

ボトックスとの比較でもニオイ改善が確認されている
2024年には、一人の患者さんの左右のワキをボツリヌストキシンAとマイクロ波治療に分けて比較するランダム化比較試験が報告されています。
汗については両治療とも有意に改善しました。ニオイについても両方で改善がみられましたが、1年後まで有意なニオイ改善が維持されたのはマイクロ波治療側でした。また、長期的には76%の患者がマイクロ波治療を選好しています。これも、「ミラドライは汗には効くけれどニオイには作用しない」という考え方とは一致しないデータです。
手術とミラドライは目的に応じて使い分ける
腋臭症については、外科手術の方が高いニオイ改善を示した長期比較研究もあります。
一方、外科手術とミラドライでは、傷跡、ダウンタイム、合併症、治療侵襲そのものが異なります。
したがって、
「ミラドライがすべての症例で手術より優れている」
という説明も、
「手術の方が強く効く研究があるからミラドライはワキガには効かない」
という説明も適切ではありません。
重症度、希望する改善度、傷跡、ダウンタイム、合併症リスクなどを含めて治療法を選択することが大切です。
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ワキガ・多汗症治療のゴールは「ゼロ」ではない
ワキガ・多汗症の治療では、汗やニオイを完全にゼロにすること自体を治療目標にするわけではありません。
汗は本来、体に備わった生理的な機能です。ワキにもある程度の汗があること自体は異常ではありません。
問題になるのは、発汗や分泌が多くなり、ワキが湿りやすい状態が続くことで、日常生活に支障が出たり、ニオイを感じやすくなったりすることです。
ワキガのニオイは、アポクリン汗腺から分泌された成分が皮膚表面の細菌によって分解されることで生じます。汗や分泌物が多く、湿った環境が続くと、ニオイが目立ちやすくなることがあります。
そのため重要なのは、汗を完全になくすことではなく、発汗量やニオイを日常生活で困らないレベルまで減らすことです。
仮にワキの発汗を完全にゼロにすることを目指せば、乾燥感や皮膚の違和感につながる可能性もあります。
つまり、
「少し汗をかく=治療に失敗した」
ということではありません。
治療前と比べて汗やニオイがどの程度減り、衣服の汗ジミや対人場面での不安など、実際の生活上の悩みがどの程度改善したかを評価することが大切です。
ワキガ・多汗症治療のゴールは「汗をゼロにすること」ではなく、汗やニオイを日常生活で気にならない程度まで減らすことです。
当院でもニオイについて満足度の高い治療です
ここからは医学論文ではなく、当院で実際に診療している中での臨床経験です。
当院でもミラドライは、汗だけでなくワキガのニオイについても満足される方が多い治療です。
もちろん、すべての患者さんでニオイが完全になくなるわけではありません。
それでも治療前後を継続して診察している立場からすると、ミラドライによってニオイがしっかり改善していることを実感するケースは少なくありません。
また、他院で電気治療やレーザー治療などを受けたものの十分な改善を実感できず、その後当院へ来院し、ミラドライを選択される方もいらっしゃいます。
そのような患者さんでは、治療後の経過を振り返り、
「最初からミラドライも選択肢として検討してもよかったですね」
とお話しすることもあります。
これは当院での臨床経験であり、比較試験による結論ではありません。
ただ、複数の医学研究で報告されている腋臭症への改善効果と、当院の日常診療で感じている治療成績には大きな矛盾はないと考えています。
当院ではミラドライを中心に、ニードルRFやHIFUも使用しています
当院がミラドライを評価しているのは、ミラドライしか治療法を持っていないからではありません。
当院ではワキガ・多汗症に対して、ニードルRFやHIFU(ハイフドライ)も選択肢としています。
ニードルRFについては、多汗症に対する研究が複数あり、2025年にはシステマティックレビュー・メタ解析が報告されています。6研究が解析され、HDSSの有意な改善が確認され、エビデンスの質はmoderateと評価されています。
腋臭症についても複数の臨床研究があり、ニードルRFは多汗症・腋臭症の双方で医学的データが蓄積している治療です。
HIFU・micro-focused ultrasoundについても、腋窩多汗症を対象としたランダム化・二重盲検・sham対照研究があり、治療群では客観的な発汗量やHDSSの改善が確認されています。12か月後まで効果を確認した症例も報告されています。
腋臭症に対するHIFUの直接的なデータはミラドライやニードルRFほど多くありませんが、臨床応用・報告はあります。
そのため当院では、現時点でエビデンスの蓄積が特に厚いミラドライを中心としながら、患者さんの状態や希望に応じてニードルRFやHIFUも使用するという考え方をしています。
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電気治療にも古い医学論文はある
ワキガ・多汗症に対して、絶縁針などを利用して電気的に汗腺を処理する治療にも医学論文が全くないわけではありません。
1988年には、絶縁針を用いた電気凝固法によって腋臭症・多汗症を治療した報告があります。多くの患者さんは5~6回の治療を受け、良好な結果が得られたとされています。
したがって、
「電気治療には医学的根拠が全くない」
とまで言うのは適切ではありません。
一方で、現在のミラドライやニードルRFのように、ランダム化比較試験、病理組織研究、長期追跡、複数の研究者・施設による検証、システマティックレビューなどを通じて再現性を判断できるだけの近年のデータは限られています。
そのため当院では、現時点でこうした電気治療を積極的には採用していません。
これは単純に「電気治療だから効かない」と考えているわけではありません。
治療法を採用するときに、客観的なデータの量と質、他施設でも同様の結果が再現されているかを重視しているためです。
