トラネキサム酸について〈医師監修〉
- 2022.7.24
目次
トラネキサム酸とは?
トラネキサム酸は、商品名のトランサミン®で呼ばれることが多いかもしれません。
人工的に合成されたアミノ酸の一つです。
内科や救急の先生ならお馴染みの薬です。のどが痛い時に処方することもありますし、救急外来では、出血性疾患(脳出血や消化管出血)の時に、点滴に入れたります。
美容では、シミや肝斑に効果があるということで頻用されています。
トラネキサム酸の効果・効能
中心的な作用は、抗プラスミン作用です。血液の中の成分のプラスミンの働きを阻害します。
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炎症やアレルギー反応を抑える
プラスミンは、炎症やアレルギー反応に影響を与えます。トラネキサム酸は、このプラスミンの作用を抑えることで、のどの炎症を鎮めるのです。蕁麻疹の時に使用することもあります。歯茎の腫れや出血を抑えるということで歯磨きペーストの成分に入っていることもあります。
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止血作用
プラスミンは血液の線溶系、つまり固まった血液を溶かす作用もあるので、これを抑えることで、止血しやすくなるのです。脳出血や消化管出血の時に点滴に混ぜて使用することで、少しでも出血が少なくなるようにします。
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美容効果
シミや肝斑にも効果があります。それは以下で解説します。
またトラネキサム酸は、シミや肝斑治療の他、レーザー治療後やニキビ後の炎症後色素沈着(PIH)予防として、短期的に使用することもあります。
トラネキサム酸のシミや肝斑に対する効果
プラスミンは、メラニンを生成するメラノサイトを活性化させます。トラネキサム酸は、このプラスミンの働きを抑制するので、黒い色素が発生しにくくなるのです。つまり、シミや肝斑ができにくくなります。
トラネキサム酸による副作用
血栓ができやすくなります。元々、止血剤として使用することもある薬なので、血が固まりやすくなるのです。下肢の深部静脈血栓症、静脈瘤や、血管が詰まるような病気(心筋梗塞や脳梗塞や閉塞性動脈硬化症など)を患っている方は控えた方が良いです。ピルは、血が固まりやすくなる作用があります。ピル内服中であれば、医師にご相談下さい。
トラネキサム酸内服で注意する人
下肢を長時間動かさない状態にある方は注意が必要です。下肢の静脈に血栓ができてしまう可能性があるからです。静脈の血栓はそこに留まるだけではなく、外れて、肺動脈に詰まることがあるのです。血栓が肺動脈に詰まる病気を肺塞栓と言いますが、程度がひどいと、稀ですが、突然死を起こすこともあります。
具体的には、長時間デスクワークの方や、長時間電車や飛行機に乗る方、そして怪我や病気でベッド上安静にしておかなければならない状態の方です。
その他、妊娠中や授乳中も内服しない方が無難です。
用法・用量について
トラネキサム酸の使用量は、薬剤添付文書上、750mg~2000mg/日(3〜4回に分割経口投与)となっています。通常、クリニックではその範囲内の処方になります。
いつまで飲み続ければいいの?
シミや肝斑に対するトラネキサム酸を用いた治療期間は約1年とされております。1年続けて効果がなければ、中止したほうが良いと考えます。トラネキサム酸で効果がないシミの場合があります。レーザーなどでしっかり治療しなければ治らないシミもありますので、医師にご相談下さい。
トラネキサム酸を内服して白髪になるという噂について
トラネキサム酸で白髪になることはありません。メラノサイトを殺すわけではないので白髪にはなりません。
トランサミンとトラネキサム酸の違い
トラネキサム酸剤である「トランサミン」は商品名です。トランサミンは先発品で、その他は後発品(ジェネリック)です。現在は、いろいろな会社からジェネリックのトラネキサム酸が販売されております。ジェネリックのトラネキサム酸は先発品と効果や用法・用量など全く同じですので安心して内服頂けます。
市販薬との違い
病院で処方される薬と市販薬の主な違いは、1錠中の成分のトラネキサム酸含有量です。
市販薬はトラネキサム酸以外の成分も入っています。
市販薬の場合、何かあっても自己責任となりますので注意してください。
まとめ
トラネキサム酸は、内科や救急医療だけではなく、美容医療でも大活躍の薬です。しかし副作用もあるので、しっかり用法・用量を守って安全に使用することが大切です。
また、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)などに使用しても、効果がないのでしっかり診断を受けてから内服する必要があります。内服開始する時は、医師に相談するとよいでしょう。
文責:まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤成貴