エビデンスに基づくダイエット理論<医師監修、日本ダイエット健康協会認定ダイエットインストラクター監修>
- 2022.5.22
目次
ダイエットとは
ダイエットとは、英語では、「diet」と書きます。このdietという言葉は、食事または食事療法を意味しています。食生活を変えることで痩せるのですが、日本では、このうち「痩せる」という意味だけが、独り歩きし、ダイエット=痩せるという意味になっているのです。
今回はダイエットが、単に体重を少なくするというのでなく、「健康に痩せる、本来の状態になる」という意味であることを念頭にエビデンスを交えて詳しくお話をさせて頂きます。
なぜ太るのか
原因は、必要以上のエネルギーの過剰摂取です。エネルギーとは、食事です。
空気を吸って、水を飲んでいるだけでは太りません。必ず、その原因となるエネルギー源があるのです。人が生活している上で、必要最小限のエネルギー量はあります。つまり、エネルギーがなければ、呼吸や、心臓を動かすことができません。そのほか、ありとあらゆる生体反応にエネルギーが使われています。
それと単に生体を維持するだけではなく、社会生活を送る中で日常生活動作や、運動、仕事などで必要エネルギーが変動します。
下の計算方法を参考に自分がどの程度のエネルギーが必要か計算してみてください。
必要以上のエネルギーを摂取することで過剰なエネルギーが脂肪細胞に中性脂肪となって蓄積され、「太る」ということになるのです。
適正摂取エネルギー = 標準体重 × 活動係数(25~35)
活動係数は、以下を参考にしてください。
活動係数
やや低い(デスクワークや主婦業) 25~30
適度(立ち仕事、農業、漁業) 25~35
高い(力仕事、建築、土木関係) 30~35
※標準体重計算方法:
標準体重=身長(m)×身長(m)×22です。
例)デスクワークを仕事にしている身長165cmの方であれば、
標準体重:1.65×1.65×22=59.9㎏
適正摂取エネルギー:25ならば、59.9×25=1497kcal、30ならば、59.9×30=1797kcal
1500~1800kcal程度の摂取であればよいということになります。
全身ダイエットと部分ダイエットについて
ダイエットといってもこの二つはアプローチが全く違います。
食事制限や、運動をして全身ダイエットをしても、下腹部や、二の腕の脂肪は残ったままという方は多いのではないでしょうか。全身ダイエットをしても部分痩せはほぼ不可能なのです。また細くなりたい部分の筋肉トレーニングをして細くなるかというと、それほど効果がないのではないでしょうか。一部の筋肉の代謝が少々上昇しても、周囲の脂肪からエネルギーが供給されるわけではないので当然といえば当然の結果なのです。
では、どうやって、部分痩せをするかというと、後述する脂肪冷凍療法や脂肪吸引や脂肪溶解注射になりますが、いずれも良し悪しがありますのでそのことを理解した上で、施術を行ってください。
GI値、GL値について
GIとは、その食事が、どれだけ早く血糖値を上昇させるかの基準です。Glycemic Indexの略でGI値となっております。血糖値が速く上昇すると、太りやすくなります。なぜなら、血糖値が急上昇すると、それに対応してインスリンが膵臓から放出されます。高血糖に遅れてすぐに高インスリン血症になるのです。近年、高インスリン血症自体が心臓や血管に重大な疾患を及ぼすことが言われておりますが、それはさておき、インスリンのおかげで、余分な血糖が、脂肪細胞に取り込まれます。すると、脂肪細胞の中で中性脂肪に変換されるのです。つまり、脂肪細胞が肥大化して太るのです。なので、食事の中でも血糖値が急に上がりにくいものほどダイエットにはいいのです。GI値については、有名ですので、インターネットを探すとたくさん出てきますので、参考にしてください。
ちなみ現在では、GI値よりもGL値の方が重視されています。
GL値とは、Glycemic Loadのことです。GIと異なるのは、普段食べる1食量を考慮していることです。GL値=食品に含まれる炭水化物(g)×GI値÷100で計算されます。GI値が高くても大量に食べるものでなければ、GL値は高くなりません。
GL値が、10以下のものを低GL、11~19を中GL、20以上を高GLとされています。
食べる順番について
GI値が高いからといって、それを一生食べないわけにはいきません。好きなものは食べたいです。その時に、食べる順番を考えるといいのです。例えば、いきなり、白ごはんを食べるのではなく、おかずを食べてから最後に白ごはんを食べるといった具合です。
おかずは、炭水化物ではないので、血糖値の上昇は緩やかです。まずは、おかずでゆっくり血糖値を上昇させておき、インスリンが過剰に出ないようにするのです。そうすれば、白ごはんが来た時にもインスリンが急上昇することもないのです。いきなり、血糖値が上昇するものが入ってくると、びっくりした膵臓が過剰にインスリンを放出してしまうのです。
日本では、昔から三角食べが礼儀や作法として推奨されてきましたが、ダイエットの観点からは、ごはんは最後がいいのです。
糖質制限ダイエットについて
糖質制限については、以前から様々な議論がされておりましたので、論文などをご紹介します。
・同じカロリーであれば、糖質制限食の方が、体重減少はしやすいという論文があります。
(N Engl J Med. 2008; 359: 229-41.)
・炭水化物の摂取量が多い人ほど死亡のリスクが高く、脂質の摂取量が多いほど死亡のリスクが低いという論文があります。(Am Heart J 2009 Jul;158(1):1-7.e1.)