当院はエビデンスを重視して治療法を選択しています
ワキガ・多汗症にはさまざまな治療法があり、一つの治療だけがすべての患者さんに最適というわけではありません。
当院では治療を導入・選択するとき、
✅どのような臨床研究があるか
✅複数の施設や研究者から同じ方向の結果が報告されているか
✅作用が組織学的にも確認されているか
✅長期成績があるか
✅安全性について検討されているか
✅他施設でも再現可能な治療であるか
を重視しています。
この観点から、現在はエビデンスの蓄積が特に多いミラドライを中心として治療しています。
そのうえで、患者さんの症状や希望に応じて、エビデンスが増えているニードルRFや、臨床データのあるHIFU(ハイフドライ)も使い分けています。
治療法に対する考え方は医師によって異なりますが、治療効果については個々の印象だけでなく、これまでに蓄積された医学的データを踏まえて評価することが大切だと当院では考えています。
「日本でワキガへの承認がない」ことと「効果がない」ことは別
日本ではミラドライは原発性腋窩多汗症を対象として承認されています。
一方、腋臭症については、
✅ニオイの改善を確認した臨床研究
✅アポクリン汗腺の破壊・減少を確認した組織学的研究
✅長期経過を追った研究
✅他治療との比較試験
が存在します。
したがって、承認適応だけを根拠として「ミラドライはワキガには効果がない」と断定することは、現在までに報告されている医学的エビデンスを十分に反映した説明とは言えないと当院では考えています。
承認状況については正しく説明したうえで、医学的な有効性については蓄積された臨床データを別に評価することが重要です。
まとめ|ミラドライは多汗症だけでなく腋臭症にも医学的根拠がある
ミラドライは、マイクロ波によってワキの汗腺へ熱作用を与える治療です。
多汗症については、ランダム化比較試験、長期追跡、システマティックレビューなど多くの医学的データがあります。
さらに腋臭症についても、
ニオイの改善
アポクリン汗腺の破壊・線維化
アポクリン汗腺数の減少
長期的な改善
エネルギー設定による治療成績の違い
他治療との比較
などが報告されています。
2024年のシステマティックレビューでも、エネルギーデバイスの中ではマイクロ波治療が最も確立され、科学的根拠が蓄積した方法と評価されています。
当院でもミラドライは、汗だけでなくニオイについても満足度の高い治療だと感じています。
そのため、ワキガ・多汗症の切らない治療では、エビデンスの蓄積が厚いミラドライを中心にしています。
当院では十分な効果を目指して高エネルギー設定で治療し、皮膚の厚みや状態によって設定を調整しています。また症状や希望する改善度に応じて、シングル・ダブル・トリプル照射を選択します。
一方でミラドライだけに固執するのではなく、ニードルRFやHIFUにも医学的なデータがあるため、患者さんの状態や希望に応じてこれらも使用しています。
そして治療の目標は、汗を完全にゼロにすることではありません。
汗やニオイを日常生活で気にならないレベルまで減らし、患者さんがワキを気にせず生活できる状態を目指すことが重要だと考えています。
Q&A
Q1.ミラドライは本当にワキガにも効果がありますか?
はい。腋臭症のニオイ改善を示した複数の臨床研究があります。また、治療後の組織ではアポクリン汗腺の破壊・減少・線維化なども確認されています。ただし、ニオイを完全にゼロにすることを目的とした治療ではありません。
Q2.日本では多汗症の承認なのに、ワキガにも効果があるのですか?
承認適応と医学的な臨床効果は分けて評価する必要があります。日本での承認対象は原発性腋窩多汗症ですが、腋臭症についても臨床研究や組織学的研究が複数報告されています。
Q3.ミラドライの効果は数年でなくなりますか?
数年間追跡して効果が維持された研究がありますが、その年数で効果が終了するという意味ではありません。病理組織では汗腺の壊死・破壊・線維化が確認されており、破壊された汗腺による効果は長期的に持続することが期待されます。
Q4.エネルギー設定によって効果は変わりますか?
エネルギーレベル3と5を比較した研究では、両方で改善がみられ、高エネルギー側でより大きな改善を示した評価項目もあります。当院では高エネルギー設定で照射していますが、皮膚の厚みや状態によって調整します。
Q5.ダブル・トリプル照射の方がいいですか?
病理学的研究では、シングルよりダブル照射の方が汗腺への組織学的ダメージが大きかったと報告されています。ただし、単純に効果が2倍・3倍になるわけではありません。当院では症状や希望する改善度に応じて選択しています。
Q6.ニードルRFでもワキガ治療はできますか?
はい。多汗症・腋臭症ともに臨床研究があります。当院でも治療選択肢の一つとしています。
Q7.HIFUにもワキ汗やワキガへのデータがありますか?
HIFU・micro-focused ultrasoundについては、腋窩多汗症に対する比較試験があります。腋臭症への臨床応用データもありますが、ミラドライやニードルRFより研究数は少ないのが現状です。
Q8.電気治療には効果がないのでしょうか?
絶縁針による電気凝固法などについて古い医学論文はありますので、全く効果がないとは言えません。ただし、近年の比較試験、長期研究、多施設での再現性を評価できるデータは限られています。当院ではエビデンスの蓄積と再現性も考慮して治療法を採用しています。
文責
まゆりなclinic名古屋栄
院長 加藤 成貴
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※⑥リライト後の正式タイトル。
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今後⑤公開後は、**「ミラドライのダブル・トリプル照射とは?シングルとの違い・効果を解説」**を「シングル・ダブル・トリプルという治療設計」から内部リンクします。








