手のひらの汗でお困りの方に朗報~アポハイドローション~<医師監修>
- 2023.8.27
目次
アポハイドローションとは
2023年3月に製造販売承認を取得し、6月1日に発売開始となった原発性手掌多汗症治療剤で、オキシブチニン塩酸塩を有効成分とする久光製薬が開発した塗り薬です。今まで、原発性手掌多汗症に対するこれといった保険診療薬がなかったので、手汗で困っていた方には非常にうれしいニュースだと思います。
手のひら(手掌)の汗の原因
手のひらの汗を全くかかない人はいません。しかし、その量が異常に多くなる状態を多汗症といいます。その中でも局所的に手のひらや足の裏、頭、脇に異常に汗をかいてしまう状態を原発性局所多汗症といいます。原発性という言葉は聞き慣れない言葉ですが、「原因がはっきりしない、または、ない状態」のことを言います。ちなみに原因があるものを続発性といいます。例えば、薬剤や他の病気(内分泌疾患、神経疾患、感染症)によって汗を大量にかいてしまう場合は続発性多汗症といいます。
どれくらいの汗をかくと「多汗症」と診断されるのか?
一言でいうと、「日常生活に支障をきたすぐらいの汗をかく場合」です。精神的な緊張で手のひらに汗をかくことは多くの人が経験していると思います。しかし、「日常生活で困るぐらい」というのは、コピー用紙がべたべたになってしまったり、書類に手のあとがついてしまったり、脇であれば、Tシャツに汗じみがたくさんできてしまうぐらい日常生活で不便を感じてしまうぐらいのことを言います。日常生活で困ってしまうほどの汗をかき、病歴から、汗をかくような疾患や薬剤使用が見当たらなく原因が分からない場合、「原発性局所多汗症」と診断されます。
一般的には、25歳前後に発症する場合が多いのですが、手のひらは平均13歳で発症します。また原発性局所多汗症の中で最も多い脇に関しては、19歳前後の発症と言われています。ちなみに、症状は徐々に落ち着いていき、50歳を過ぎると症状が軽減傾向になります。
原発性局所多汗症の原因はあるの?
原因が不明なので「原発性」となっていますが、遺伝、ストレス、ホルモンバランスの乱れなどで自律神経が乱れることで汗の分泌が活発化するのではないかと予想されています。
原発性局所多汗症の治療
副交感神経末端から出るアセチルコリンが、エクリン感染のムスカリンM3受容体に結合することで、細胞内シグナルが伝達され、汗が分泌されます。そこで、M3 受容体にブロックする薬剤があれば、アセチルコリンが、結合できなくなり、発汗しなくなります。脇汗に対する薬として今まではエクロックゲルやラピフォートワイプなどが保険収載されておりました。
その他、ボツリヌストキシンを使用する方法もあります。汗をかく部位にボトックスを注射して汗を出しにくくします。効果は3~6ヶ月ほど持続します。こちらの機序は、神経末端に作用してアセチルコリンが出なくするので、汗を出すシグナルが届かなくなり、汗が出なくなるのです。
またあまり効果は乏しいのですが、手汗の場合は、イオントフォレーシスという治療法があります。水道水が入った容器に弱い電流を流す治療法です。定期的に通う必要があります。
また、物理的に汗腺を埋めてしまう方法もあります。塩化アルミニウムは、汗の通り道を閉塞させて汗を出なくする機序です。
もっと侵襲的な治療としては、外科的に交感神経を遮断してしまう手術もあります。
脇の多汗症に関しては、ミラドライという非常に優秀な器械があります。マイクロ波で、汗腺そのものを破壊してしまう器械です。即効性と半永久的な効果なため非常に人気がある施術です。ミラドライが出るまでは、汗腺をこそぎ取るような手術が一般的でした。
手のひらの汗はアポハイドローションが適応
アポハイドローションは、手のひらにあるムスカリンM3受容体をブロックして汗を出しにくくする治療薬です。
下の図は、アポハイドローションの作用機序です。
アポハイドローションの有効成分であるオキシブチニンが、ムスカリンM3受容体に結合して、アセチルコリンの結合を阻止しています。
アポハイドローションの臨床成績
国内第Ⅲ相試験(原発性手掌多汗症患者を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験にて主要評価項目である投与4週間後における発汗量レスポンダーの割合がアポハイドローション群で有意に高く、プラセボ群に対する優越性が証明されました。
アポハイドローションの副作用
副作用の結果:抗コリン作用の口喝などの症状、塗布部位の肌トラブルが少数ある程度でした。
アポハイドローションの使い方
1日1回、就寝前に適量(両手掌に対し、ポンプ5押し分)を両手全体に塗ります。
アポハイドローションの保管方法
子供の手や目の届かないところに保管袋に入れて保管してください。そして可燃性の成分を含むため、高温にならないよう火気を避けてください。
アポハイドローションの捨て方
薬が残っている場合は、火気を避けて紙や布に吸収させて可燃ごみとして捨ててください。
ボトルはプラスチック製ですので、分別して捨ててください。
まとめ
アポハイドローションは、日本初の原発性手掌多汗症のお薬です。ボトックスが一番効果が高く、持続性もあるため、一番のおすすめはボトックスですが、高額になることと(※1)、注射時の痛みがあるため、まずは、お薬で治療したい方はアポハイドローションをおすすめ致します。(※2)それでも効果が乏しい場合や毎日お薬を塗るのがめんどくさい方は、ボトックスを試してみてください。
※1当院での手掌ボトックス治療料金
ボトックス(米国製):両手45,000円
ボツラックス(韓国製):両手21,500円
※アポハイドローション保険適応
初診時:約1,800円(3割負担の場合)
再診時:約1,200円(3割負担の場合)
☆ご予約される場合は、「皮膚科・内科」でWEB/LINE予約又はお電話でお願い致します。WEBやLINEの場合は、コメント欄に「アポハイドローション」と記載いただければ幸いです。