・総エネルギーの 50~55%を炭水化物から摂取するグループが最も死亡率が低く、総エネルギーの 40%未満と70%超のグループでは死亡リスクが上昇したという論文があります。(Lancet Public Health (2018) 3: e419–428)
結論としては、糖質制限ダイエットはおそらく問題ないと考えられますが、糖質を総エネルギーの40%以下にしてはいけないということだと考えます。
脂肪冷凍治療や脂肪吸引について
両者とも皮下脂肪を除去する方法です。脂肪冷凍療法は、局所的な脂肪を冷やし、脂肪細胞を壊し、その部分のボリュームを減らす方法です。脂肪吸引はその名の通り、減らしたい部分の脂肪を吸引してその部分から脂肪を排除する方法です。
一見、よく見えますが、健康を考えると、あまりよくないことをしています。
これらの治療をした後の食事量はどうなっているのでしょうか?もし食事量が変わっていなければ、大変なことになっています。なぜなら、今まで、皮下脂肪に蓄積していた余分なエネルギーはどこに行くのでしょうか?なくなった脂肪細胞には行けません。すると、まだ残存している脂肪細胞に蓄積します。
残存している脂肪細胞はどこにあるかというと、内臓です。「内臓脂肪」という言葉を聞いたことはないでしょうか?内臓脂肪は、皮下脂肪と比べて、蓄積することで、よくないことが起きます。動脈硬化などを引き起こすサイトカインを出すのです。動脈硬化は文字通り、血管が硬くなるのですが、正確にいうと、「硬くなり、もろく、詰まりやすい血管」になるということです。
もろいということは、破れやすいということです。血管が破れるということは、出血です。この出血が脳で生じれば、脳出血ということで致死的になります。また詰まれば、「梗塞」になります。心臓の血管であれば、心筋梗塞、脳の血管であれば、脳梗塞になります。いずれも突然死を起こす致死的な病です。
内臓脂肪の蓄積が、突然死を起こす病につながるのです。
同じ脂肪が過剰に蓄積されているといっても、内臓脂肪よりも皮下脂肪のほうがかなりマシなのです。ですから、皮下脂肪を除去したあとは、厳密な食事制限や運動療法が必要になってくるのです。それに一生気を配らなければならないと考えると、皮下脂肪のみを除去するというのはリスキーであることを覚えておいてください。
また、脂肪吸引や脂肪冷凍療法は、若い頃にされることが多いですが、その場合、周囲の組織がある程度融通をきかし、表面上は、平坦で仕上がりますが、除去して脂肪が、平坦であるはずがないので、高齢者になり、表面の皮が薄くなってきたら残った脂肪によるボコツキが気になるかもしれません。
いずれにしろ、気軽に脂肪冷凍療法や脂肪吸引はしない方が良いということです。
GLP-1製剤(サクセンダ)について
GLP-1は、元々、糖尿病患者様へ注射薬です。保険診療では、ビクトーザという名前で処方されております。中身は同じですが、製剤についているダイヤルが違い、一回接種量が異なります。
主な機序は、消化器の動きを遅くして、小腸に食べ物がゆっくり行くようにして、糖分の吸収を遅くするという機序です。糖分の吸収を遅くすることがなぜいいのでしょうか?ということは前述の通りです。血糖値が急に上昇することで、インスリンもいっきに上昇します。その際に、いっきに糖分が、細胞内に入り込むのです。過剰な糖分ですから、中性脂肪に変換され、脂肪細胞にたまるのです。血糖値の上昇を緩やかにすれば、インスリンの上昇も緩やかになり、糖分を効率よく処理できるため、脂肪細胞に蓄積させずに済むのです。
また、胃の動きが遅くなるため、胃の内容物が小腸の方に送り出しにくくなり、少量の食事で満腹感を得られ、または、少し気持ち悪くなるため、食事量が少なくなるという機序もあります。主にこちらの方が、効いている印象があります。副作用については、元々糖尿病患者様に使用する際に一番問題になる悪心、嘔吐(気持ち悪くなる)を利用している側面もあり、これといった副作用は認めません。(あえて言うならば、下痢や、便秘などの消化器系の副作用があります。)糖尿病のお薬なので低血糖もあり得るのですが、低血糖の時には、効果が出ないような仕組みもあるので、実際は低血糖になってしまうことは非常にまれであると考えてください。
BNLSultimateについて
BNLSの主成分はデオキシコール酸です。このデオキシコール酸は、アメリカのFDAで脂肪溶解効果が認められております。細胞膜を破壊して中性脂肪を取り除き、脂肪細胞を破壊することが主な機序です。部分痩せの治療になります。従来のBNLS neoに、デオキシコール酸の配合を200倍にして、さらにコエンザイムQ10、アンティチョーク、L-カルニチン、カテキンなどの脂肪溶解成分を追加配合し、より高い効果が出るようになりました。
痩せたい部分に注射し、部分痩せに使用されます。脂肪冷凍療法や脂肪吸引ほどの効果はありません。マイルドな治療法です。
最短で3日で効果を実感できます。ダウンタイムは1日程度です。
防風通聖散について
体重は、2~3㎏程度減量できると言われております。それ以上は、単剤では困難です。
別のコラムで詳しく防風通聖散について記載しているので参照してください。
まとめ
ダイエットの基本は、食事と運動です。
これを忘れて、薬や施術に頼っても、一時的に体重減少するだけで、リバウンドや健康を損なう可能性があります。
ダイエットを健康的にするならば、ダイエットに詳しいドクターがいるクリニックでの相談をおすすめします。
文責:まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤成貴
総合内科専門医、日本ダイエット健康協会認定ダイエットインストラクター