防風通聖散の適応・効果・飲み方・注意点・副作用 <医師監修>
- 2022.5.15
目次
防風通聖散について
漢方の古典書にも古くから記載されている漢方薬で、18種類の生薬が代謝を促進して余分な水分を排出し、腹部の脂肪を落とすお薬です。
漢方薬は副作用がないと考えられている患者様もいらっしゃしますが、お薬ですから、副作用も通常の内服薬と同様にあります。
適応
「実証」の方が適応になります。実証とは、ぼっちゃり体型で、濃い味や脂っこいものや辛いものが好きで、暑がり傾向の状態です。風邪をひくことが少なく、肌つやがよく、声が大きいというのが実証です。
簡単にいうと、エネルギッシュな方です。
しかし、美容クリニックでは、患者様が痩せたいからということで防風通聖散を処方している場合があり、しっかり、患者様の状態を判断して処方すべきであると考えます。
効果
防風と麻黄が効果効能をもたらす主な生薬です。便通改善、熱や炎症の沈静化、余分な水分を排出、血流改善をする生薬が含まれており、それらの作用でダイエットをはじめとした以下のような効果を発揮します。
当然ですが、防風通聖散を内服していても、通常より多く飲食していれば、体重減少は期待できません。
・脂肪を燃焼する…ダイエット効果
・腸の動きを改善…便秘解消
・降圧作用…高血圧の治療
・血流の改善…肩こりなどの血流うっ滞が起因する症状が改善
・余分な水分の除去…むくみの改善
飲み方
防風通聖散は1日3回、食前に水または白湯で内服するのが一般的ですが、飲みなれてきたらそれより減らしても構いません。一方、増量するのはよくありません。
注意点
以下のような方は、内服する前に医師に確認してください。
・妊娠中
お腹のお子さんに影響が出る場合があります。
・以前に漢方薬でアレルギー症状などの不調をきたした場合。
防風通聖散には、18種類の生薬が含まれております。以前の漢方薬にも同様の生薬が入っている可能性があり、どの生薬が原因で不調をきたしたか分からない場合があるからです。
・「虚証」の場合
「虚証」とは、「実証」の反対です。簡単にいうと、やせ型で、活気がない状態と考えてください。
副作用
漢方薬はお薬ですから普通に副作用はあります。
重篤なものでは、以下のようなものがあります。
・低カリウム血症
・ミオパチー
・肝機能障害、黄疸
・間質性肺炎
・腸間膜静脈硬化症
漢方薬を長期に内服していると、案外多いのは、低カリウム血症です。逆に低カリウム血症の患者様を診たら、漢方薬の内服がないかチェックします。すると、多くの方が内服されております。こむら返りの治療として内服されている芍薬甘草湯が多い印象ですが、これは、成分に甘草が入っているからです。甘草は、長期に内服していると低カリウム血症になるのです。この甘草が、防風通聖散にも入っているので低カリウム血症をきたしうるのです。
症状としては、力が入らない、こわばりなどのような症状(ミオパチー)や、最悪の場合、心臓にも異常をきたし、突然死を起こすこともあります。
その他怖い副作用は、肝機能障害と、間質性肺炎です。
だるい、発熱、吐き気、下痢、咳などの症状がでれば、すぐに内服を中止し、採血検査やレントゲン検査をされたほうがいいと考えます。
まとめ
ダイエットの基本は、運動とバランスのよい食事と食事制限です。それを忘れて、漢方薬に頼るのはおすすめできません。しかも防風通聖散によるダイエット効果は限定的で、経験上、Max 3㎏程度減量して、そこからあまり変わらないことが大多数です。
副作用のことも考えると、長期的な内服はおすすめできず、太ってしまったときに短期的に内服し、もとに戻ったり、減量できれば、そこで中止すればよいと考えます。
文責:加藤成貴