アゼライン酸はニキビもシミもなくすって本当?<医師監修>
- 2023.8.5
目次
アゼライン酸とは
アゼライン酸は、小麦やライ麦などの穀類、酵母に含まれている成分で、日常的に食事などで口にしている天然由来の酸(飽和ジカルボン酸)です。
天然由来の酸ということもあり、皮膚へ塗った時に部分的な「熱感」「かゆみ」などのごく短時間の刺激症状が見られることがあります。しかし、刺激が強い場合には、使用回数や使用量を減らすことで、その後も使用し続けることができます。
海外では、ニキビ治療薬として昔から使われている成分です。
当初アゼライン酸はメラニンの生成を抑える効果から、美白目的の塗り薬として開発が始まりました。しかし、その臨床試験中に偶然にも美白とともにニキビへの効果が認められました。その後、アゼライン酸には古い角質が毛穴にフタをするのを防ぐとともに、ニキビ菌への抗菌活性があることがわかりました。
以来、アゼライン酸はヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界80カ国でニキビ用医薬品として承認され約30年間皮膚科などで使用されています。
欧米のニキビ治療標準書(ざ瘡治療ガイドライン)でも、面皰(めんぽう)治療においてアゼライン酸はビタミンA類の医療品に次いで推奨されています。特に、アゼライン酸はビタミンA類の医薬品に比べ皮膚への刺激が少ないことから刺激に耐えられない患者様むけに医療現場で選択されています。また、アゼライン酸は美白効果を有することから、ニキビが治った後の気になる黒ずみへの効果も期待できます。
長年海外で使われていることや、天然物由来であることから、アゼライン酸は極めて安全で有用なものといえます。ですが、日本では未承認のため、当院ではロート製薬のアゼライン酸高濃度配合クリーム〈ディーアールエックス® AZAクリア®〉を採用しています。
アゼライン酸の効能
ニキビ、ニキビ跡
ニキビは毛穴の詰まりと皮脂分泌が増加することで始まります。
最初は面皰(めんぽう=コメド)と言われる状態であまり目立ちませんが、ニキビ菌の増加とともに炎症が起こり、赤ニキビといわれる状態へと悪化します。
①初期段階:面皰(めんぽう)はコメドともいわれニキビの初期段階です。古い角質が剝がれ落ちることなくとどまり、毛穴にフタをして詰まっている状態です。白ニキビや黒ニキビとも言われています。
②炎症段階:ニキビ菌が増殖し、たまった皮脂や炎症物質によってニキビが赤く盛り上がり、さらに膿がたまるようになっている状態です。炎症が進むと治療後に黒ずんだりすることもあります。
アゼライン酸は毛包の角化を抑制します。
ニキビの原因となる毛穴の詰まりを取り除き、皮脂の分泌を抑えることで、ニキビの予防と進行を抑制します。アクネ菌に対して抗菌作用もあるため、白ニキビや炎症性の赤ニキビに効果があります。
また、抗酸化作用により、炎症の悪化や皮脂の酸化を抑制し、ニキビの予防や悪化を防ぐ効果があります。チロシナーゼ活性阻害作用があるためニキビ跡の色素沈着にも効果があり、メラニンの生成を抑制することでアゼライン酸の美白効果にも着目されています。
そのためアゼライン酸は毛包の角化を抑制、皮脂分泌を抑制、抗菌作用、抗酸化作用をもつことから、ニキビの治療に用いられています。
赤ら顔(酒さ)
常態的に顔が赤みを帯びている状態を赤ら顔といいます。小鼻や頬は顔の中でもとくに皮膚が薄いため赤みが出やすいです。赤ら顔には大きく分けて2つのタイプがありますが、ここでは毛細血管拡張症を指します。
主に中高年(30~50代)の顔面にみられ、特に鼻や頬に発赤や毛細血管が見えることが数カ月以上持続している、慢性皮膚疾患の一つです。ニキビのような丘疹、膿疱(小さな吹き出物)が生じることがありますが、ニキビと異なります。
赤ら顔(酒さ)の原因はよくわかっておらず、酒さを自然治癒で改善させるのは難しく、基本的に治療を行わないと症状が悪化していく傾向にあります。
赤ら顔について詳しく記載したコラムもございますので、詳しくはこちらもご覧ください。↓
赤ら顔の原因や治し方について解説します!<医師監修>
(名古屋の美容皮膚科|赤ら顔コラム|まゆりなclinic名古屋栄)
アゼライン酸は、ニキビ治療薬として使われているのが一般的ではありますが、酒さの治療薬としても効果を発揮します。
特に酒さの中でも、第2段階の丘疹膿疱型(発赤に加えてニキビのようなポツポツがある)治療に効果が期待でき、デモデックス(ニキビダニ)に対する殺菌効果、抗炎症作用、抗酸化作用などが酒さの改善に関係しているのではないかと言われています。
原因がはっきりわかっていない病気なので、どのような機序で効果を発揮するかは、明確ではありませんが、長期的に使用しても副作用が出にくいため、慢性に経過し、治療期間が長くなる酒さに対して効果的な治療だと言えます。
シミ、肝斑、くすみ
アゼライン酸のメラニンの生成を抑制する美白効果により、シミなどの色素沈着にも有効です。
シミ治療薬で代表的なハイドロキノンに代わる美白剤を探している方におすすめです。
ディーアールエックス® AZAクリア®
現在、日本ではアゼライン酸は市販されていません。そのためクリニックや病院でしか購入することができません。当院では、ロート製薬株式会社が販売している20%アゼライン酸クリーム〈ディーアールエックス® AZAクリア®〉を取り扱っています。
- ニキビの原因となる毛穴のつまりに着目
- ニキビがちな肌の方のホームスキンケア
- べたつかずしっとりとした使用感
- ノンコメドジェニックテスト済み
- 無香料・無着色・防腐剤フリー
こんな方にもおすすめです
- 妊娠中や授乳中の方
アゼライン酸は、普段口にする小麦など穀物に含まれる成分なので、安全性が高く、皮膚への刺激も少ないため、薬の種類によっては使用できない妊娠中や授乳中にも使うことができます。特に妊娠中は、ストレスやホルモンバランスの影響でニキビなどが生じやすくなるので、治療方法の1つとしてアゼライン酸はとても有効だと言えます。
- ディフェリンゲルやBPO製剤(過酸化ベンゾイル)の刺激が強い方
ディフェリンゲルやBPO製剤よりもマイルドな治療薬なので、刺激に耐えられない方にもお勧めです。ニキビ治療薬として使われることが多いディフェリンゲルやBPO製剤は、副作用として皮剥けやヒリつき、痛みやかゆみなどが挙げられます。通常は、耐えられる程度の痛みやかゆみなどが1〜2週間程度で収まりますが、人によっては刺激が強く症状が収まらない場合があります。〈ディーアールエックス® AZAクリア®〉も、使用した際に若干のピリピリ感などをを感じることがありますが、赤くなったり、痛みが増強することが無ければ心配はありません。
まとめ
アゼライン酸は日本ではまだ医療用成分として認可されていませんが、世界80カ国でニキビ用医薬品として承認され約30年間皮膚科などで使用されています。
ニキビをはじめ原因がはっきりしていないからこそ治療をするのが難しい酒さの改善にも効果が期待できます。
また、刺激や副作用が少ないため、薬を使用するのが難しい妊娠中や授乳中の方でも使えるのもアゼライン酸の良いところです。